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【行政】第一線公務員の裁量とジレンマ

1.はじめに

 本記事では、第一線公務員における裁量とジレンマについて解説する。

2.第一線公務員の裁量とジレンマ

 第一線公務員はストリートレベルの公務員ともよばれ、教職員や地域警察官、生活相談員のように現場で市民と直接対峙する業務を中心に担っている公務員のことを言う。
 この第一線公務員は、行政学において裁量余地の観点から扱われることが多い。
 行政を担う公務員は、選挙によって民主的に選ばれた者ではないため、大きな裁量を与えられることなく法令等で定められた手順に沿って粛々と事務を遂行するイメージがあるかもしれない。
 もちろんそういう公務員もいるのだが、特に第一線公務員とよばれる現場の者は意外に裁量があるとされている。行政学者のリプスキーによると、第一線公務員は法令の実際の運用や、業務の振り分けにおいてある程度柔軟性を有するものなのだという。
 例えば、地域警察官が市民と関わる際、ある程度のマニュアル対応はあったとしても、想定外の出来事は付き物であり、柔軟性なく一挙手一投足まで全て規定されていては逆に仕事にならない。
 そのため、現場業務を担う第一線公務員に対して柔軟性、つまり裁量の余地を相応に与えておくことは一定の合理性があるわけである。
 一方で、第一線公務員の管理職は彼らを統率する必要があるわけだが、現場から距離がある管理職にとっては彼らの一挙手一投足を管理することは困難であり、結果的に裁量の大きい第一線公務員をコントロールしきれていない側面があるのも事実である。
 また、この裁量余地の大きさは、しばしば第一線公務員側にとっても葛藤となりうる。裁量余地が大きい反面、膨大な量の業務をこなしていくなかで業務アロケーションをどのように振り分けていくべきであるのか、そもそも限られた資源をどこに振り分けることが正しいのか、そしてその判断によって行政サービスの目的が達成されているのだろうか、といった葛藤につながってしまうのである。
 したがって、第一線公務員に大きな裁量を与えることは、業務の柔軟性を高める反面、統率力低下や現場の葛藤とトレードオフの関係になりがちなものなのである。

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