図1

「水メジャー、日本上陸」から

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三点に注目したい 
 1.水ビジネス
 2.官民・三セクは注意
 3.総合サービス

関連代表記事 日本経済新聞 2018/11/10 朝刊
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO37579430Z01C18A1EA6000/
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A 水メジャーによる日本侵略のような印象を誇張したり、政府の短期的利益追求という指摘が非常に多く、「水ビジネスとしての日本のあり方」がかすんでしまっているように思う。確かに、民営化や、PPP(Public-Private Partnership)或いはコンセッションなどで官民連携を進めれば、コスト削減や充実したサービスというプラス面よりも、商売としての単価増であったり、隠れたるインフラ欠損への対応不備などが露出し、人々の生活にダイレクトに悪影響を及ぼす可能性はある。しかしそれは裏を返せば、莫大なる水ビジネスという機会が存在しているわけであるし、急激に量子的に変化したデジタル技術を前提にすれば、今まで解決不能な領域へも三方よしでビジネス展開可能になってくる。


B グローバルな水ビジネス市場は、2020年で約100兆円規模と試算されている。日本のシェアは2015年で0.4%程度*1。市場構成の約85%は上水道供給と下水処理。グローバルな巨大民間企業は水メジャーと呼ばれ、代表三社は、(仏)ヴェオリア・エンバイロメント、(仏)スエズ・エンバイロメント、(英)テムズ・ウォーター・ユーティリティーズである*2。世界の水道業民営化率を見ると、例えば、Western Europe 47%、South East Asia 20%、Oceania36%、Latin America 21%などであり、世界平均で14%である*2。なお、民営化には逆トレド(官に戻す)も存在していることには、注意が必要である。


A 水について改めて見つめなおすと、地球上の水の約97.5%が海水であり、簡単に利用できる水は約0.01%。全体の2.5%程度が淡水であるが、内80%は氷山、氷河、地下水として存在している。水は石油に代わる資源ともいわれ、次世代のビッグビジネス領域であるとともに、ここを「牛耳る」ことは国家戦略にも直結する要素である。例えば、水情報を収集可能なマイクロチップをトリリオンセンシング的に全世界に散布し、そこから吸いあがる情報を1企業が独占したら、何が起こるだろう。


B 欧米の水メジャーの特徴は、案件策定、EPC、維持管理まで包括的に手がけることを特徴としている。一方日本の水ビジネスに対する存在感は、現在のところ、Japanese QUALITYを主張する従来型の事業として主張されている。即ち、高い技術力を特徴に細切れにした市場に突き進んでいる。例えば、旭化成、荏原製作所、栗田工業、クボタ、クラレなどの水処理機器、或いは、メタウォーター、日立製作所、JFEエンジニアリングなどのエンジニアリングなどがある。


A 日本企業が俯瞰的総合的なサービス展開をしいないのは、日本の水道管理という歴史にも影響を受けている。即ち、水道法の存在である。これにより、水道業は地方自治体が運営することと定められた公営事業として位置付けられてきた。この公営サービスという位置づけが、日本の世界一安全で安定した水の供給、を実現したわけだが、一方で民間企業の参入余地に制限をかけることになった。


B 日本の水道について歴史を紐解いてみると、1957年に水道法が制定され、経済成長と合わさり、急速に水道が普及した。水道の普及率をみると、1970年には80%を超えており、2016年には97.9%を記録している*3。漏水率をみると、全国平均で約5%、福岡・名古屋・東京などは3%を切っている状況であり、ロンドンの25%程度といった値と比較すると、世界的にきわめて低い漏水率で制御できているといえる*4。別の視点で水道料金に目をやると、ガスや電気料金が市場環境に応じて大きく変動するのに対し、水道料金はほぼ一定で推移しているとわかる*5し、実感とも合うだろう。


A このような公共インフラという水事業を考えた時に、管理・保守・更新が必要なインフラを握っている状況というのは、水の利用料が減る未来に対して脆弱であるということができる。実際、水道料金徴収対象となった水量の平均(平均有収水量)は、1990年代後半より減少しつづけており、例えば2000年の340Lに対して現在は300L程度まで減少している*6。人口減少であったり環境意識の向上は、水の利用料を減らす。更に、インフラには「保守」や「更新」という出費(投資)が必須である。これらのことから、水事業の運営を考えると、事業構造そのものを転換する必要があることは目に見えている。


B 1999年にはPFI法が施行された。厚生労働省は2013年に新水道ビジョンを示したり、BOTやコンセッションでの民営化を進めたり、水道再編計画を打ち出したりとしている。


A 日本産業界の動向を平均的に総括すると、環境・エネルギー・ヘルスケア等の分野に対して、蓄積した技術力を、先進国/新興国というグローバルなスケールで解放する必要がある。その上で長期的なR&D投資を継続させる必要がある。技術・経験の優位性はいまだに顕在であり、これらを、世界のニーズにマッチングさせる必要がある。この際に、政府側の産業・政策改革も必須であり、日本が「群」として飛翔できる土壌整備が必要。このようなマクロトレンドを形成することで、長期的な人財育成・開発も叶ってくる。


B 水についていえば、日本の歴史背景からオペレーション部分を官が握っており、官がそのノウハウを有すという構造である。このノウハウを民に導入しながら世界に羽ばたくことで、大局的サービスを展開できる。気を付けるべき点は「技術押し」にならないこと。例えば、水質レベルは低くてもよいから、漏水・盗水対策をきっちりと、そして安価な水が欲しいという地域もある。その土地土地の状況で水供給・管理運用に対する要求事項が異なるのは当然であり、KBF(Key Buy Factor)をいかにくみ出しそれをいかに叶えるかが重要。その中で、日本のお家芸でもある海水淡水化、下水再生技術、或いは漏水防止管理などが活きてくると、非常に面白い。


A もう一点重要なことは、官民連合の扱いである。コンセッションでも三セクでも東京水道サービスのような企業との協働でも、官民が協働する場合、指揮命令系統や責任と権限の所在の明確化、時間スパンの共有化、今後の関わり方等、初めにしっかりとデザインしないといけない。主導権をとるのは民であるべき。また、オペレーション面で官のノウハウを使うことになるが、それの本質を見極め、ブラッシュアップさせること。例えば、東京都水道局傘下の東京水道サービス(TSS)が三菱商事の水ビジネス世界展開に加わっているが、TSSのやり方をほぼ丸々移植したり、助言をほぼそのまま適用してはならない。日本の水管理の何が低漏水率に効いているかをしっかりと見極め、テクノロジーで更に効率的にし、間接業務としての非効率性は徹底的に排除しにかかる必要がある。


B 三菱商事の(豪)水道事業会社UUA買収であったり、日本碍子+富士電機の水環境部門が合併したメタウォーター、或いは、荏原製作所・日揮・三菱商事が共同経営する水ingなどがでてきており、日本技術をいかしながらより総合的なサービス展開を狙えるようになってきている。まだまだ、駆け出しといってもいいだろう。


A 水ビジネスでの世界狙いを考えるのであれば、グローバル地図の上で思考を巡らし、バリューチェーン全体を操り最適化できるような経営手腕が必用になってくる。グローバル展開するにあたり、現地企業とのアライアンスや買収により、地の情報やネットワーク、或いは商習慣に対応する必要もでてくる。バリューチェーンを跨いだサービス展開に総指揮をとりつつ、現地権限移譲をするといった、マネジメントも必要。グローバル展開で成功している企業は、日本にもたくさんある。それら企業の「展開ノウハウ」をいただくという手もある


B 水ビジネス。視座を1段も2段も高く設定し、DreamTeamを構想してみるのも手だろう。DreamTeamなど考えるだけ無駄だという意見もあるが、それを実現させるために、頭と足を使うこともできる。或いは、DreamTeamを考察する中で、より明確にKFSが見えてきたリ、成長へのステップが明確になったりすることもある。


*1 METI 水ビジネスの今後の海外展開の方向性
http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170313001/20170313001.html

*2 JRI https://www.jbic.go.jp/wp-content/uploads/topics_ja/2014/04/20640/danno_20140317.pdf

*3 厚生労働省 水道の基本統計 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/database/kihon/index.html

*4 水道技術研究センター http://www.jwrc-net.or.jp/hotnews/pdf/HotNews543.pdf

*5 総務省 家計調査 https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html

*6 総務省 地方公営企業決算 http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/kouei_kessan.html

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盃を交し、対話しましょう。
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JK

ビジネスや経済などのニュースや日常の気づきを出発点に、「科学、心、モノ、デザイン」という4象限を操りながら、自由に発想していきます。発想や着眼の手助けや、思考の自由度拡大の糧になれば、何よりです。
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