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18歳の禁酒、禁煙は正しいのか。

禁酒法による信教の自由の侵害

まず、前提として自由主義は本来、個人の自由を政府が法律によって制限することに極めて慎重な立場を取る。したがって、年齢を問わず、すべての人間に平等に飲酒したり、喫煙したりする自由がある。これを制限するからには、相当の理由が必要である。飲酒および喫煙の理由は、あるいは宗教的なものであるかもしれないし、例えば16歳になったら大人として認められるための飲酒を伴う宗教儀礼がある場合には、20歳未満の禁酒法は信教の自由を侵害していることになるのである。

一方で、禁酒法の背景にあるのは、道徳観である。また、基本的に様々な宗教による禁酒による堕落を是としない教えによって禁酒法案は政治的に支持されてきた歴史もある。いずれにしても、飲酒という行為やそれを禁ずる法規制には宗教の存在が不可欠であり、健康上の影響というよりも、そのような宗教的・政治的な影響を受けやすい。

イギリス・フランスは16歳以上であればお酒が飲める

健康上の影響をある程度認めるとしても、私たちはなぜ禁酒されている年齢が国によって異なっているのか真剣に考える必要がある。それは、必ずしも20歳未満が禁酒、禁煙をしなければならないというわけではないことを示している。日本では確かに20歳を超えなければ飲酒はできないことになっているが、だからと言って本当に20歳という年齢が正当だとは限らない。当然ながら、法律が決めることは常に正しいということは決してない。日本における未成年者(現在は20歳未満)に対する禁酒法は、1922年に成立した比較的新しいものである。それ以前は法的に禁止されていることもなければ、成立時も実態としてはかなり子どもの飲酒に対して寛容であったとされる。

海外渡航した場合の学生の飲酒と校則

ある旅行会社が17~18歳の学生をイギリスに修学旅行へ案内した際、現地で飲酒した学生が問題になったという事例を聞いた。このケースをどう考えるべきだろうか。この学生の言い分は、イギリスにおいて16歳以上が飲酒可能である以上、正当化されるというものである。私はこの学生の主張は正しいと思う。というよりも、彼が国内法により罰せられたり、日本国内の所属学校の校則によって罰せられるようなことがあれば、それは治外法権を彼に適用することになってしまうのだから、教員側が明らかに間違っている。

禁酒法と差別

日本では、2022年より18歳以上を成人とすることとなった。ではなぜ、飲酒喫煙をいまだに18歳に対して禁止しているのか。大人として認める以上、他の人間に認めることを特定の人々に対して禁止することは差別である。これは、特定の人種のみに飲酒を禁じたり、特定の性別に喫煙を禁じたりすることと全く同じことをしている。

個人的な意見を述べれば、そもそも"子ども"という概念それ自体が近代以上に登場したものであることや禁酒が1900年代に入ってから主流になった新しいカルチャーであることを踏まえれば、私たちにとっての「当たり前」は時代に左右されてしまう脆いものであり、年齢を問わず、本来は飲酒喫煙の自由を奪うことは自然権の侵害であると考える。こうした立場は、健康上の影響や見地云々の話ではなく、まずもっと自由の侵害を倫理的に認めないという哲学的な考え方である。したがって、仮に健康科学的な説明として18歳、19歳による飲酒喫煙が体に甚大な悪影響を及ぼすとしても、それよりもこの若者たちの自由を奪い、人権(飲酒喫煙する権利)を侵害することの方がよっぽど深刻な問題である。

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