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40 目的外使用(Use for other purposes)


はじめに

冒頭、先日、無念にも教育現場で引き起こされた不幸な事故により、18年という短い人生を終えることとなった男子生徒に心より哀悼の意を示すとともにご友人、ご家族の皆様、同様の理由でけがを負った方々にお見舞いとお悔やみを申し上げます。
今回のコラムでは、このような居た堪れない出来事の再発防止を願い、目的外使用の観点からこの事象の危険性を考え、さらに当然とるべきであった危機管理に関する対応についても述べていきたいと考えます。

目的外使用の観点から

福岡県にある美容専門学校において、バーベキュー中に発生したこの事故は、消毒用アルコールを用いて着火の加速または、火の勢いを増そうとした非常に危険な行為により発生しました。
学校の指示、教師自らの行動として根本的に間違っているのは、「目的外使用」に対してその危険性や違法性に全く意識が向いていないところにあります。
元来、教育現場はこうしたモラルの欠如した行動を正す、または、正しい社会性や法理解をその存在意義の一つとしています。一般的に流通している製品には、その使用目的があり強度や性質はその目的に準じて安全性が確認されているのです。
先日も、強アルカリ性の洗剤をアルミ缶に入れ駅構内に持ち込み爆発させたという事故が報じられましたが、これも、目的外使用に近いもので、その製品の適切な保存方法に関する注意喚起を無視した軽率な行動が引き起こしたものです。

薬は健康な体には毒である

目的外使用という点において現在問題になってるものの一つにダイエットへの糖尿病治療薬の使用があります。すでに薬害が出ている問題であり、日本医師会からも注意喚起が出ています。健康な人に対して、ダイエットという糖尿病治療とは別の目的で、必要ない薬を処方する、または服薬することは重大な健康問題を引き起こしかねないという内容です。
実際に、健康な人が糖尿病の治療薬を使用すると、正常な糖代謝に負荷がかかり、急性膵炎や腸閉塞や膵臓がんといった重大な病気へとつながる可能性があるとされています。

リスクマネージメント

生産者や開発者が意図しない使用方法や用途がいかに危険であるかということについて述べてきましたが、今回の取り返しのつかない事態は、リスクを予見するという行為に問題があることも十分に押さえておく必要があります。家族や友だちとバーベキューをすることと、教育現場でその活動の一環として行う上では、責任の所在が違うだけではなく万が一に備える心構えと具体的な行動が重要になります。
今回のことであれば、やけどや火災に備えて水や砂、消火用の備品を用意しておくことは言うまでもなく必要なわけです。特にやけどの危険性はバーベキューの性質上からも予見しなければならないリスクの一つです。教育現場だけではなく、介護の現場や医療の現場など人間の予期せぬ行動や集団での生活における危険の回避などについてはその業務の内容の根幹である生命と財産を守る重要な基本業務なのです。

教育現場として

これから夏本番となり、野外での活動が様々な教育現場で増えていきます。今、教育現場では人手不足という量的な問題だけではなく、人材不足という質的な問題が生じていることを、今回の事故は明らかにしているのではないでしょうか。
教育現場でバーベキューを行う行為は、教師と生徒の親睦といった互いの人間関係を形成する一つの手段ではありますが、同時に火を囲み楽しく食事をするためのマナーや留意する安全管理の視点を学ぶ機会でもあるわけです。後片付けや食事の場での立ち振る舞いなどほかにも学ぶことは多いでしょう。活動に目的意識をしっかりもつことが教育活動の意義となるのです。繰り返しになりますが、目的を達成するうえで常にリスクを想定し、取り組まなければ教育現場の責務は果たされないのです。
一人の生徒の命が、いかに重いかは、その死を受け止めてどう生かすかにかかっていると思います。

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