見出し画像

居酒屋の発祥と江戸時代のコミュニティ


以前、人が集まる場として16世紀のヨーロッパ(特にイギリス)で爆発的に広がったコーヒー・ハウスについて書きました。


今日は、日本独時の文化である居酒屋の歴史について書いてみたいと思います。なぜ居酒屋かというと、上記のコーヒー・ハウスがヨーロッパで広がっている頃と同時期に居酒屋文化が誕生したからです。


居酒屋の誕生

まず居酒屋とは、言葉の通り「居酒(いざけ)」をするお店のことです。居酒とは”店先で飲むこと”を指すのですが、この居酒という言葉が広まったのは、江戸時代であるとされています。


当時お酒は、下の絵のように量り売りで販売されていました。

画像1

人倫訓蒙図彙(当時の辞典っぽいもの)より参照。

小さい子どもが徳利(とっくり)を持っているところをみると、自宅用としておつかいで頼まれたことが推測できます。こうして「買って帰る」ことが当たり前だったお酒でしたが、ある店主がこのお酒を店先で飲ませてあげるようになったことが居酒屋文化のはじまりだとされています。

(飲ませてあげる、といってもテーブルやイスを準備してあげた訳ではなく、独身男性や日雇い労働者が店先で勝手に飲み始めたようですが)


最初はお酒を売っていただけでしたが、しばらくするとお酒を安くで提供する名店が出現します。その一つに豊島屋(としまや)というお店があるのですが、このお店は、とにかくお酒を安く提供することに加えて、豆腐田楽を販売しました。

画像2

この豆腐田楽は、店内でお酒を飲む人しか購入することが出来なかったそうですが、それでも酒の”つまみ”として大変な人気を博したそうです。しかもこの豊島屋の豆腐田楽は、とにかく大きかったとか。笑


ちなみに豊島屋、今も現存しているんです。

現在は東京都千代田区でお店を構えており、お酒はもちろんのこと、みりんや醤油なども販売しているようです。

しかし一説によれば、この豊島屋はお酒も豆腐田楽もほぼ原価で販売していたそうです。どのようにして利益を出していたのでしょうか。

当時、樽は軽くて丈夫だとして大変重宝されていました。そこに目をつけた豊島屋の店主は、酒を大量に仕入れ、お客さんにお酒を安くで提供し、空になった酒樽を再度問屋に卸すことで利益を出していたそうです。酒で利益を出すのではなく、空の酒樽が利益を生みますから、とにかく酒を売りさばきたかった。そのため原価で売っていたわけですね。

豊島屋の創業が1596年ですから、少なくとも1600代初頭には、こうしたビジネスモデルとともに、居酒文化もはじまっていたと推測することができます。

コミュニティやたまり場を考える際にかかせないヨーロッパのコーヒー・ハウス(カフェ)が1600年代発祥とされていますから、ほぼ同時期に居酒屋文化も発達していることになります。居酒の文化も長いんですね。


(つづく)


書籍購入費などに使います。 みなさんのおかげでたくさんの記事が書けています。ありがとうございます。