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全ては憧れから始まる〜働く女子のファッション・トーク その2〜

 こんにちは、3歳男児を育てながら日系大企業で総合職として働く、カレー部長です。前回はざっくり、以下のようなお話をしました。今回は、美学や思考の領域へと話が膨らんでいきます。

・似合う色を身にまとうことで、褒められて自信がもてる
・高品質なセルフポートレートを撮ることには、大きな価値がある

カレー部長「似合う色を身に纏い、渾身の1枚を撮る!〜働く女子のファッション・トークその1」より

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コスプレイヤーさんとの出会い


エル:
ところでカレー部長さん、1年半前に「自分を変えよう」と思ったきっかけって、何だったんですか?

カレー部長:Twitterを眺めていたら、この世のものとは思えない美しいコスプレーヤーさんの、まばゆい写真が流れてきたんです。

エル:???

カレー部長:扮しているキャラは全く知らなかったんですが、めちゃくちゃイケイケの強そうなお姉さんで、露出度の高さも美しさも、もう衝撃としか言いようがなくて。気になってプロフィールを見ると「44歳、2児の母です。パーソナルカラー診断やってます。」って書いてある。絶対に、この人に会いに行こう、と思いました。それでパーソナルカラー診断を受け、服装やメイクや髪型を変えました。
全ての原動力は憧れの心です。天海祐希の演じるキャリアウーマンもそうですが、ざっくりまとめると、私は強くて美しい女性が好きで、そうなりたいんです。

エル:天海祐希に憧れてキャリアウーマンになり、コスプレーヤーさんに憧れて(コスプレじゃないけど)変身したわけですね。憧れの力、畏るべしです。
そうそう、憧れという言葉で連想したのですが、「キャリアの理想や目標は、自ら考えて見つけなさい。そのためには多くの先輩と話して、刺激を受けなさい。」という話が、最近受けた研修でありました。正直、すごく難しいと感じました。

カレー部長:そうですよね。私にとってファッションとは、理想や目標を表現する手段です。でもそもそも、何を美しいと思うか、自分が何を成し遂げたいと思っているか。それを自分でちゃんと把握するのって、意外と難しいですよね。

 ちょっと話はずれるんですが、私は大学時代にアートを勉強していて、アートとデザインとファッションは、それぞれ「何を美しいと思い、それを誰にどういう表現で伝えるか」という根本的な思想において繋がっているんです。表現の手段は後からついてくるもので、まずはアーティストが「何を美しいと思うか」「何を正しいと思うか」が大事。そしてそれって、個人だったら「美学」ですし、会社の場合は「経営理念」ですよね。

 特に最近は、ChatGPTのような優れたAIが実用化されて、論理を組み立てる力や科学といった、理屈によって再現可能な言語表現の価値が相対的に下がっていると思います。最初にロジックを生むのはとても難しいけれど、出来上がったロジックがあればAIはそれを元に何でも再現できるわけです。

 そうなってくると、最後に人間の元に残るのって、美学なんじゃないかと私は思います。だからきっと、どんなに個々の仕事がAIに取って代わったとしても、「経営理念」をどうするか、という問いは、人間の元に残る。だからこれからの経営者には、今以上にもっと、「率いる組織を、どういう状態に導きたいか?」「組織やAIを使って、どういう世界を作りたいか?」という問いが、突きつけられると思っています。そのため、「構想力」もしくは「憧れ力」が、経営者の要件として、重要性を増すと考えています。

理想を目指すドラァグ・クイーンと、思考力の関係

カレー部長:私も、理想や憧れという言葉から、ちょうど連想したのですが、私は理想の追求という観点から、ドラァグ・クイーンにすごく興味があるんです。
 例えば、アメリカのドラァグ・クイーン界の大御所、ル・ポールさん。素顔は年相応のおじさんですが、ひとたび装うと凄まじい美女になります。ル・ポールさんは後進のドラァグ・クイーンを育てるべくコンテストを開いていて、それはアメリカのテレビでリアリティーショーとして放映されています。コンテストには人種も体格もバラバラで、日本人の「若くて細くてかわいらしい」美の基準からすると、規格外な人もたくさん出てくる。でもコンテスト出場者は全員、自分の美に対する揺るぎない理想を持っていて、理想に近づくために一心不乱に努力して目標に近づこうとしていて、「これが私です」って胸を張っています。

ル・ポールのドラァグレース 最新シリーズ(Season 15) より。日本ではNetflix で視聴可。

カレー部長:男性をベースに制度設計されている日系大企業で働いていると、自分が組織のマイノリティだと感じます。たとえば出産後、産前は気軽に行けていた出張に行けず、そもそも周囲から行けるとも期待されておらず(コロナ禍で、結局みんな行けなくなりましたが)、ショックや疎外感を感じることもありました。だから、マイノリティであるドラァグ・クイーンに自分を投影し、彼女たちが理想に向かって突き進む姿に、心を動かされるのかもしれません。
 「ドラァグ・クイーンの美なんて、どうせ作り物だろ」と批判するマジョリティの存在も受け入れてしまって、それでも自分を表現しつづける彼女たちの強さにも魅せられます。
 …こんなにドラァグ・クイーンについて考えたのって、はじめてかも(笑)

エル:マイノリティだからこそ、自分の理想や美学について深く考え、目標に向かって走る経験を持てた。目標の達成未達成以上に、思考力そのものを高めることができた。カレー部長さんの話を聞いていると、そんな印象を受けます。

カレー部長:あると思います。違和感や息苦しさを感じると、私は自分に要因を求めがちな性格です。しかし考えれば考えるほど、働くうえでの違和感や息苦しさの中には、社会や組織の構造に問題があるものも多いんじゃないかと思うようになりました。子どもを産んで変わらざるを得ない女性、変わらなくても許容される男性…とか。マイノリティで居た結果、漠然とした違和感を言語化する経験も多く積むことになりました。考える力が高められたのは、結果的にラッキーだったかもしれません。

エル:カレー部長さんは目標が高くて達成意欲も高いから、女性ならではのハンデを感じたとき、たとえば出産や育児で思うように働けないときに苦しさを感じたのかもしれませんね。人の視線を気にせず自分の理想に向かって突き進む人に、個人的には、とても憧れます。
 ただ、理想を目指して突き進むマイノリティは、それをファッションでも表現しちゃうと、周囲から怖がられてしまう気もするのですが、そういう葛藤はありましたか?

カレー部長:はい、もちろん、あります。私は現在、企画の仕事をしています。企画職は、ちょっと極論を言えば、「人と違った提案ができなければ、存在価値がない」といった類の仕事です。だから仕事で求められることと、ファッションの趣味嗜好がマッチしていて、今は比較的幸せに過ごせています。
 でも、営業だったら今の服は…さすがにもうちょっと押さえているでしょうね。なりたい自分になることも大事ですけれど、そこはやっぱりビジネスだからTPO、もっと言うなら「相手の文脈に、戦略的に合わせること」は大事だと思っています。自分の目標を達成するためにも。

エル:自分の美学や趣味嗜好、目的意識と合う仕事に、私も早く出会いたいです。


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第3回で最後です。

【Text by カレー部長、Edit by あやの】

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