mercari hallo(メルカリ ハロ)マーケティングトレース事例
”だれでも、すぐに、かんたんに”
このフレーズと共にmercariがスポットワーク事業を始めるニュースが突如として目に入ってきました。
これまでもタイミーやシェアフルなどスポットワークサービスの存在は知っていたが、mercariがこのビジネスを始めると知ったとき、
なぜmercariがやるのだろうという疑問がよぎったのが正直なところでした。
気になって調べてみると想像よりもおもしろそうな世界観な予感がしたため、マーケティングトレースの題材にしています。
気になる方は読んでみてください。
(mercari halloの関係者の目に留まって飲みに行けたら楽しそうですね)
mercari hallo とは?
mercari halloとはmercariが立ち上げたスポットワーク事業です。
これまでのアルバイトと違うのは、これまでは同じ場所で一定期間働くことが前提でしたが、スポットワークは単日、しかも、1時間からの労働ができます。
ワークスタイルの多様化に伴い、自生活に合わせて働きたいニーズや、労働力不足の社会的な流れが相まって誕生した働き方だともいえます。
mercari halloの興味深い部分は、以下のmercariが出しているイラストのようにmerpayでスポットワークの給与を支払えるようになっていくことやそのmerpayでためたお金がmercariで使えるといったmercariが提供しているサービス間での連携がうまく設計されている部分だと感じます。
マーケティングトレースとは?
今回このmercari halloでマーケティングトレースを行います。
マーケティングトレースとは、ブランディングテクノロジー(株)CMOの黒澤友貴さんが考案されたマーケターの思考力を高めるためのトレーニングです。
一定の手順に沿って整理していくことでサービスの裏にあるマーケティング上の意図を俯瞰的に考える力が養われます。
書籍も出されているので気になる方は読んでみてください!
mercari halloのマーケティングトレース
それでは、ここからはmercari halloのマーケティングトレースの内容に入ります。
PEST分析
mercari halloのPEST分析を行うと以下の外部環境状況が見えてきました。
-政治
スポットワークはギグワークやクラウドソーシングとは違い、業務委託ではなく雇用契約になるみたいです。
そのため、労働基準法などが適用されることになり、最低賃金の遵守や労働時間に応じた休憩時間の確保、また、労働場所などの指示が雇用主側からされます。
詳しくはfreeeの以下のサイトページがまとめてくれていました。
-経済
スポットワークの市場はここ数年でも成長しており、市場としてもまだ成長期に当たりそうです。
また、市場の成長に伴い、スポットワークの求人数やサービスへの登録者数も伸びている傾向にあるみたいですね。
[参考文献]
※1 ツナググループ・ホールディングス ツナグ働き方研究所 ”スポットワークマーケットデータレポート(2024年1月度版)”
※2 株式会社矢野経済研究所 プレスリリース "スポットワーク仲介サービス市場に関する調査を実施(2023年)"
※3 日本経済新聞 "スポットワーカー1000万人 すきま時間に単発バイト半年で3割増、飲食など人手補う"
-社会
社会トレンドとしての動きは大きく2つかなと考えます。
1つ目は労働人口の減少に伴った労働力不足で、多くの企業で働き手が不足している中、将来的にもスポットでの労働力の確保の需要は増していく可能性が高いことが考えられます。
2つ目はワークスタイルに合わせた働き方や雇用の多様化の流れに伴い、
空いた隙間時間で働けるスポットワークも自分が望む働く選択肢としてユーザーに受け入れられていっているといった面です。
-技術
技術面でみるとモバイルアプリがベースとしてありつつ、
ビジネスモデルがリボン型であることから、
AIや数理最適化による求職者と求人のマッチングやレコメンドといった技術とは一定相性がよさそうです。
競合の分析(5force分析)
では次に競合として何が挙げられるかと、法人側顧客と個人側顧客の交渉力を整理していきます。
競合分析
まず5force分析における縦の競合軸に関してです。
直接的な業界の競合にはタイミーやシェアフル、Shotworksなどがあるみたいですね。
どこもスポットワークの求職者と求人をマッチングするプラットホームを提供するリボン型のビジネスモデルをとっているみたいです。
求人-候補者のマッチングをするリボンモデルは特徴として求職者と求人双方に一定の量と種類を揃える必要が発生してきます(登録して検索したけど欲しいものがないとなれば離反してしまうので)。
そのため、双方に対してのマーケティング施策は検討が必要です。
また、最近ではマッチングの部分でAIを活用してレコメンドを行うサービスも増えてきているため、サービスの質を上げる意味では検討してみてもいいかもしれません。
各社のサイトやアプリをダウンロードして調べたところ、
今のところ登録や掲載は無料で、マッチした場合に給与×時間の3割程度を成果報酬として企業側からもらうケースが多いみたいです。
また、求人の方としては飲食店やコンビニ、宅配、オフィスワークなどが中心に大手のチェーン店とも契約しながら広げている印象でした。
(mercari halloの詳細は以下です。)
mercari halloのユーザー特徴としては幅広い層のユーザーが利用していることと3割は社会人副業として利用している部分が公開されていました。
また、スポットワークサービスを利用するユーザーの満たしたいジョブを検討した上で価値の競合となるサービスを検討してみます。
まず、個人的なブレストで考えられたユーザーのジョブは以下でした。
・空いている時間を有効に使いたい
・同じ働き先で人間関係やシフトに振り回されたくない
・短期でお金が必要であるor追加の収入源が欲しい
柔軟でありたいや隙間時間の有効活用をしたい、お金の必要性を持っているといった志向性が見えつつ、これらを満たすサービスを考えみたところ以下の価値競合を考えました。
Uder Eatsなどのギグワークやビザスクなどのスポットコンサルも然り、
空いた時間を有効に活用してお金を稼ぐのであれば知り合いのお手伝いやハンドメイドの物販、あとメルカリでの販売というmercari自身の別サービスも代替品にはなりうると考えます(だからこそmercariユーザーをターゲットに含んでいるんだろうなと感じています)。
交渉力
売り手(法人顧客)、買い手(個人顧客)として双方との交渉力を検討してみます。
個人的な見解として、法人企業側は労働力が余っているケースは少なく、かつ掲載が無料であれば求人は集まってくるのではないかと推測します(もちろん営業の方の努力の賜物です)
競合サービスも同じマネタイズモデルなことからも1つの企業が複数のスポットワークサービスに求人を掲載している可能性がありえます。
一方、個人に関しては登録のハードルがどのサービスも低く、かつ求人を見比べても大きく違いはないので、スイッチングコストは低いことが考えられます。使い慣れたサービスを使う傾向はありつつも、いかにスイッチングコストを上げられるかがポイントになるのかもしれません。
現在の状況を考えると、以下の4象限の右上に当たる気がするため、
個人顧客側への差別化をどう効かせにいくかがポイントにはなりそうです。
ターゲティング
スポットワークを利用する個人顧客のターゲットを検討してみます。
先ほど挙げたようにmercari halloのユーザーは幅広い年齢層に渡っていますが、その中でもジョブとして挙げたかの3つを持っていそうなユーザーの代表的な特徴を考えました(本来はインタビューなどをした方がいいです)。
・空いている時間を有効に使いたい
・同じ働き先で人間関係やシフトに振り回されたくない
・短期でお金が必要であるor追加の収入源が欲しい
スポットワークの最大の特徴は半日くらいの時間で仕事を柔軟に見つけられる部分です。逆に言えば短時間の隙間時間が生まれる生活スタイルを持っているユーザーがイメージできます。
かつ、隙間時間なので隙間以外には予定が色々と埋まっており、スケジュールをテトリスのように埋めて効率的にお金を稼げると嬉しいユーザーの印象があります。
その条件で思いつくのは以下の2つでした。
・学生(授業やサークルなどの合間)
・ある程度大きいお子さんがいる主婦(子供が学校から帰ってくる合間)
また、仕事終わりや休日であれば
・追加収入が欲しい社会人(仕事終わり、休日)
も考えられます(あくまでも個人的なイメージなので偏見はあります)。
ポジショニング
続いてポジショニングです。
いろんな軸は検討できましたが、これまでのアルバイト紹介サービスでは拾いきれなかったユーザーニーズを取りに行っていること、また求人の種類で他サービスとの違いは作れると考えています。
そのため以下の軸でポジショニングを整理しました。
・働く期間が継続的か否か(スポットワーク特化-長く同じ場所で働く)
・求人の種類(各サービスに多い求人内容)
そうするとこれまでのアルバイト紹介サービスとはスポットワークに特化しているかで差別化を図り、スポットコンサル系のサービスとは求人内容の系統で差異を形成しているイラストのオレンジ色の部分に該当します。
4P分析(リボン型ビジネスモデル)
4Pでmercari halloのサービスをまとめています。
特徴はやはり途中で挙げたリボン型のビジネスモデルをとっているところで、個人顧客だけでなく、法人顧客側の整理も必要になってきます。
ProductやPlaceの部分はあまり変えようがないのかなと思い、
また、Priceも成功報酬の3割が各社同じなのでここもあまり変化させづらい部分な気はします。
そうするとPromotionの部分が変えやすい変数になり、またリボンモデル状求職者と求人双方の量と質が重要になってくるためここにより力を入れていく必要性がありそうです。
自分がもしCMOだとすると何をするか?
さて、マーケットトレースの一番面白い部分です。
集めた情報をもとに自身がCMO(あるいはサービスのマーケッタ)だとしたらどんなことに取り組むのかを考えます。
個人的に今回のmercari halloが他サービスと差別化していくにあたっての
ポイントは以下の2点が大きいと考えます。
・mercariが築いてきたリソースとの連携を選択肢に入れられること
・リボン型のビジネスモデルをとっていること
この中で1つ目のmercariのこれまでのリソースとの連携、つまりmercariやmerpayなどのサービスとの連携はmercari hallo内部でも検討されてそうですし、他の方も想像しやすい部分かなと思うので今回はあえて省きます。
(mercariアプリで広告を打つ、merpayを活用するとポイントが貯まるなどはこれから実施されると思うので)
そして、2つ目のリボン型のビジネスモデルを念頭に上記の
"グロースさせるために何をするかのアイデア"にまとめました。
リボンモデルのポイントは既に挙げた通り、求人と求職者の量と質を広げることがポイントになります。
(実際マッチングのAIモデルを導入してもデータ量が必要になるのでこちらを優先します。)
今回まとめた中でいくと、ターゲットとしてイメージした学生や主婦のユーザーにいかに価値を届けられるか、あるいは登録してもらえるかと考えました。
まず認知や登録の面では、学生や主婦の方との接点ポイントを考えます。
ターゲットがよく目にする媒体を考えるとどちらのターゲットもYouTubeでのCM広告、SNSであればTiktokやInstagramあたりは接点は作れそうです(調べてみるとmercari halloのSNSはこれからの準備段階な気配を感じたので伸び代はありそうでした)
また、主婦だと子供の塾や保育園、ないし節約・家事などをブログやYouTubeをみて調べているケースもあるためそのジャンルのブロガーさんやインフルエンサーとタッグを組んでみるのもいいかもしれません。
(あるいは料理レシピサイトに広告あげるとか)
次に求人への応募です。現時点だと各社で求人内容に大きい際は感じれなかったので、ここで差別化を図っていってみるのも考えてみます。
例えば、ターゲットの生活圏に近く、社会的信用もある大学などの公共施設からの求人を集めてみたり、あるいは、普段体験できない働き方で”こんな求人出してみました!キャンペーン”で地元での面白い求人を集めてみたりしてみても良いかもしれません(mercariの広告でも似た打ち出し方をしていた記憶があります)。
mercari halloだとこんな求人もあるんだというイメージを持ってもらえるとそれが魅力に変わる上に、もしかすると求人を出す側のハードルも下がるかもしれません。
(学生時代、理系の主婦の方が経験を活かして実験のパートタイムをされていてこんな求人もあるのかと感じたのを思い出しました。)
最後の案はUberに倣ったものですね。
Uberだとドライバーの評価をもとに依頼ができるのですが、それを真似してみるのも1つの手段としてはアリかなと考えました。
スポットワークで雇用する側も応募者が信頼できるかは最近だとより気になる部分だとは感じています。
そのため、他のスポットワークでの評価が見れるとサービスに対しての信頼性(ないし、安心感)は上がるかもしれませんね。
いづれも、ROIなどは全く深く検討していないためアイデアベースにはなりますが、使ってもらうためにいろんなことができそうな可能性を持ったサービスだなと感じました。
まとめ
今回はマーケティングトレースの練習がてら気になっていたmercari halloについてまとめてみました。
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