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ふたご/藤崎彩織

SEKAI NO OWARIの音楽が好きである。

メンバーのビジュアルや発言や音楽は賛否両論だし
私も全肯定するわけではないが
それでも好きであった。

 
そしてFukaseくんとSaoriちゃんの関係性。

これは個人的に非常に興味深いものだった。
二人の言動から、お互いに特別な存在であり、おそらくSaoriちゃんはFukaseくんが好きだが 
Fukaseくんは恋人を作り
Fukaseくんの恋人とSaoriちゃんは仲が良く
しかしFukaseくんとSaoriちゃんは同じ家に棲むという
この関係性。

 
最終的にFukaseくんとSaoriちゃんが結ばれる気はしていたが
最終的にSaoriちゃんが別の人と結婚し
しかしそれでもセカオワハウスに住んでいるという現実も
またFukaseくんとSaoriちゃんの関係性を確立するようなものであった。

FukaseくんとSaoriちゃんっぽいなぁ、というやつである。

 
  
そんなSaoriちゃんの初小説はタイトルからして
「Fukaseくんと自分はまるで双子みたい」という内容かと思ったが
やはり帯を見るとそんな内容のようである。

小説というより、自伝…
 
そう思うと、気にはなりつつも手は出さなかったのだが
売上がよいことと、思っていたよりネットユーザー評価が高かったので購入して読むことにした。

 
 
内容は
「人間関係が昔から上手くいかず、ピアノだけが友達だった夏子が、月島に出会ったことで人生が変わっていく。
月島の言動は今までの夏子の“正しさや常識”からかけ離れたものであり、強く惹かれていく。
月島も夏子に毎日電話をかけたり、「恋人」と周りに伝えたりするが
月島は夏子の側にいながら、別の人に恋し、それを平然と夏子に伝えていく。
夏子は振り回され、疲れていくが、強く惹かれる気持ちが止められない。

月島は学校が合わず、ほとんど通わないまま中退し、留学するもパニック障害になり、精神科に入院し、上手くレールに乗って生きられずにいたが
仲間や夏子とバンドを頑張ってみようと思い、プロデビューを目指す。」
 
   
  
…読むほどに、この小説はほとんど実話じゃないだろうかと錯覚する。
読んでいて、ファンなら聞いたことあるようなエピソードがいくつも…
夏子はSaoriちゃんだし、月島はFukaseくんにしか見えない。

セカオワファンや、SaoriちゃんとFukaseくんの関係性が好きな人なら好きだろうが
セカオワやSaoriちゃんとFukaseくんの関係性に興味ない人は読んでどういう反応を示すのだろう。

 
私はセカオワやSaoriちゃんとFukaseくんの関係性に興味があるので
さくさく一気読みできたが
好き嫌いが分かれる内容かもしれない。

重く暗い内容も含まれる。
あと、一部と二部で別れているが、章がたくさん別れている。こんなに章があるのは珍しい。

 
私は夏子やSaoriちゃんに似ていて
昔は月島やFukaseくんのような友人や人と関わってきたから
夏子の苦悩や月島に惹かれていく姿や
月島の言動に振り回される描写は 
かつての自分を見ているような気分になった。

月島は痛いところをつく…言葉に力がある。
この小説は私にとっては共感気分を味わえる作品なのである。
 
  
夏子と月島の関係性は漫画「NANA」のタクミとレイラも関係性が似ている。
友達ではなく、家族でもなく、まして恋人ではないが、周りから見ると友達以上、家族か恋人のように見える。
特別すぎるように見える関係性。
恋人にしたいとは思わない男と、恋人になりたいけれどなったらそばにいられないことが分かっているからそれは口にしない女。

 
この小説を読んでいたら
セカオワの「眠り姫」が頭の中を流れた。

“二人で冒険してくぐり抜けてきたけど、君がこのまま目を覚まさなかったら、これから一人で戦わなきゃいけないんだね
君の寝顔を見ていたらそんなことを思った”

そんな内容の歌なのだが
私はFukaseくんがSaoriちゃんを思って作った曲だと勝手に解釈している。
そして切なくなる。

 
FukaseくんとSaoriちゃんは共依存だと
この小説も共依存だと評している人がいるが
確かにこの「眠り姫」の歌詞を見ると
そう思わなくはない。

たくさんの人がいる中で「ふたごのような」存在に出会えることは
幸運でもあり、脅威でもあると思う。

 
恋人や結婚する人が
人生で出会った中で最も好きな人とは限らないし
どんなに好きでも報われないことや上手くいかないことは多々ある。
気持ちも関係性も人それぞれで
関係性で気持ちははかれない。

 
関係性は「恋人」や「結婚相手」ではないが
特別な関係性…という設定が読み物として私は好きである(レイラとタクミも好き)。
共依存ではないが、共生・共犯の「白夜行」の雪穂と亮司との関係性も好きである。

「白夜行」を読み返したくなった。



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