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入院患者さんが望むこと

あまりの余裕の無さに秋冬野菜は全く育てられなかったので「春からは本腰入れるぞー!」ということで種まき計画を立案中。
あれもこれもと妄想ばかり膨らみます(^_^;)


さて、急性期病院でOTとして働いてもうすぐ14年が経ちます。
始めはガムシャラでただひたすら目の前の患者さんに何ができるかを考えていました。
常に手探りだったように思います。
5年ほど経ってようやく自分のスタンスができ始め、10年で軸が出来てきたように思います。
私はそんなに飲み込みが早い方ではないので時間がかかりましたが、早ければいいというわけでも無いように思います。
深いものほど時間をかけた方が肚に落ちるのかもしれません。

作業療法を急性期病院で提供する上で今、改めて自分の軸を言語化すると「患者さんの望むことをできる限り叶えること」と言えます。
作業療法での「作業」とはその人にとって大事な活動です。
(こちらに少し詳しく書いています
作業療法(OT)とは|自律整体めぐりや 
いかにOTがおもしろいか|自律整体めぐりや )


急性期の患者さんにとっての作業は何か。
もちろん千差万別なのですが、こと脳外科の患者さんに限って言えばほとんどの方は「食事」「排泄」「睡眠」「整容」「入浴」への欲求充足が切実な願いとなります。
飲み込みがうまくできなくて食事ができない(管で栄養を入れることになる)。
立つこともできなくなりトイレに行けない(オムツ排泄となる)。
痛みなどで寝られない(昼夜逆転)。
歯磨きしたくてもできない(スタッフが忙しすぎて毎食後できない)。
しばらく風呂に入れていない(体拭きのみ)。
…といった状況の方がとても多くいるわけです。
いわゆる生理的欲求レベルで満たされていない状況に追い込まれている、という状況です。
もちろん軽い症状の方はそうならないですが、多くの方が辛い状況下に置かれています。


先日、後輩が担当するとある患者さんのリハビリをした時のことがとても印象的でした。(Aさんとしておきます)
Aさんは脳卒中で入院し、身体の麻痺は軽度でしたがいわゆる「高次脳機能障害」がある方でした。
高次脳機能とは感覚からの情報を統合して物事を認識したり判断したりする機能のことで、それらが障害されることを言います。
注意がとても散漫になったり、視覚情報をうまく受け取れなくなったり、物事を順序立てて取り組めなくなったり…。
Aさんは様々な症状が同時に出ていて混乱されている様子でした。
後輩からも「怒りっぽくてどうリハビリを進めていいのか分からない…」と相談を受けていました。


お部屋に伺うとやはり機嫌が悪そうです…。
「いつまで経っても風呂に入れないし床屋に行かなきゃならないしどうすりゃいいんだよ!」とリハビリどころではなさそうです。
一瞬「どうしたもんかなぁ」と思ったのですが、すぐヒラメキました。
看護師さんに確認したところ入浴の制限は無いようです。
「それなら今からお風呂入りましょう😊」
Aさんはハトが豆鉄砲を食ったような顔(久々にこの言い回し使いました😅)になった後「今から入れるの!?」と、とたんに満面の笑みとなりました。

お湯を溜めつつ脱衣所で服を脱ぎ、身体を洗ってもらってから湯船に浸かるとゴキゲンそのものです。
「で、リハビリはどうするの?」
「いやー、これがリハビリなんですよー」
「こんなリハビリなら毎日でもやりたいなー」
と終始笑顔でその日のリハビリを終えました。
その後も意欲的にリハビリに取り組まれているようです。

もちろんただ単に入浴介助をしたわけではありません。
ズボンの着脱や浴槽またぎでのバランスはどうか、服を着る手順は理解できるか、シャンプーボトルを使えるか、身体を洗うことはできるか…などなど様々な状態を把握しつつ、できないところのみサポートしてできることを最大限発揮してもらう。
そして今後のアプローチ戦略を立てる。
それがOTです。

OTのこういったアプローチを違和感なくできるところがサイコーに好きですね。
PT(理学療法士)が入浴をサポートしてもいいんですが身体や動作改善の専門家としてちょっとしっくりこない。
ST(言語聴覚士)での入浴となるとなおさら違和感があります。


こうしてしっかり生理的欲求を満たして初めてリハビリへの意欲が湧くというものです。
もちろん看護サイドでバッチリケアできていれば問題ないのでしょうが、マンパワーの問題でそこまで手が回りきらないのが現状。
どの病院でも多かれ少なかれ同じような悩みを抱えているのではないかと思います。

そして、そういったベースとなる欲求に対してしっかり応えていくと、当然ながら信頼関係がてきてくるんですよね。
「この人はちゃんと話を聴いてくれる」という認識になるわけです。
そうすればリハの成果も上がりやすくなるに決まっていますよね。


自分の職種によってできること、できないこと、はありますし全部自分で対処する必要は全く無いと思います。自分ができないことはチームで対処していけばいいわけです。
まだまだ道半ばですが、そんなチームワークが可能な病棟にしていきたいと思います。


そして患者としてそんな辛い思いをしなくて済むよう、自身の心身ケアをぜひしっかりしていきましょう!
この世を旅立つ直前までやりたいことをやりきるために。
とはいえどうしたらいいのか全く分からない方はぜひご相談ください😊
やりたいこと、やりきりましょう!

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