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あくまでもクリスチャン

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小説『あくまでもクリスチャン』を一つにまとめたマガジンです。見習い神父と不幸な悪魔のドタバタファンタジー!!
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記事一覧

あくまでもクリスチャン「第一節」

あくまでもクリスチャン「第一節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第一節

 うすぼんやりとした明かりに照らされている部屋がある。その明かりは、窓から漏れる黄昏時の太陽。

 物でごった返している部屋の中、それらを横に押しやり、辛うじて空けたスペースに、少年が一人、しゃがみ込んでいる。

 白のチョークを手に、もう片方の手に一冊の本を広げて抱え、少年は、ホコリを払ったばかりの床板に、その本のとあるページに印刷されてい

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あくまでもクリスチャン「第二節」

あくまでもクリスチャン「第二節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第二節

「うわ!?」

 男の片足が乗った途端、缶は前に転がり、重心を預けていた男の身体は後ろに向かって見事にひっくり返ってしまった。その瞬間、男が履いているブーツのかかとに引っかかり、缶が宙に舞い上がった。

「ふぎゃあ!」

 なんとも痛々しいまでの悲鳴が上がった。それは、惚れ惚れするほどの負の連鎖が生み出した、一瞬の出来事の末の結果である。

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あくまでもクリスチャン「第三節」

あくまでもクリスチャン「第三節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第三節

「……はあ?」

 少年の言葉を受け、ルシェルファウストは表情のない真顔のまま、しばらく、その場に立ち尽くしていた。しばらくすると、彼は、急に眉根を寄せてシワを作り、自分の耳を少年に向けて、その横に手を添えて、聞き返すような仕草をした。

「すまん、どうもよく聞こえなかった。もう一度言ってくれるか?」

 ルシェルファウストは向けた耳を少年に

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あくまでもクリスチャン「第四節」

あくまでもクリスチャン「第四節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第四節

「僕は、お師匠様の代わりとして、教会を守る義務があります! だから、絶対にここを守り切ろうと! ……でも、この教会は一村の小さな教会で、お金もなくて、お師匠様は人脈に優れていますが、僕には頼れる人もなく……もう、ここを追い出されるのは時間の問題で……」

 クリスはまたもじもじとし、うつむき、背中を丸め、徐々に小さくなっていった。

「――情

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あくまでもクリスチャン「第五節」

あくまでもクリスチャン「第五節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第五節

「ん? 代償だ、報酬だよ。簡単に言うなら給料だな。悪魔と契約を結ぶからには当然、それに見合う代償を支払わねばならん。おまえたちの世界でもそうだろう? 等価交換だ。……おまえ、ちゃんと本を読んだのか?」

 ルシェルファウストは、クリスが抱えている本を指差した。

「代償……」

 クリスは明らかに悩んでいる。どうやら、ルシェルファウストの指摘

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あくまでもクリスチャン「第六節」

あくまでもクリスチャン「第六節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第六節

 村の入り口のすぐの所に、この村で唯一の宿泊施設である小さなモーテルがある。老夫婦が長年営んできたそのモーテルは、部屋こそきれいに整えられているが、老朽化が激しく、外観も古ぼけており、ひどく寂れて見える。

 町から離れているこの村を訪れる人間はそうはおらず、モーテルを利用する客も、月に一人か二人。

 昔、この辺りには炭鉱があり、それなりに

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あくまでもクリスチャン「第七節」

あくまでもクリスチャン「第七節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第七節

「ぎゃあっ!」

 今宵は悲鳴の絶えない夜だった。

「ぎえええっ!」

 悲鳴が上がる。何かが壊れるような激しい物音がするたびに、悲鳴が上がる。

「なんなんだ、こいつ!?」

「ひええっ!」

 またも悲鳴が上がった瞬間、モーテルのすべての部屋の窓ガラスが吹き飛び、砕け散り、その窓ガラスの破片と共に、数人の男たちがモーテルの外へと飛び出し

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あくまでもクリスチャン「第八節」

あくまでもクリスチャン「第八節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第八節

 闇夜に支配された村。その一角でけたたましい悲鳴が上がっていた、その同時刻。

「主よ……」

 聖堂の奥にある巨大な十字架のその下に、ひざまずいているクリスの姿があった。胸の前で両手指を組み合わせて、目を閉じ、静かに瞑想している。何かを呟いているらしく、その口はしきりに小さく動いていた。そして、おもむろに立ち上がると、胸の前で十字を切った。

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あくまでもクリスチャン「第九節」

あくまでもクリスチャン「第九節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第九節

「あのう」

 クリスは後ろを振り返り、声をかけた。

「なんだ?」

 ルシェルは首筋を掻きながら返事をする。

「お礼と言ってはなんなのですが、食堂に夕食を用意しておりますので、よろしければ食べていってください」

 クリスは自分から見て左手を指差した。彼が向けた手の先には扉が一つ。

「食事?」

 しきりにクリスが案内しようとするので

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あくまでもクリスチャン「第十節」

あくまでもクリスチャン「第十節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第十節

「ごちそうさまでした」

 クリスは食事を終えるとすぐに席を立ち、使用した食器を積み重ねて、キッチンに運び始めた。すぐに隣の部屋から水の流れる音や、ガチャガチャと皿のこすれる音が聞こえてきた。

 ルシェルは席に留まり、食後の余韻を楽しんでいた。空いたグラスを指で弾き、その高い音色に耳を傾けている。

「ふふっ、あいつめ、我が屋敷のシェフにし

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あくまでもクリスチャン「第十一節」

あくまでもクリスチャン「第十一節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第十一節

「ひぃいっ!」

 恐怖のあまり、悲鳴を上げて、男たちは、再び、引き鉄を引こうとする。しかし、それよりも早く、巨大な怪物がその腕を振り上げた。けたたましい一発の咆哮と共に、巨大な怪物は床に両手を叩きつけた。刹那、凄まじい暴風が巻き起こり、長椅子すべてがドミノ倒しのように、ものすごい速さで入り口を目指して、順番に倒れてゆく。最後の長椅子が倒れ

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あくまでもクリスチャン「第十二節」

あくまでもクリスチャン「第十二節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第十二節

 ――と思いきや、急に眉を顰めて、掲げていた手を戻してしまった。

「いや、ちょっと待てよ」

「……」

 恐怖のあまりに絶句していた男たちは、身を守ろうとするようなその姿勢のまま、固まっている。

 それは、その周りにいるグールたちも同じだった。口を引き裂かんばかりに開き、さあ、飛びかかろうというその姿勢のまま固まっていた。指を打ち鳴ら

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あくまでもクリスチャン「第十三節」

あくまでもクリスチャン「第十三節」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

第十三節

 数分後。

「ヴォオオオ――……」

 整列したグールたちの膨れた腹の中から、雄叫びが聞こえる。

「おまえら、ちゃんと嚙んで食べなかったな? 飲み込んだんだろう? ちゃんと嚙んで食べんと、消化不良を起こすぞ?」

 グールたちを前にし、ルシェルは腰に手をついて、呆れながら注意する。グールたちはどこか不貞腐れているような態度を取っているよ

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あくまでもクリスチャン「エピローグ」

あくまでもクリスチャン「エピローグ」



あくまでもクリスチャン著者
小野 大介

エピローグ

「あのう、なにぶん貧乏な教会なもので、こんなものしか……」

 穴だらけになり、そのうえ、煤をかぶって真っ黒になったルシェルの服や漆黒のマントをその手に抱え、クリスは、着替えを終えたルシェルの姿に目をやった。聖職服を身にまとったルシェルの姿を……。

「ああ、良かった。大きさはちょうどいいみたいですね」

 ルシェルが着たのはお師匠様とや

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