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『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』感想文

 ありがたいことに少し歳の離れた大人の友人が本を貸してくれた。
『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』という二村ヒトシさんの恋愛本だ。エッセイみたいな実用書みたいな、書店でどこにあるのか迷いそうな本である。

 私より恋愛経験豊富な友人の好きな本、これで私も恋愛マスターヅラできる説あるな!とか思っていたら作者はAV監督だという。いや流石にそっち方面は疎いわ…スンとしてしまった。
 いやいや、職業に貴賎なし、なんなら明日は我が身、私もセクシー漫画の編集をするのかもしれないのである。作家というのは総じてすけべな話が好きというのは太古の昔から変わらないので、そういう話やそういう展開は真面目に勉強せねばなるまい。
 ウケるな、例のシーンどう描きます?みたいな話し合いのたびに白夜行とかノルウェイの森を通勤カバンから取り出して「確執を描くにはこのシーンを応用して…」とか真剣に言う私…虚無じゃん、と思いかけて踏みとどまった。
…意外と面白いのでは?喪女がすけべ漫画の編集やってるとかめちゃくちゃおもろいですよね、良いね夢があるうちにしか描けないすけべもありますよね流石に黙りますね。

 とにかく、AV監督も人間の魅力をどう切り取りどう見せるか考えるクリエイターである。下ネタが多い恋愛指南本でしょうな…とか思って読み始めてみれば、オイ!この本めっちゃ哲学書じゃないか!マジメだ!と自分を恥じた。

 なんというか、真剣なトーンでセックスと恋と愛について語る。変にモジモジしていないのはもちろんだが、真剣に「体の関係とは何か、愛情の形成とそれを阻む問題とは何か」みたいなことを考えている人なので、なんか邪な感情が入る余地が全くない。まるで就活のディスカッション、イシューへのアプローチをロジカルにリードしてソリューションをアサインしていく感じである。私はこの「理論!証拠!ロジカルロジカル!」みたいなノリが好きじゃないのだが、この本はさほどイライラせず読みおえた。

 正直いうとやはり書いてるのは男性なのでハァ?テメエ正気か?と思う話もなきにしもあらず、浮気するのは男のサガで女性にはどっしり構えていて欲しい、とか言ってた時には一度本を閉じて深呼吸した。意外とイラついてんじゃん。

 それでも恋愛に関しての切り口は私にとっては新しかった。考え方の幅が広がった気分になれたので読んで良かった。それこそ恋愛経験豊富な人が読んだらまた違った印象があるかもしれない。

おすすめである。

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