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教育の根幹を学ぶ「キリンの首」

<文学(23歩目)>
統合間もないドイツ東部(旧:東ドイツ)の生物学教師から、「教育の根幹」を学ぶ。

キリンの首
ユーディット・シャランスキー (著), 細井 直子 (翻訳)
河出書房新社

「23歩目」は「もっとも美しいドイツの本」という書評で読んだ作品。
確かに美しい。しかし、この作品は美しい挿絵だけで片付けたら、作者のユーディット・シャランスキーさんに申し訳ない作品です!

最初は生物の授業を担当する老女性教師の独白が冗長と感じた。しかし、最後まで読み通すと「先生」とは何なのか?に突き付けた刃を感じた。「先生」という職業に卒業後間もなく就くすべての「先生」にかかわる話だと感じた。

職業を限定して考えると、「古臭くなっても先生は先生」となるのかもしれない。しかし、生物教師のローマルク先生と同僚であり、校長でもあるカトゥナー先生との「先生の対比」が興味深い。

「科目を自らの教育哲学で教える前者」と「ドイツ統合後の教育制度の変化を含めて身に着けてまとめる後者」と考えると、前者は「科目」を教える教師でしかない。そこには環境の変化に対応する力もないし、他者の気持ちを理解する姿勢もない。

「先生」と呼ばれる立場であっても、「常に学ぶことが必要な資質」と感じました。

子どもを持って一番感じたのが、自分の至らなさ。出来の悪い親だからこそ、子どもと接して学ぶことも多い。

「先生と生徒」の関係を「全てに対して先生は先生である」と考える硬直的なコチコチ頭が社会の色々なところに問題を起こしていると感じました。ちょっとマイナーな作品ながら「教える」ことに携わっている人には必読です。

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