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CUTBOSS MAGAZINE 2019年8号(3月21日号)

自分の名前には「意味がある」。これは誰しもがそうだと私は思い込んでいたのだが、自分の名前に「意味がない」人も少なくないような気がしてきた。漢字表記できる国の外国人たちは、名前に意味がある人が多かったが、そうではない国の場合、意味もなく慣習的に名前をつけるそうだ、その時の流行りの名前を。これは日本のキラキラネームみたいなものなのだろうか。格好いいから、響きがいいから、だけの理由だという。

盲点だったのだが(すっかり忘れていたのだが)、私の弟は、格好いいからという理由だけで父親から名前をつけられていた。だから特に名前では話が盛り上がらないという。「名は体を表す」と言うが、入社時の面接では、名前になぞらえて自己紹介することも多々ある。そういう場合に、弟は羨ましく思うらしい

私の名前には両親、親戚から込められた立派な意味があるのだが、それでも私も自己紹介で引用することができない。私の名前の意味をそのまま表現すると、かなりお堅い、七三分けで第一ボタンまでぴっちり締めた人物のような印象になってしまうのだが、前号で紹介したように、根はオッサンがワンピースを着たような人間なので、だいぶ嘘になってしまう。うーん。なんか、名前に負けている気がして、逆に自虐的な笑い話に使っている。結構、職場の外国人たちにもウケたから、まあ、いいか。そしてそうやって名前で笑えることもイイネって言ってくれる。

弟の名前は、とある惑星の名前だ。本当に意味がないのかと皆に聞かれたが、悲しいことにそれ以上でも以下でもない。星のように輝けという意味ではないか? そんなことを言ってくれる皆は優しい。星になれという意味ではないか? そんなことを言ってくれる皆はやさ……生まれて早々死ねってこと?



我々は知らぬ間にネットワークに監禁されている

こないだ、朝から会社のネットワークが事故で全て遮断されてしまって、完全に業務が止まってしまった。これはとても怖いことだと思った

アプリ開発は、一人で行うものではない。複数人が、機能や画面毎に分担され、同時に開発を行う。それぞれが自由に開発していたらメチャクチャになってしまうので、都度、「バージョン管理システム(いつ、だれが、何を変更・保存したのかが詳細に分かる)」に保存しながら進捗を確認していく。複数人が同時にアクセスするということは、つまりそれはネットワークを経由するということなのだが、それが止まってしまった為、開発が何もできなかった

又、顧客とのやり取りは履歴(エビデンス)を確実に残す為、全てチャットやメールで行うことになっている。これまた完全に止まってしまって連絡できなくなってしまった。とにかく、アプリ開発はネットワークに依存している為、一日仕事にならなかった

今、オフィスに来ず、家で遠隔で仕事をすることが流行っているが、アプリ開発ほどそれに適した仕事はないし、今回のことで、むしろその方向にシフトしないといけないと強く感じた。開発した全てのソースコードは常にネットワーク上に管理されているので、実は会社に来る必要性が殆ど無い。大げさな話ではなく、目の前に座っているエンジニア同士もチャットにコミュニケーションの履歴(エビデンス)を残すので、口から会話をしない一日があったり、よく考えたら、不思議な光景だと思う。

5Gの普及で、ネットワークの遅延(ディレイ)がなくなるので、アプリ開発は廃れると言われている、廃業すると。例えば、ホーム画面を下にスワイプして更新する場合、ネットワークからデータを読み込む為に一秒くらい時間が掛かっていたものが、まるでネットワークに接続していないかの如く一瞬でデータが読み込めるようになるという話だ。

確かにそれは素晴らしい世界で、画面も含めた全てをWEB開発に移行してしまって、そうなるとアプリ開発は本当になくなってしまいそうだが、ネットワークが一度閉ざされたら、何もできなくなるという恐怖に、気がつかないといけない。アプリは基本的には、オフラインで動作できることを前提に開発する。ネットワークが閉ざされても、ネットワーク上と同じデータをオフライン領域に同時に保持する。しかし、アプリ開発がなくなれば、全てがネットワーク上に存在することになり、それはオフラインを前提にしてきたエンジニアからすれば、怖くて堪らない。ただそれは、時代の変革の戸惑いだけかもしれない。そしてネットワークは一切遮断されない世界になるのかもしれない。

アプリ開発だけではなかった。事務職すらも、全ての書類がオンライン化されていたので、この日は皆が何もできなかった。結局、次の日までネットワークは復旧されなかった為、完全に業務が止まっていた。今やもう、オフィスに集まって仕事をするという事自体が、時代錯誤なのかもしれない



本当にUI/UXデザイナーは日本におらんのか

UI/UXデザイナーは日本に殆どいないと言われている。実際、この15年で出会ったことが一度もないし、発注側が、その必要性を殆ど認識していない点が大きな理由なんだと思う。以下の案件もそうだったし、並行で開発していた別の案件でもそうだった。

案件にはデザイナーが毎回一応はアサインされるのだが、彼らはWEBデザイナーもしくはイラストレーターであり、アプリのUI/UXデザイナーではない。AndroidにもiOSにもUI/UXのガイドラインがあり、それに従ってデザインすることで、Google や Apple からフィーチャーしてもらえるようになる。それはアプリをリリースしヒットさせる為には本当に必要不可欠なことなのだが(ガイドラインに則っていないとそもそも対象外になる)、「オシャレでオリジナル性があればいい」と発注側は単純に思っているから、UI/UXデザイナーが一向に育たないし、何より操作性の極めて悪いアプリが出来上がってしまう。

デザインの経験は、プラットフォームに基づくものだ。そこが一緒くたになって勘違いされている。私たちはアプリ屋で、AndroidアプリもiOSアプリもWEBアプリもWindowsアプリもMacアプリも作れるが、デザインは一切できない。それは絵が描けないからではない。絵も描けるエンジニアは多々いるが、UI/UXをデザインできない。デザイナーは絵が描けたらデザイナーではない

実際、Google Play などストアで人気のアプリで、デザインが何でこんなに残念なんだと思うものを多々目にする。しかし、それでいいと皆が思ってしまっているし、それ以外にちゃんとUI/UXが設計されたアプリが見当たらないから、間違いに気がつかない。この操作性でいいんだと、違和感を覚えてもこれがスマホの感じなんだと、これぞアプリなんだと、思い込まされている

だいぶ前から「Behance」を利用しているのだが、本当に素晴らしいUI/UXデザイナーが集まっている。正しく作られたアプリは、その使い心地がそうではないものに比べて、本当に段違いだ。脱帽する。

アプリは機能性が勿論重要だ、そもそも使い物にならないのではお話にならない。だからこそ、UI/UXを正しく設計し、より一層、ユーザ体験を最高のものにする。アプリをリリースするなら、そこを目指すべきなのに、自分たちの実現したかった機能面にだけ焦点を当ててしまうのは、残念でならない。それは勿体ない、という気持ちが非常に大きい。

並行して開発した今回の二案件、ハッキリ言って、クソだせぇ。どちらもインターネット初期(20年前)のホームページみたいなデザインだ。提供されたこれらデザイン仕様書は「落描き」かと思ったが、本決まりのデザインだと聞いて、エンジニアたちのモチベーションは最早底辺だ。



グッドデザイン賞は審査料が高額すぎたから辞めた

UI/UXデザインができるわけではないが、エンジニアたちはその下がったモチベーションをDIYに向けて、「単語帳F」にお祭り騒ぎみたいに注力した。ハッキリ言ってメチャクチャ楽しい。学生の頃に部活動(アプリ開発部みたいな)でこんなことができていたら本当に楽しかっただろうなと思う。単語帳アプリの理想の機能はこうじゃないか、理想のUI/UXはこうじゃないか、その議論が実現が鳥肌が立つくらい心から楽しい。じゃんじゃんアップデートしてリリースしている。最新は「Google スプレッドシート」などから単語帳をアプリへインポートできるように対応した。この議論も楽しかった。

受託開発はどうしてもフラストレーションが溜まる。全エンジニアが「これは違う」と思っても、顧客が彼らの培った経験を無視して「やれ」と言ったら最終的にはそれに従わないとならない。その瞬間に、そのアプリに対して愛着はなくなって、もう単なる職務・職責での開発でしかなくなる。

単語帳F」は、皆のこれまでの開発経験を基にして後悔のないそして未来を目指すアプリになった。だからいつしか自然と「グッドデザイン賞」に出してみようという話になった。それくらい、テンションが高かった。

だが、グッドデザイン賞の受賞歴などを見ていると、どうも「デザイン」とは「機能面」に偏っているようだった。所謂クソだせぇ見た目でも、意義があれば受賞していたアプリは多かった。そういうことだと、「単語帳F」には何の意義もないし、今更新しくもないから、そもそも応募するに値しないことになる。そして何より、審査料が高すぎた。ざっくりで申し訳ないが、

・一次審査:約一万円
・二次審査:約五万円
・三次?審査:約十五万円
・Gマーク利用:年間約二十万円

こんな感じだった。受賞アプリの多くがダサくて、巷を賑わせているものではない理由が分かった気がした。こんな金は持っていない。おそらく、参加は大手企業が主であり、「箔」をつける為にGマークを取得しているのだろう。うーん。残念。こんなものには参加したくない。「単語帳F」は、今までにないくらいの彼らの結晶だから、何か形に残る称号みたいなものが、ほしかった。また考える。無下にしたくない。



ベトナム語は「世界一難しい言語」らしい

折角、日々、外国人に囲まれているので、「単語帳F」で「ベトナム語」を勉強しているのだが、ベトナム語は「世界一難しい言語」らしい

まず発音が日本人には無理そう。中国語と同じように音の高低で意味が変わるのだが、それに加えて一文字一文字、聞いたことない音が、悪いけど「怪音」にしか聞こえない

外国人からすると、日本の言語体系は独特で、ひらがな、カタカナ、漢字、英語、が街中に散見されるのは、気持ちが悪いと思うこともあるらしい。特にベトナムだと、日本の言葉の「表現の多さ」にとても対応できなくて、日本語のこの表現ならこれ、あの表現ならこれ、とジグソーパズルのようにすんなりとは当て嵌められないというのだ。それはベトナムでもシチュエーションによって言葉の表現が多々違うからで、日本と同じようにその豊かな表現が、他言語ではどうしても表現し切れないらしい。

中国語と英語がペラペラの知人(日本人)が居るのだが、彼女曰く、言語学習のコツはどれも同じらしいのだが、そんな域にはとても到達できそうもないので、アプリ開発に関連するベトナムの単語くらいは、「単語帳F」で覚えることにする。

「韓国語」も「単語帳F」で覚えているのだが、初めて知ったのだが、日本語と同じ発音と意味の単語が凄く多い。そして、ベトナム語と同じ発音と意味の単語も多い。言語の繋がりというか歴史に関係しているんだよね、きっと。面白いわー。

食費入力のみ家計簿アプリ「食費簿」、自慰管理アプリ「アイナーノ」、どちらも御陰様で好調です。より良いアプリ開発に役立てます。