【ショートショート】おくすり手帳
恒夫が病院の待合室で座っていると、入り口から見知った男が入ってきた。彼はその顔を見て内心舌打ちをしたが、相手が自分のことに気づいたと悟ると満面の笑みを浮かべて手をあげた。
近づいてきたのは武だった。小学生のころからの付き合いだが、正直恒夫はこの男が嫌いだった。武は子供のときから身体も態度も大きく、周りの子供たちをまるで家来のように扱っていた。逆らえばいじめられるから、みんなしぶしぶ武に付き合っていた。大人になってもその関係性は続き、それがさらに武を増長させた結果、70歳を