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なぜ体育会系は職場で重宝されるのか~コミュニティへの順応性から考える~


大学生の就活においては、概ね終了しているかと思いますが、先月こんな記事が出ていました。

採用は未だ「体育会系」が人気のようで、その理由について書いていました。上記の記事を要約すると、組織で成果を出せる人は、①決断ができ、②規律を守ることができ、③自己成長ができる人らしく、体育会系はそれらを満たしていることが多いようです。


ただ個人的には、体育会系ほど、純粋に組織に馴染むのが上手いように感じます。上司に可愛がられるし、部下とも距離が近い。体育会系全員に限ったことではないですが、こうした立ち居振る舞いができる人が多いのも体育会系の強みであるように感じます。


なぜ、体育会系はこうした立ち居振る舞いが出来るのか。


そこで、今日は体育会系の強みについてコミュニティの側面から考えてみます。



人生の大半を過ごす”職場”というコミュニティ


まず、私たちが最もはじめに関わるコミュニティは家族です。

自分の考え方や立ち居振る舞いは、幼少期における両親の関わり方によって左右されます。そしてこのコミュニティは、よっぽどのことがない限り、生涯を通して関わりを持っていくこととなります。

そのため、この「家族」というコミュニティはお互いが本音で語り合う場として大きく機能しています。※下記のnoteに家族について少し書いています。よろしければご覧ください。


また、子どもは親を選ぶことが出来ないように、親も子どもを選ぶことができません。神のお導きによって家族が決められます。そういう意味で家族は、先天的な不変性のコミュニティと言えます。



対して、学校や大学を卒業した後、関わりを持つことになるコミュニティが”職場”です。”職場”は、人生において家族の次に長い関わりを持つことになります。近年はフリーランスも多く存在していますが、はじめは、多くの方が職場というコミュニティに所属するのではないでしょうか。


この職場というコミュニティは、「企業理念に感銘を受けて入社したものの、直属の上司が悪かった」といった半ば運ゲーのような側面もあります。しかし本当に苦手な場合は、転職することができ、コミュニティそのものを変えることができます。

このことから、職場は後天的な可変性のコミュニティと考えることができるでしょう。


また、家族が本音のコミュニティであるならば、職場は建前のコミュニティと考えられます。取引先の会社の方との名刺交換、上司との会話、電話対応など、多くの方が建前の立ち居振る舞いを強いられています。


家族と職場の違いについて簡単にまとめたものが下記です。

コミュニティの種類
家族‥‥生まれた時に決まっている(先天性)。不変性のコミュニティ。本音で語り合える。

職場‥‥就職によって所属する(後天性)。転職ができるので可変性のコミュニティ。建前が基礎となる。

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体育会系が重宝されるのは部活が建前のコミュニティだから


先ほど、職場は建前のコミュニティであると書きましたが、この建前で成り立っている背景には、個人の演技性が大きく関係しています。



職場では、本当に思っていないことでも建前で述べなければならない場面がたくさんあります。しかもこれらは、取引先や電話口などの社外だけでなく、上司や部下といった社内に対しても同様です。


「先輩、ありがとうございました。」
「社長、また今後ともどうぞよろしくお願いいたします。」
「ウチでなんとかやらせていただきます!」
「最近頑張ってるな!この調子でしっかりやれよ!」


こうした場面では、多くの人が「思っていないことを言う」ということ、しかも「本音で思っていますよ!」という演技性が求められることになります。実際、優秀なビジネスマンはこうした演技性に長けている人が多いです。


実は日本の部活動でも、こうした演技性が求められる場面がたくさんあります。

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「もちろん基礎は大事です!(早く試合させてくれねーかな……)」


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「すみませんでした!(こっち来た!まーた監督機嫌ワリィよ……)」


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「勉強になります!(先輩こーなったら話が長えぞ…)」


部活動では、昔ほどではありませんが、基本的に先輩の言う事は絶対です。

「4年天皇、3年貴族、2年平民、1年奴隷」といわれるほど、上下関係がハッキリしています。そのため、多少理不尽なことでも「それ違くないですか?」ではなく「何とかします!」と建前上言わなければなりません。


これが日本のスポーツ離れを助長している一因でもありますが、こうした建前のコミュニティというのは、義務教育においては運動部活動の他にはないんですよね。


学級も基本的には同級生のため、本音で語り合うことが多いですし、大学のサークル活動も本音で語り合うコミュニティでに近いと思います。



つまり学校運動部活動は、本音と建前を学ぶ唯一の場なんです。



部活をやってこなかった人は、”職場”が人生において初めての建前のコミュニティとなります。対して体育会系は、”職場”に似たような建前のコミュニティを既に部活動で経験できていることから、”職場”にもすぐさま順応することができるんですね。これが、体育会系が重宝される本当の理由です。当然、部活動未経験者にも演技性の高い優秀なビジネスマンはたくさんいますが、部活動経験者は、相対して多いように感じます。


よく体育会系は「根性がある」とか「忍耐力が違う」といった言葉を耳にしますが、単に建前のコミュニティで生きてきたから演技性が身についているだけなんですよね。



まとめ


今日は、体育会系が職場で重宝される理由についてコミュニティの観点から考えてみました。


体育会系が職場で重宝される理由
【家族】‥‥本音のコミュニティ
【職場・部活】‥‥建前のコミュニティ

・建前のコミュニティには本音とは違うことを言う演技性が求められる
・建前のコミュニティを学ぶ場は現状、学校運動部活動しかない
・そのため部活経験のない人は、演技性が身に付きにくい
。部活経験者は、演技がうまいから職場にも順応できる

近年、運動部活動は、ブラック部活動といった行き過ぎた指導が話題になっており、部活動を無くせ!という論考もみられます。賛同する点もありますが、部活動経験者からするとやはり複雑な気持ちになってしまいます。

個人的には、学校教育の中にこうした建前を学ぶ場、というものがあってもよいのかな、思います。もちろん正しい方法で。

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