だいきの帳面

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書生。絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN)。哲学、小説、映画。 YouTube https://m.youtube.com/channel/UC3Y-lrRIpiiDRGq2dwCiacg Twitter https://twitter.com/daIKI_K10

最近の記事

外山恒一×東浩紀の対談を観た感想

 不可侵であるはずの権利を、緊急時は特例だとして明け渡してしまうこと。そこに二人は明確に否を唱えたが、これはまったく正しい。特例を認めてしまえば人権も言葉遊びに過ぎない。命よりも大切なものがあるか? この問いは分断を生むだろう。死んでしまったら元も子もないか、自由でなければ生きる意味がないか。要するに、合理主義から身を翻せるか否かが、人間から超人に至る最初の関門になり、分断線になる。ここを突破できない有象無象を、二人は人民と呼んで蔑むのだ。  東はリベラルには失望したと詰め

    • コロナ禍と日本の政治

       2020年5月4日、日本政府はコロナウイルス感染拡大を防ぐための緊急事態宣言を5月末まで延長すると発表しました。その一方で、出口の見えないこれ以上の自粛は経済的なデメリットが大きすぎるという意見も目立ち始めています。日本の現状と今後を他国の状況を参考にして考えてみましょう。人名は敬省略します。すみません。  さて、横に⇔を書きます。左端に経済最優先のブラジル大統領ボルソナーロ、右端に強権的に抑え込んだ中国最高指導者、習近平を置きます。その他は、〈ボルソナーロ‐習近平〉の間

      • 階級闘争の作法

         争議も喧嘩も革命も、ただのゲームと割り切ることです。上位の存在と対戦するなら、まずは相手の権力が何によって担保されているかを見定め、その根をハックすることです。ふざけた会社は労基署を、いけ好かない研究室の教授は専攻科長や学生課を、けちな保険会社は日本損害保険協会を、それぞれ召喚して上から叩き潰しましょう。いずれにせよ勝敗を決めるのは殺意の強さです。関心はすべての源泉です。筋力も戦略も経験も、すべては殺意から生まれます。  マルクスが暴力革命を唱えた意味をよく考えるべきです

        • 村上龍『空港にて』評

           村上龍の『空港にて』が殊に優れた短編小説であることは、皆様すでにご承知のことと思います。ここに明かされるのはその傑作たる所以なのですが、よしんばそれが明かされたとしても、それをもとに上質な短編を狙って書こうというのは、どだい無理な話でしょう。もちろん技法も大切ですが、着想は決まって幸運がもたらすもので、狙って作れるものではないのです。しかしこんなことはわざわざ言うまでもなく、『空港にて』が、それがとても短い作品であるにも関わらず、いかに複雑な象徴関係によって成立しているかを

        外山恒一×東浩紀の対談を観た感想

          新海誠『天気の子』評

          観てきたので評論をぶつぞ。 端的に、総評を言えば悪くなかった。たぶん『君の名は。』よりもよかった。しかし映画の根幹の部分で看過できない問題があった。以下に良かった点と悪かった点を示そう。 【良かった点】 新海誠監督(以下敬称略)の強みは、光と水の描写にある。その強みを活かした、雨に光る東京を舞台にした感傷的な恋愛譚『言の葉の庭』で新海のスタイルは確立された。だが『言の葉の庭』には、商業的に成功するには足りない要素があった。展開と舞台(画)が単調だったのだ。 この弱点を

          新海誠『天気の子』評

          上野千鶴子氏の祝辞に応える。努力か環境か。

          今回は、話題になっているこちら。東大入学式をざわつかせた上野千鶴子氏の祝辞について(原文は以下リンク先、引用は全てここから)。世間では概ね好意的に受け止められているようだが、気になる点があったので書く。 上野氏はフェミニズムの論客として名を馳せる社会学者だ。社会学は社会を切り口にして人間存在に迫る学問であり、今回の祝辞も社会学者らしい視点が光る。ちょっと肝の部分を引用してみる。 あなたたちはがんばれば報われる、と思ってここまで来たはずです。ですが、冒頭で不正入試に触れたと

          上野千鶴子氏の祝辞に応える。努力か環境か。

          〈資本主義社会‐内‐存在〉商品人間と欲望の大量生産

          1/3 這い寄る資本家まず我々が警戒せねばならないのは、システムによる侵犯である。たとえばそれは次のようにして始まる。 「これ、めっちゃ便利なんですよ。電車とか、お風呂とか、すきま時間を使って稼げちゃうんです。ほらこんな感じで(彼女は私にスマートフォンを見せる)アンケートがいっぱいあるんですけど、これに回答するだけでお金がもらえちゃうんです。あ、お金と言っても本当はポイントで、いやでも通販で服とかコスメとかいろいろ買えるから、ほぼお金みたいなものです」 「ふうむ」私は眉を

          〈資本主義社会‐内‐存在〉商品人間と欲望の大量生産