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中国の会社員について書こう

特定の国家や国民について意見を述べると大ケガをしかねない時代です。
たしかに、感情にまかせて偏った意見を表明するのは頭の悪い輩のすることだと思うし、言うまでもなくレイシズムなどは危険な思想でしょう。
しかし、本当に危険なのは、弾圧や報復を恐れるあまり、誰も何も言えなくなってしまうことだと思います。

中国について書かなければならない、と考えています。
といっても、メディアが大上段から書くような政治や経済には触れません。
そんなことは 1私人には知る由のないことですからね。
私は、自分の実体験を通して知ったことしか書きません。
だから、中国の会社員について書きます。
感情を排して、ニュートラルな立場で、見たこと知ったことをありのままに書こうと思います。

一般社員のビジネススキルはまだまだ低い

2019年にスイスから香港に転勤して以来、仕事上の取引相手としてたくさんの中国人と関わってきました。
深圳, 広州, 上海といった、シリコンバレー並の巨大産業クラスターで働く、最先端の中国人たちです。
シリコンバレーは言い過ぎでは?と思われるかもしれませんが、チャイナ・アズ・ナンバーワンと聞いても笑えない時代がすでにきています。

これらの経済特区には、アメリカンドリームならぬチャイニーズドリームを求めて、中国じゅうから優秀な人材が集まる、はずなのですが・・・
じつは、そうでもありません。

「世界じゅう」ではなく「中国じゅう」と書いたところがヒントです。
中国企業は、まだグローバライズしていません。
中国人の優秀層は、世界のレベルから見れば優秀でもなんでもないのです。
もうひとつのヒント。真に優秀な中国人はとっくに国を出て、アメリカやヨーロッパで活躍している、ということです。

つまり、中国国内のトップ企業で働く優秀層人材は世界の平均レベル以下、というのが私の現時点(2021年)での結論です。
彼らは標準中国語(マンダリン)を話しますし、英語をそこそこ話せる人も(少数ながら)います。
しかし、ビジネスパーソンとしてはまだ「未開」と言っていいレベルです。

まず、ビジネスの基本動作ができていません
メールを受け取ったら返信する、ミーティングをしたらミニッツをつくる、計画・スケジュールを立てる、などの超基本的なことです。

次に、ロジカルコミュニケーション(聞く、話す、読む、書く)が弱い
ロジカルに考えることができないから、ロジカルに話すことも書くこともできないのは当然です。同様に、相手の話や書かれた文章をロジカルに理解することもできません。
そもそも「ロジック」という言葉を知りません。西洋の概念ですからね。

さらに、交渉の基本ルール・常識を知らない
すでに合意したことを簡単にひっくり返す。前言撤回など日常茶飯事です。
契約の内容は基本的に守られません。
そういう意味では、最初から契約しない、何も合意しない、交渉すらしない、というのが正しい付き合い方なのかもしれませんね。

また、英語での交渉中に、交渉相手になんの断りもなく、中国人同士が中国語で話すという非常識極まりないことを平気でします。

英語力については、社員の 95%以上がまったくゼロの人たちで、5%未満の国際部門の人たちでも中級レベル(Intermediate)といったところです。
広大な中国は地方によって言語が異なるらしいので、それぞれの出身地の母語をもつ彼らにとっては、マンダリンが「国際語」なのかもしれません。

誤解のないように明言しておきます。
彼らは、決してアタマが悪いのではありません。単に、未開なのです。

ふた昔前の日本人との類似点と相違点

♪十年は~ひと昔~♪
と井上陽水も歌っているので、ふた昔前とは 20年前のことになりますね。

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という本が出版されたのは 1979年(40年以上前!)のことらしいですが、一般的な感覚としては「日本株式会社」が世界の頂点に立っていたのは 1990年代のことではないでしょうか。

つまり、現在の中国は、約 20年前の日本と状況が似ています。
実際、20年ほど前の日本の会社員と、現在の中国の会社員には多くの類似点が見られます。

第一に、働きすぎです。
ワークライフバランスが最悪。活動時間のほとんどを会社に捧げている。

また、「働きすぎ」とも関係しますが、上昇志向が強く、将来に対する希望をもっていること。一生懸命働いて、出世して、もっと豊かな暮らしがしたい、しかもそれが可能だと信じているのです。

そして、社員の間にアットホームな連帯感があります。
同じ社員寮に住んでいるケースが多いので、文字どおりアットホームなんですけどね。
地方から出てきて、深圳という中国のシリコンバレーで共に戦っている彼らは、戦友のような絆で結ばれていて、一体感と団結力があります。

将来に希望をもち、同志たちと時間も夢も共有しているから、寝食を忘れてガムシャラに働けるのでしょう。

一方、日本人と似て非なるところが、お金に対する姿勢だと感じます。
バブル期の日本人にも拝金主義的な傾向はあったと思いますが、中国人のそれは次元が違います。
中国人の成分は、頭のてっぺんから足のつま先まで拝金思想でできています。
お金のほかに信じられるものがないからなのか、お金がなかった時代からの反動なのか、ちょっと私にはわかりません。

もうひとつ、イマドキの中国人の特徴として顕著なのは、テック信仰です。
キャッシュレスに象徴されるように、中国社会のデジタル化は日本などよりはるかに先を行っているわけですが、それは中国人がハイテク好きだからです。

新しいテクノロジーにすぐ飛びつく習性は、国民の後進性を現している、と私は考えています。
それは、技術の発展段階をきちんと踏んでいないからです。

例えば日本では、もともと電報があって、交換手につなぐ電話ができて、市外通話や国際電話がバカ高い時代があって、コードレス電話(親機・子機)になって、移動電話(バカでかいやつ)になって、ポケベルが出てきて、PDAも出てきて、ついに携帯電話になったらPHSも出てきて、iモードがついて、写メがついて、さらにスカイプが出てきて・・・キリがないのでもうやめますが。
日本人は、スマートフォンが登場するまでにこれだけの段階を踏んでいる。だから、ハイテクなサービスに安易に飛びついたりしないのです。

こういう段階を踏んでいない国の人々が、いきなりスマートフォンを手にすると、テックの虜になります。
電気もガスも水道もないアフリカの子供たちが、スマートフォンにハマってしまうように。
資本主義を経験していない国の労働者たちが、いきなり共産主義革命を起こすように。

私はどうしても、「キチ〇イに刃物」という言葉が浮かんでしまいます。

女性の活用度は、すでに日本を抜いている

というわけで、テックの先進国というのは、往々にして、人間の後進国だったりするのですが、中国が人材に関して先進的だと感じる部分もあります。
それは、一般企業で働く女性社員の比率が高いことです。
もちろんヨーロッパに比べればまだまだ低いですが、日本よりは高いです。

私はここに、日本という国の最大の弱点がある気がしています。
大事なことなので、もう一度言います。
日本の女性人材の活用度は、中国よりも遅れているのです。

中国でも、政治の世界や国有企業の幹部クラスなどは男性で占められているのかもしれませんが、私はよく知りません。
私が直接関わる中国人は、中堅から大手の上場企業のミドルマネジメントとその上下です。その半分近くが女性です。

私の関わる相手がその会社の海外事業部門の社員だから、というバイアスがかかっている可能性はあります。
語学力を含むコミュニケーション能力全般において、女性が男性よりも優位であるという法則は、中国でも当てはまるようなので。

R&D やエンジニアリング部門を覗いたら、男性社員が多いのかもしれません。
でも、海外営業、経理・財務、人事、渉外、広報といった対人折衝の多い部門では、明らかに女性社員のプレゼンスが優っています。

チャイナリスクに目を瞑る企業たち

「経済には触れない」と言いましたが、現職を通じて痛感したことなので、ひとつだけ触れさせてください。

中国の協力会社なしにはモノがつくれない、という現実です。

「世界の工場」と呼ばれて久しい中国が、様々なリスク(リーガル、政治、コンプライアンス)を抱えていて、各メーカーなどが脱中国化を重要課題に掲げつつも、実際にはほとんど進んでいないということ。

以前はヒトゴトだと思っていましたが、自分が実際に中国でのモノづくりに携わってみて、現地の工場やサプライヤーに何度も足を運んでいるうちに、現実の恐ろしさがよーくわかりました。

とくに電子機器などのメーカーが、中国の工場に頼らざるを得ない理由は、労務費等の製造コストが低いから(だけ)ではありません。

ワーカーの質と量が圧倒的だからです。
細かい部品の組み立てのような手作業をやらせたらダントツで世界一なのです。
手先が器用なだけではなく、1日 12時間の反復作業にも耐え、休日なしで働く(👈言ってはマズいことですが)勤勉さと忍耐強さ。
量については、何百人単位ものワーカーを数週間で調達して、訓練も施して即実戦配備できる動員力とスピード感。

もうこれだけで、品質、納期、コストのすべてにおいて他国とはケタ違いな中国の一択ですよ。二択すらない。

そのうえさらに、やっぱり圧倒的なサプライチェーンのネットワーク
部材のサプライヤー、その部材の材料のサプライヤー、そのまた原料の・・・という具合に、川上までのチェーンをすべて押さえているのです。
それと同等のサプライチェーンをベトナムやインドネシアで構築しようとしたら何年かかるか。たとえ構築できたとしても、必ず中国のサプライヤーが何社か入ってきます。じゃあ最初から中国で全部やればいいじゃん。

ダメだこりゃ。(👈いかりや長介ふう)
もうお手上げですわ。

いや、それでも万が一のことを考えて事業継続計画(BCP)を用意しておくのが企業努力ってもんだろ、と言われるかもしれない。
おっしゃるとおりです。
でもね、BCPなんてのは絵に描いた餅で、何の役にも立たないのが現実なんですよ。ワーストシナリオなんて、誰も本気で考えたくないから。例えば、東京を直下型の大地震が襲うシナリオなんて、誰も想定したくないでしょ?

かくして、中国とは離れたくても離れられない、ヤク中と売人のような関係が出来上がっているのです。

ほとんどの企業は、この背筋が凍る現実を直視することをやめてしまった。
その中にいると、だんだん神経がマヒしていき、何も考えなくなります。

あなたが活躍できる場所かもしれない

敢えてこんなイヤな話をしたのは、政府も企業も信用してはいけない、と言いたかったからです。
え? わかってるよって? ですよね。

でも、暗い気持ちにさせたいわけではないんですよ。
むしろ逆です。
国の政策はアテにできない。大企業も頼り甲斐がない。そうとわかれば、自分一人の問題だということに気づきます。
あなたは、日本という国を背負う必要はないし、会社という組織と心中する必要もない。かえって自由になった気がしませんか?
あなた一人がどうサバイブしていくかって話ですよ。あなた一人だけのことなら、なんとでもなりそうでしょ?

そこで、中国にチャンスがあるかもね、と思ったわけです。(ゑ?)

中国語が全くダメでも、日本語ネイティブで、英語がそこそこ話せて、日本の会社で培った基本スキルと経験があれば、かなり優遇してくれる中国企業があるはず。だってそんな人材いないんだから、中国には。
これこそ、チャイニーズドリームです。

心理的なハードルがあるかもしれませんね。
人権がないとか、監視されてるとか、民主的でないとか。
でもそういうのって、イデオロギッシュな人でないかぎり、じつは全然気になりません。普通の生活には支障がないことですから。

リスクとしては・・・
共産党政権が崩壊するリスク、戦争になるリスク、まあ、考えてもしょーがない。それこそ東京で大地震が起こるリスクと変わりませんね。

現実的な話をすれば、今はコロナで移民当局も慎重になっているので、ビザやワークパミットが下りにくいという面はあります。
もう少し時間がたてば、例えばあと 1年待てば正常化するんじゃないかな。
その時間を使って、一人中国参入計画をゆっくり練ることもできますね。

日本は、沈みかけた船かもしれません。(沈んでほしくないけど)
ジャパン・アズ・ナンバーワンは遠い過去。
パクス・アメリカーナも終わり、グローバリズムの時代さえも終わりそう。
そんな 2020年代・・・
新たなパクス・シニカ(中国による平和)の可能性にチップを張ってみるのも面白そうだと思いませんか?(私は張らないけど)