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心電図⑧経過をみても大丈夫?洞不全症候群 ※経皮ペーシング、使えますか?


久々に不整脈の記事を更新。
さて、これもなかなかに頻度が多い不整脈、洞不全症候群。
洞不全、というくらいなので、洞結節の異常です。

どんな不整脈?

洞結節は、心臓の運動の開始点ですね。
この動きが落ちる。つまりは心臓を動かす指令が出ない⇒徐脈になります。
モニターをつけるとHR:30/minとか、ザラですね。

https://th.bing.com/th/id/R.bdbf062563999b9e99d6fb61cc7b8166?rik=7fXpG%2bSuNnh%2fag&riu=http%3a%2f%2fwww.jhf.or.jp%2fsenmoni%2fterm%2fupload_images%2f124%e6%b4%9e%e4%b8%8d%e5%85%a8%e7%97%87%e5%80%99%e7%be%a4.JPG&ehk=z%2bjmuB%2b4%2fFhppV%2bURntBwpcNUPXQNy8fmWZdnhbcifY%3d&risl=&pid=ImgRaw&r=0
より引用

房室ブロックとの鑑別点は、P-QRS波の関係が保たれているところです(Mobitz除く)


あまりに徐脈のため房室結節や心室が洞結節からの指示を待てず、補充調律、つまり洞結節を介さずに自力で心臓を動かす働きがみられることがあります。
補充調律が出れば最低限心室が動きますが、補充調律すら出ない場合は要注意。一時的であることが多いですが、心拍出が0になるので脳血流が途絶し、意識を失ってひっくり返ったりします。
ちなみに、補充調律は心室側に近づくほどゆっくりになり、房室結節からだと大体35-45/min、心室からだと30/min程度になります。

どのような症状で出る?

有症状の場合、心拍出量減少が原因の症状であることがほとんどです。
1分間心拍出量=1回心拍出量×心拍数

でしたよね。心収縮能自体には問題がないことが多いので、単純な話、HR:60/minとHR:30/minでは2倍の心拍出量の差が出ます。
例えば数秒程度の短時間、洞不全症候群が出現して脳血流が低下すれば失神しますし、慢性的に徐脈であれば全身への血流量が低下して倦怠感を自覚したり、腎血流量の低下から乏尿⇒代謝性アシドーシスが進行して意識障害がおこることも。


こんな感じで、安静にしていても改善しない倦怠感を訴えることもあります。


逆に、洞不全症候群が起きていても全身への血流の供給>需要が担保されていれば、無症状で経過することも多々あります

何が原因で起こる?


あまりはっきりとした原因がないことも多く、加齢による洞結節の機能低下が原因と判断せざるを得ないことも。
あとはβ遮断薬やCa拮抗薬等による薬剤性、高K血症、心筋梗塞等の虚血性心疾患による洞結節への血流低下、カテーテルアブレーション等の医原性のものもあります。

治療方法は?

無症状なら経過観察、もしくは洞不全症候群の根本をゆっくり治療する方針で問題ありません。
ただ、有症状の場合は対応が少し変わってきます。

外来に通院できる程度の症状であれば
・徐脈の原因となっている薬剤の中止
・場合によってはプレタール(シロスタゾール)等の、脈拍を上げる作用のある内服薬の追加  ※心不全では禁忌!!

等で改善するか様子をみることもあります。
ただ強い倦怠感、ショックの症例ではこんなこと言ってられません。
根本的な原因解除と並行して、今、なんとかしないといけません。

その場合、内頚静脈もしくは大腿静脈を確保して一時留置型ペースメーカー(よくテンポラリーと略されますね)を心室内に留置し、VVIでバックアップのペーシングを行います。心筋梗塞が原因の洞不全症候群では、PCI(経皮的冠動脈形成術、いわゆる「カテ」)の前にテンポラリーを入れることも結構あります。

https://youtu.be/94jFYFym9S0

こちらに分かりやすく動画があるので、参照してください。
それにより心拍出を担保してから原因治療に移る、もしくは原因解除が困難な場合は恒久型=永久留置型ペースメーカーを導入します。


テンポラリー導入の準備!でも、やばい・・・このままじゃCPAになってしまう・・・

さて、ここで注意が必要。
テンポラリーを入れるとしても、手技開始から数分はかかります。夜間や緊急で循環器内科・救急科がいない場合、もっと時間がかかります。それまで持たない場合はどうする?

そんな時に備えて、経皮ペーシングを覚えておきましょう。
・・・そもそも経皮ペーシングの存在自体、知っていますか?
病院内には必ず除細動器がおいてありますね。
正確にはカルディオバージョン(心拍に合わせた除細動)を目的とするものですが・・・


https://ce7meliteracy.com/wp-content/uploads/2020/10/IMG_0128.jpgより引用
おなじみのコイツ。使ったことありますか?

この機械に、経皮ペーシングの機能が備わっています。
順序は
➀パドル(=手に除細動の道具を持って直接電流を打つ)からパッド(=患者に貼るタイプ。AEDでお馴染み)に切り替える

※意外とこの方法を知らない人が多い!!!
 左下のカバーを外して、中にある黒いダイヤルを回してパドルの接続を解除、その後パッドのコネクターに切り替えます。


左下の部位の拡大画像。これを外して・・・




機種は違いますが、こんな感じのダイヤルが中に入っているので、これを回してパドルの接続を解除し、パッドに切り替えます。


②パッドを患者の心臓を挟んで2枚張る


https://nastea.jp/wp-content/uploads/2017/11/AED.pngより引用

③普段除細動を行う時に電圧を調整するダイヤルを逆方向、つまり反時計回転に回し、「ディマンド」に合わせる


「フィクス」でもいいのですが、まずはシンプルなやり方を覚えましょう

④「ペーシングレート」を、打ちたいHRに合わせる。
自分は60/minに統一し、迷わないようにしています。


⑤「ペーシングレート」の横(機種によっては上下)にある「ペーシング強度」を0から段々上げていき、心臓に伝わる強さの最小限+αの強さに設定する

この手順を覚えていれば、ペーシング開始まで1-2分でいけます。
ちなみに、なぜ「心臓に伝わる強さの最小限+αの強さ」なのでしょうか?

・・・痛いんですよね、コレ。
いやまあ、死ぬよりはマシだと思いますよ?
でも、例えば転院搬送する時とか1時間以上コレをやることもあるワケですよ。患者さんから悲鳴があがります。

いかがでしたでしょうか?
知っておいて損はない、洞不全症候群の心電図の特徴、病態、治療適応、対処方法。必ず一度は出会うし、患者さん自身も徐脈をかなり気にしている場合もあります。そんな時に、自信をもって「大丈夫ですよ」と言ってあげられるといいですね!

閲覧頂き、ありがとうございました!
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