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映画感想文 その1 『マイ・コイと反逆者たち』

 ちょっと前に、アジアンドキュメンタリーズにて配信されている『マイ・コイと反逆者たち』を視聴しました。

 今年(2023年)の4月、初の海外、所はベトナムのダナンという観光都市に行ってきました。アルバイトの一環でたまたま出張する運びとなり、日本の某有名リゾートホテル直営の宿泊先でおよそ1週間を、ほぼ外出することなく過ごしました。そんな訳で外界を殆ど見ることができなかったので、本作中でうかがい知れる「真のベトナム」の姿はまるで感じませんでした。

 ほんの少し街に出た際に流れてきた音楽も殆どが韓流のそれらでしたし、Spotifyでみつけた「ベトナム・ベストヒット」のプレイリストも韓国ばかり…。〜私がベトナム語で検索できないというのもあったかもしれませんが、この事からも閉ざされたベトナムの片鱗みたいなものが垣間見える気がします。〜

 彼女(マイ・コイ)は祖国ベトナムの美しさを謳った歌『ベトナム』で一躍国民的スターに駆け上がります。奇抜なヘアースタイルなどもあいまって“ベトナムのレディー・ガガ”と呼ばれ国民なら誰しもが知るほどの存在となりますが、後にベトナム共産党の一党統治国家における報道や表現への規制、女性差別、人権、暴力などに対し、自由を求め様々な“活動”を実践し「反逆者」として追われる身に立場を変化させていきます。

 音楽活動を禁止されるなど逮捕スレスレの生活の中で活動しつづける彼女のベトナムでの記録がノンフィクションとは思えないほどのリアルさで収められています。なかなかこれほどスリリングなドキュメンタリーには出会えないでしょう。

 ただ勘違いしてならないのは、このような映画は無いに越したことはない(うみ出される必要のない社会こそが理想)ということです。彼女もそう思っているはず。もっとも愛する祖国の為に、もっとも愛する人々の為に、ただ自由を、自由で、自由に謳っている…本当はただそれだけのことですから。なので著名になるきっかけとなった『ベトナム』も、嘘は何もないのです。

 そんな彼女は今ベトナムにはいません。それは“居れらない”からです。ラストシーン、彼女が愛する祖国を立つその時、空港のゲートでパスポートをチェックする審査官が口にした一言に私は絶句しました。さて…どんな言葉だったと思いますか? どっちの意味だと思いますか?

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