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なぜ「デザイン」はこんなにも偉い人の意見に振り回せるのか

次のような状況を思い浮かべてほしい。

営業の人が、営業を経験したことのない人から「営業について」こうした方がいい!この営業スタイルはダメだ!といったことを言われる。

エンジニアが「設計したもの」や「コーディングしたもの」に対して、非エンジニアの人々から、ここはこの言語でやって!ここはもっとこういうふうにして!など言われる。

さてどうだろう。明確にイメージできただろうか?「あ〜!あったね!」と共感できただろうか?例えあったとしても限りなく少ないだろう。

しかし、デザインについてはどうだろうか。デザインを学んだデザイナーが作ったものに対して、全くデザインを学んでいない人々が、「ここはもっとこの色を使ってほしい」「ここをもっと大きくしてほしい」などとデザインに関して指摘している状況は?

もしくは自分が何かデザイナーが作ったものに対して意見を言っている状況は?容易に想像つくのではないだろうか。

私はこの状況に疑問を抱いている。なぜ、「デザイン」に関してはこうも意見を言いやすいのか。デザインのプロが作ったものに対して、学んだことのない人々の意見が強く反映されてしまうのか。

「デザイン」というものの価値がそもそも低いからだろうか?誰でもできるものと思われているからだろうか?デザインはセンスで行うもので学ぶことは無意味だと思われているからだろうか?

この状況が不思議で仕方ない。さまざまな理由が思い浮かぶがどれも直接的な理由でない気がする。今回はこのような状況が何故起こっているのか考察してみたい。


原因⒈「デザイナーはアーティストではない」

この言葉はデザインを学んでいる人であれば誰もが知っている言葉だろう。無論、私もこの言葉を念頭に置き日々仕事をしている。この言葉の意味をざっくり説明すると「デザイナーは相手が作りたいものを作るのだ。自分が作りたいものを好き勝手作るのではない。」と言うことだろう。

確かにその通りで、クライアントの思いを汲み取り、その意図や目的に最適なものを選択しデザインすることがデザイナーの仕事だ。

だがこの言葉が、デザイナーを縛る、立場を弱くする呪いにもなっているのではないだろうかと私は思う。

これはデザイナーが仕事をする上でのマインドであり、クライアントの意見に従順に従え!と言うことではない。と私は考えている。

クライアントが「赤」と言えば赤にする、ここを「大きくしろ」と言えば大きくする。といったような仕事をしろというわけではないのだ。

原因⒉デザインは誰でもできると言う誤解

デザインは誰でもできる。未経験でも簡単にデザイナーになれる。副業のデザインで稼ごう!!みたいなデザイナーは簡単になれるみたいな印象を与えるワードが世の中に蔓延している。これも原因の一つだと考える。

はっきり言おう。デザインは誰でもできるものではない。ある程度はセンスでできるかもしれないが、そのセンスも生まれた時から身についたものではない。その人が人生の中で触れてきたものであったり、学んできてものだったりと、時間をかけて育まれてきたものなのだ。

「意識して学んだのか」「意識せず学んだのか」の違いにすぎない。どちらも学んでいることに変わりない。デザインは他の職種と同じで、専門的な知識を学び訓練しなければ上達しない。

デザインの法則や、表現手法、デザインツールの使い方や、配色方法など学ぶべき範囲は多岐にわたる。このような学びをデザイナーたちは日々勉強し、最新のトレンドを取り入れながらデザインを作成しているのだ。

原因⒊お客様は神様だ思考

お客様は神様だ。この言葉は日本で昔から伝わる言葉だ。この言葉は悪質クレーマーに悪用されるイメージがあるが、この言葉がデザイナーの仕事にも影響しているのではないだろうか。

デザインを依頼してくれているのだから、クライアントが言うことは絶対だというデザイナー側の誤解。クライアントは自分達が依頼してあげているのだからこちらの要望は絶対だと言う高慢。

このような関係式ではいいデザインは生まれない。もっともそれを受け取るユーザーの気持ちはどこに言ってしまったのだろうか。

このような考えが表には出てこないが、深層心理で影響しているのではないだろうか。

さまざまなことが絡み合ってデザインが軽視されている

上記三つのようなことや、他のさまざまな要因が絡み合ってこのような状況になってしまっているのではないだろうか。

街に出てみてデザインを観察すると、「見た目の綺麗さ<機能」「ユーザーの気持ち<クライアントの想い」で作られたデザインが多いと感じる。

日本の文化や歴史的な背景も大きく影響しているのだろう。デザインを取り巻く現状は複雑で難解であり、デザインの価値向上の道のりは遠い。

完全についでではあるが、なぜ日本の街はこんなにもごちゃごちゃしているのだろうか。ビル単体、家単体などでは綺麗なのに街としては全く調和していない。この問題も将来的には解決できると良いのだが。

デザイナーの仕事やスキルへの理解度を上げお互いに尊重する世界を

お互いがユーザーを第一に捉え、デザインについて正しく理解し、お互いをプロとして尊重できる世界になれたいいと日々思っている。

クライアントだからとか、仕事をもらっているからだとか、そう言うものは関係なくお互いが対等な関係で建設的にクリエティブについて取り組むことができたら最高の世界だろう。

こうなるにはお互いが歩み寄り、デザインのもたらす価値を伝え、実感してもらい、相互理解を深めることが重要だと思う。

社会では短期的な利益を求める傾向が強く。デザインは長期的な利益につながるものだ。したがって、実感してもらったり理解してもらうには時間を要するだろう。

しかし、根気強くデザイナー側から情報を発信し、歩み寄り、根気強くこの問題に取り組めばいつか状況を変えられるのではないだろうか。


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