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36days of type 10

今年に制作した36days of type 10(自主制作)の話題を振って頂く機会が多いので、制作中に考えたことをまとめました。グラフィックデザインを生業にしていて、適材適所でCGを導入または検討している方。文字表現に興味がある方。ごりごりに絵作りをするのが好きなグラフィックデザイナーの方。デザイン初学者や学生さんへ向けた内容です。 構想自体は比較的シンプルですが、少しでも参考になると嬉しいです。



プロジェクト概要

36days of typeはスペインのグラフィックデザイナー、Nina Sans氏とRafa Goicoechea氏により、2014年から始動したプロジェクトです。タイポグラフィとレターフォームの無限のグラフィックの可能性を探求するべく、世界中のデザイナー、イラストレーター、ビジュアルアーティストに開かれたグローバルなプロジェクトです。(公式サイトより引用及び翻訳)
毎年、instagramをプラットフォームに行われる自主的な活動です。


制作環境

Tools

  • Adobe illustrater (テクスチャに使用するグラフィックの作成)

  • Adobe Photoshop (カラーグレーディングに使用)

  • Adobe AfterEffects (映像の編集に使用)

  • blender (CG制作に使用、今回のメインツール)

Machine Spec

レンダリングに4時間超かかったので、ちょっと物足りないかも。 ただ、実際の作業自体はサクサク進行したので参考程度に。

  • iMac Retina 5K, 27-inch, 2019

  • プロセッサ:3.1 GHz 6コアIntel Core i5

  • グラフィックス:Radeon Pro 575X 4 GB

  • メモリ:64GB 2667 MHz DDR4


昨年の反省

昨年の36days of type 09を振り返り、トンマナの統一や”文字らしさ”を意識し過ぎて、全体的に簡素にまとまってしまった。というのが反省点です。 連日同じテーマを投稿し続けるわけですから、 個々の視覚的な豊かさや強度はもちろんのこと、主体性のある絵作りは重要な課題でした。

“文字を文字らしく作る”というよりは、可読性はとりあえず度外視して、瞬間的に楽しさや豊かさが伝われば良い。というスタンスで今年は開き直っています。機能よりも情緒的な豊かさ優先(クライアントワークスでもないので尚更)
公式アカウントにレファレンスとしてピックアップされることを1つの目標として掲げていたわけですが、有難いことに”I”のTypefaceをピックアップして頂きました。


着想

制作にあたり、昨年の夏から習熟を始めたblenderをここぞとばかりに使いたいなぁと漠然と考えていましたが、いきなりCGから着想してゆくと全体のトンマナの制御が大変になりそうだったので、トーンの核となるグラフィックの制作から入りました。 最終的なアウトプットを意識しながらというよりは、ドローイング感覚で衝動的に制作したものです。

Adobe illustrator を用いて制作

レファレンス収集は殆ど行っていないので、上記のグラフィックとシナジーのある画面作りに徹し、今回は玩具を彷彿とさせるプレイフルなテイストをベースに進めることにしました。


CG制作

かなり大変なことをしているのでは。と質問を頂くことが多いですが、基本的にはW4×H5のブロックに収まるシステムで作っているので、文字あたり1〜2h程で進行していました。結果的にレンダリングの待ち時間の方が長かった印象です。
プロジェクト自体がマラソン気質のあるものなので、”単発の作業スピードを維持したまま、高カロリーな絵作りができるか”は課題でした。そこでグリッドを基盤にし、要素の入れ替えのみで連作が成立する構造にしています。

“I”のType 公式にレファレンスとしてピックアップしていただいた。
“K”のType

システムを構築した上でゴリゴリと要素を足してゆくことで、最終的なアウトプットを俯瞰してみた際の絵としての強さと、トンマナの制御を両立できたと思います。


カラーグレーディング

レンダリング時の色味だと臨場感に欠けるので、Photoshopで簡単なカラーグレーディングを行っています。

左が補正前、右が補正後
Photoshopのレイヤー。とてもシンプル。

音源

音源制作を個人で行うのは流石に難しかったので、今回はSKYTOPIAさんにご依頼しました。 初期からばっちりとトーンのあったものを作って頂き、かなりスムーズに進行した印象です。

音源でムーディーな要素を補完することで、大人っぽい演出を加えて頂きました。結果として、単純なプレイフルで子供っぽいイメージを避けることができたと思います。”キュッキュ”とした高音が金属の質感をよりリッチに引き立ててくれていて、とても気に入っています。

期間中の投稿は30s.verにて行い、最終的なReelを作る際には1m.verをFullとして作って頂きました。


余談・まとめ

作品の強度はあるものの、SNSがプラットフォームなので作品の消費が速かったのがネガティブなポイントでした。もう少し作品の露出の機会を増やしたいとは思いつつ、具体的なアイデアがないのが現状なので、何か良い機会やご縁などがあれば是非教えて頂きたいです。
来年もチャレンジする予定ですが、敢えて全体のトンマナを揃えずに進めるのもスタディ的で面白いかなと考えたりもしています。