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私が小説を書いている理由(1)小説や漫画は何歳になっても創作することができる!

私は数年前から小説を書いている。
ライフワークである「技術とデザインで解決する認知症の早期発見・ケア」をエンターテインメントにしたかったからだ。日本では認知症の正しい知識を小学校から教えてほしいと思っているが、そのためには娯楽の要素が必要だ。
※私は、Adobe Community Evangelistとして最新のクリエイティブツールやAI技術の活用について啓蒙しているが、難解なものは「娯楽化」が必要だと考えている。

小説や漫画を伝達媒体にして子どもにもわかるように伝えたい。
以下はストーリーの骨子である。

ZEROROBOTICS(仮)

2040年、日本の平均寿命は女性が100歳となり、OECD加盟国で28年連続世界トップ。男性も90歳を超え、定年退職後のセカンドライフ「30年」時代に突入。世界の認知症患者数は1億人を突破し、その莫大な社会的費用(医療費、介護費、インフォーマルケアコスト)は数十兆円に上り、長寿国共通の大きな問題になっていた。

フリーのデザイナーとして働いていた鈴木一郎は、母の認知症がきっかけでロボットベンチャーを立ち上げ、認知症ケア対応ヒューマノイドロボット「ZERO」の開発に取り組むが、自身もMCI(軽度認知機能障害)と診断され、人間の尊厳に関わる越えられない壁があることを知る。

世界では、致死性自律型ロボット(LARs:Lethal Autonomous Robotics)に関する国際人道法上の議論が活発化する中、ダーパ(DARPA:米国防総省・国防高等研究計画局)が開発した軍用高速四足走行ロボットが実証実験中に暴走、市街地に逃亡するという事故が発生していた。

ストーリーは三層になっており、長寿国が抱える認知症問題(国際問題)、MCI(軽度認知機能障害)と診断された主人公の苦悩(誤解と差別)、加速する軍事用ロボット開発(新たな脅威)の3つのエピソードが複雑に絡み合いながら話が進み、最後は一本の線になる。

実はスマホコミック(スクロール漫画)のプロトタイプも作成している。
http://design-zero.tv/school/zerorobotics/
※スマートフォンでしか読めない。PCでアクセスすると告知ページに切り替わる。

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未来の技術を考える方法

未来の技術は実際に動かすことができないためイメージに頼ることになる。
インテルのフューチャーリスト(未来研究員)であるブライアン・デイビッド・ジョンソン氏は、短編小説やコミック、映画などを用いて未来を考えるための手法「SFプロトタイピング」の使い手だ。

マイクロプロセッサは設計から製造まで、5年以上、長いプロジェクトでは10年近くかかってしまうこともある。インテルのような企業は、2020年、2025年に人々はどのような生活を送っているのかイメージしておく必要があるのだ。

SFプロトタイピングは、小説やコミック、映画のストーリーで未来の世界を描き出し「仮説」を共有するための開発ツールという位置付けとなる。現実の科学をベースにしながら、5年後、10年を私たちに見せてくれるわけだ。

2010年、インテルは「Uber Morgen」という4つ短編小説が収録されているアンソロジーをドイツで出版した。
この出版プロジェクトが始まる前に、作家らを研究所に招き、ロボティクスやテレマティックス、インテリジェントデバイスなどの最先端テクノロジーを見せている。これらのテクノロジーがどのように生活を変えるのか、問題はないか、問題が発生した場合の解決策は考えられるか、などストーリー着想の参考にしてもらうのである。


小説や漫画などの娯楽コンテンツをヒットさせるためにやるべきことは何だろう?

私は、人間を知ることだと思っている。
先日、プロット作成のために過去の資料を調べていたとき、2000年半ばに放映されたドキュメンタリー番組のメモが出てきた。「ケータイ小説を読み、涙を流す女子高生」を取り上げ、登場人物に感情移入する脳のメカニズムについて解説するという内容だ。

テレビの画面を撮った写真も残っているが、泣きながらケータイの画面を見つめる女子高生の姿が写っている。今見れば「これのどこが奇異なの?」と思うかもしれないが、この時代はまだ珍しい風景だったのだ。

テレビ、映画、演劇、音楽でも、SNSを流れる短いテキストでも何でもよい。過去の記憶、それも臨場感たっぷりの記憶を引き出すことができれば心が動く。小説や漫画なども、読者の脳内に蓄積されている情動の記憶を引き出し、ストーリーと結びつくか否かで、印象がまったく変わってしまうはずだ。

ヒット作には、記憶を引き出す要素が散りばめられている。
まさに「心を揺さぶる」トリガーが組み込まれているのである。そのエッセンスだけを凝縮したのが、ケータイ小説だった。

ストーリーに深みを持たせるのではなく、情動の記憶を引き出し、登場人物の言動と一致させることを重視する。しかも、10代の女の子がもつメンタルモデルと行動習慣に特化している。

だから、私たちには響かない。
その人に繰り返し起こる行動のパターンは、自分の意思だけではなく、環境要因が決めている。「よし!今年こそは自分を変えるんだ」と決意しても、環境が「いつもの自分」に引き戻してしまうので、2週間も経てばその決意は薄らぐ。どうすれば変えられるか十分わかっているのに、気がつけば「いつもの自分」に戻っているのだ。

それまでの人生経験を反映し蓄積されたメンタルモデルが、ものごとを認知、解釈し、その人の行動を決めてしまうのだが、この仕組みの理解は、娯楽コンテンツのストーリー構築に必要不可欠なものなのだ。

ヒット作を意図的に生み出すことは不可能かもしれないが、「ストーリーで記憶を掘り起こす」という考え方は、時代がどう変わっても有効だと思う。

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Photo by William Krause on Unsplash

投稿者:
Creative Edge School Books

投稿日:
2018年9月13日(木)

初掲載日:
2016年1月6日(水)
シンクゼロマガジン「デザインフィクション」
2016年1月17日(日)

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