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『キングコング対ゴジラ』(1962):「昭和ゴジラシリーズ連続鑑賞」(3)
『ゴジラの逆襲』以降、ゴジラ映画はしばらくつくられなかったのだけれども、その間も本多猪四郎監督と円谷英二特技監督とのコンビは『空の大怪獣 ラドン』(1956)、『大怪獣バラン』(1958)、『モスラ』(1961)と、いわゆる怪獣映画は撮っているし、『地球防衛軍』(1957)、『宇宙大戦争』(1959)というSF特撮映画、そして「変身人間シリーズ」として『美女と液体人間』(1958)、『ガス人間第
もっとみるパトリシア・ハイスミス『11の物語』(小倉多加志:訳)
「かたつむり観察者」(The Snail-Watcher)
食用かたつむりを観察し、飼育するようになったピーター・ノッパードの「悲劇」。
ハイスミス自身がかたつむりの飼育を趣味としていたことはよく知られていて、英語版Wikipediaには、かつて彼女は「レタス1個とカタツムリ100匹が入った」「巨大なハンドバッグ」を持ってロンドンのカクテルパーティーに出席したこともあったと書かれていたが。
ニール・ジョーダン:脚本・監督『オンディーヌ 海辺の恋人』(2009) クリストファー・ドイル:撮影
わたしも情報収集能力が低いので、こ~んな映画をニール・ジョーダンが撮っていたことはまるで知らなかった。
ニール・ジョーダンらしくも、思いっきりアイルランドを舞台にした映画だけれども、わたしはニール・ジョーダン監督でアイルランド舞台という作品、実はまるで記憶がない。それでとりわけ海辺の小さな漁港が舞台ということでも惹かれるのだけれども、わたしがびっくりしたのは、この映画、ケルトの「セルキー(Se
ジュスティーヌ・トリエ『落下の解剖学』
わたしはまず、この作品のポスターのイメージに惹かれた。「雪の上に血を流して倒れている人物を見つめる人物」というイメージは、『ウィンド・リバー』という作品でも用いられていたし、古くは『ファーゴ』にもそういうイメージがあったと思う。どちらの作品ともわたしの好きな作品だ。だから、この作品の監督も出演者もまるで知らないということも、気にはならなかった。
フランスの雪山のロッジ。犬のスヌープを散歩させ
パトリシア・ハイスミス『プードルの身代金』(1972) 岡田葉子:訳
(すでに今は絶版で、入手困難な本のレビューを書いてもしょうがないとも思うのだけれども、まあパトリシア・ハイスミスのファンではありますし、この『プードルの身代金』は、再評価されてもいいハイスミスの傑作だと思うので、誰も読まなくってもアップさせていただきます。)
パトリシア・ハイスミスの作品には、読後感のよろしくないものがあれこれとあるけれども、この『プードルの身代金』からは、読み終わってもただ「
ヨルゴス・ランティモス監督『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』~「アリウスのイピゲネイア」から~
この作品、「The Killing of a Sacred Deer」という原題で、だから「鹿殺し」が聖なるものなのではなく、「聖なる鹿」を殺す、という意味ではある。これはこの映画が下敷きにしているエウリピデスによる悲劇「アリウスのイピゲネイア」の中で、アルテミスへの生贄にされるところだったイピゲネイアが、直前にそのアルテミスによって牝鹿に置き換えられて救われた、ということによるようだ。
主
ウラジーミル・ナボコフ『キング、クィーンそしてジャック』(1928) 出淵博:訳
(わたしが今回読んだのは、今手軽に入手できる新潮社刊の「ナボコフ・コレクション」によるものではなく、もっと古い、1977年に刊行された「集英社版 世界の文学」の第8巻「ナボコフ」の巻である。)
邦題は『キング、クィーンそしてジャック』だけれども、原題(英語タイトル)は「King,Queen,Knave」である。「Knave」とは召使い(男)のことで、邦題のようにダイレクトにトランプの札のこと
ヴィム・ヴェンダース『PERFECT DAYS』 音楽とパトリシア・ハイスミス
わたしは1970年代の頃のヴェンダース監督の作品を愛おしく思い出すことができるが(このあたりの、ロビー・ミューラー撮影になる作品群は去年の3月にまとめて観たもので、まだ記憶が消えずにけっこう憶えている)、実はそれ以降のヴェンダース作品はそれほどに印象に残っていない。そんな中では『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)とか『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(2011)とかのドキ
もっとみるベルナルド・ベルトリッチ『暗殺の森』(1970)
イタリアのファシズムの興隆期、そしてその終末という時代を背景に、ファシズムに協力したひとりの男を描いた作品。原作はアルベルト・モラヴィアで、今は『同調者』のタイトルで文庫版邦訳も出ている。主演はジャン=ルイ・トランティニャンで、ドミニク・サンダ、ステファニア・サンドレッリ共演。ベルナルド・ベルトリッチ29歳のときの監督作品で、撮影監督は、以後1993年の『リトル・ブッダ』まで、たいていのベルトリ
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