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実山椒と梅雨


いよいよ梅雨の足音がひたひた、ピチャピチャ、と聞こえてきました。

ジメジメと鬱陶しいイメージの、梅雨。

けれどこの時季、実は嫌いではありません。

梅にらっきょう、赤紫蘇などに加え、
氷砂糖や保存瓶の類いが店頭にずらりと並ぶとともに、嬉しい季節仕事がいっぺんに目白押しでやってくる、あの勢い。
むしろ好きでたまらないのです。

ほんの束の間しか手に取ることができない
過ぎ去る季節の幸。
それがひと手間で、長いこと手元に引き留め味わえる、という悦びに加え、
全部仕込んだ時の、なんともいえない達成感があまりに大きく、何度やってもやめられません。

こうして毎年あれこれ作るようになってから、
この梅雨の前後はきまって、気忙しくも楽しい季節へと変わりました。
この実山椒も、ぼやぼやしているとすぐに姿を消してしまう、旬のたいせつな風味のひとつ。

清々しいぴりりとした辛味と香りを
1年間楽しめるように仕込みます。

水洗いしたあと、この枝をつけたまま
中弱火で5分ほど塩茹でし
好みの柔らかさを確かめて火から外し、
水にさらします。

このさらす時間の長さで、
辛味やえぐみが少しずつ取れていきます。

何度か水をかえながら、お好みの辛味になるまでつけおくと良いと思います。

30分ほどで引き上げたピリピリのものは糠床にさわやかな風味をつけてくれます。

2時間と、6時間で引き上げたのがこちら。
都度都度齧ってみて、刺激が強いと思われたら丸一日漬けてみてください。
好みの仕上がりにできるのが、手作りの良いところです。

水気をしっかり取って枝を外し、軸は、時間があれば取りますが、
ズボラな私はいつもつけたまま冷凍保存して、軸ごと頂いています。
これで来年のこの時季まで、ゆっくりとその味と香りを楽しむことができます。

2時間のを、醤油につけて刺身に添えました。
皮の風味が強いイサキにも負けません。

中国の花椒の代わりに
6時間ので麻婆豆腐。
辛味爽やかで、ぴりりも程良い感じです。

ニンニクやローリエで風味をつけることの多いマグロのオイル煮も、
新生姜と実山椒で和よりの風味にすると
油も炒め煮や南蛮漬けなどにも様々に使えて便利です。

ツナと同じように使うほか、
鍋や汁もののベースにも。
これは淡白なびん長マグロと2時間の実山椒です。
お刺身はもったいないと思われたら、
お手頃なマグロのあらでも十分。
マグロのあらで半分以上を占める血合い部分も
山椒の風味の働きで臭みなく仕上がり、
脳にも身体にも嬉しい作り置きになります。

梅雨入りに梅雨明け、どちらも宣言される方々は責任重大なのでしょう。
なかなか発出されないことが常になりましたが、もう立派に梅雨の降り方では?と思います。

先ほども、仕事帰りに立ち寄ろうと思った店があり、少し離れたところの駐車場に車を置いて歩いて向かったら、半分以上来たところで本降りになって、戻るに戻れず。
用事を済ませて、雨の中を走りながら、
あまりのことに、ちょっと笑ってしまいました。
雨の日も大抵車頼みで、天気予報の下調べもろくにせず、ちゃんと身支度を整えようとしない自分。
いい歳をして、情けない限りです。

#note #料理 #保存食 #実山椒 #梅雨  


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