顧客と戦う(その2)
こんばんは! dnkspitz(ダンスクスピッツ)です。
以前、「顧客と戦う」という記事を書きました。私が顧客と戦った経験が、どこまで読んでくださる皆さんの参考になるかは判らないのですが、今日も顧客と戦った経験について書きます。
私は、外資系コンピュータメーカーに勤務していた時に、あるパッケージ製品の導入・運用責任者を前任者から引き継ぐことになりました。
そのパッケージ製品は、大手企業様に使われている製品です。私は、前任者から引き継いだ後、個々のお客様との取引・運用状況を丁寧に調べました。
すると、いずれのお客様も、様々な不満を持っておられることに気づきました。そして、早急に信頼回復させるための手を打たないと大変な状況になると考えました。
不満の原因は、我々の開発・運用サポート対応状況にありましたので、各お客様を担当している部下の話を聞きながら、1社ずつ、対策を考え、できるところから、対応していきました。
しかし、その対応がお客様の期待値を超えることができない日々が続いていました。精一杯努力しているのですが、お客様の不満が消えないのです。
そんな中、ある日、パッケージ製品を利用されているある会社の部長さんから連絡が入りました。
「今度、不満を持っている他の会社の部長と共に、貴社責任者と話し合いの場を持ちたい。ついては、◯月◯日に、◯◯社に来ていただきたい」
これは、まずいな。と思いましたが、仕方ありません。私は、当時、部長でしたが、上司に相談したところ、これまでの経緯もあるので、上司と共に出向き、上司が対応することになりました。
さて、当日です。
会議室に入ると、驚きました。大手3社のユーザ部門の部長さんとIT部門の部長さんが1名ずつ、計6名が集まっておられました。
あぁ、これは、針のむしろだな……
会議が始まりました。
A社、B社、C社の各部長さんが、これまでの不満を、思いっきり話されました。
私は、黙って聞いていました。お客様は、私が新任の責任者であることは判っておられるので、私の上司に対して、何らかの回答を求めているのは明らかだったからです。
ところが、上司は、何も話をしません。そりゃそうでしょう。
「今回の件は、貴社に100%の責任がある。法的手段も検討している」とはっきりと言われたのですから。
沈黙が続きます……
私は、上司の顔を見ました。下を向いたままです。
まぁ、ある程度は予想していました。腹をくくるしかないな。と思い、
「ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません。私は、前任者から引き継ぎ、今、最大限の努力を社員と共に進めています。皆さまがおっしゃるとおり、期待値に応えられていないのは事実です。」
「今回のお客様のお話の内容ですが、弊社がお客様と契約上約束していることと、約束していないこと。この両方について話されました」
「具体的には、約束させていただいいるにもかかわらず守れていないことは◯◯です。しかし、約束していない点については◯◯です。」
「約束していることについては、皆さまの期待値に応えられるよう、精一杯努力をさせていただきます。」
「お言葉ですが、私が契約上、約束していないと考える点について、お客様と相違点があると、問題です。その点については、後日、丁寧に確認させていただきたく存じます。」
そうすると、ある部長さんから、
「あなたは、責任者ではあるが、過去の経緯を知らない。そんなことが判るのか」
と言われました。
私は「確かに、理解できていない部分もあると思います。しかし、責任者になった以上、理解するのが私の責務であり、それが弊社の方針です。私が責任を以て、問題点を1件ずつ、把握し、お客様を担当している社員を指導しながら対応させていただきます。」
すると、他の部長さんから、
「まぁ、製品導入・運用の責任者が話されているのだから、一旦、今日の会議は終わりませんか?」
と助け舟を出してくれました。
長い会議でした。
私は、極力、冷静に対応しようと決めていました。
最初にお客様の言い分をお聞きしてから謝る。但し、全てを対応するとは言わない。と決めていました。
責任範囲はきちっと対応すべきだが、責任範囲外までやってはならないからです。
今回の不満の背景には「契約書に記載されていないことまで、現場の社員が何時何時までにやります。と話してしまっており、それがお客様の期待値を膨らませてきた」ということを部下の社員から聞いていたからです。
感情的になってしまうと、解決できません。ベースは契約書です。その中で、何が守られていないのか?が基本です。
ただ単に謝れば、お客様の不満も我々の問題点も解決するものではないと考えていました。
ビジネスなので、あくまで契約に基づいて、良い関係を結べるように努力する。契約内容がまずければ、見直す。
その後、粛々と進めました。
そして、勤めていた外資系コンピュータメーカーを退職しましたが、その後も、ありがたいことに、その3社のお客様とは、お付き合いは続きました。
ま・と・め
・トラブル発生時は、あくまで冷静に
・謝るべきことは謝る。謝る必要のないことは謝らない。
・両者が良い関係を築けるように考える。
では、また。
dnkspitz
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