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【論文】日本経済を本当に成長させるたったひとつの方法

30年近く続く、苦しい経済。賃金が伸び悩む中で、物価高の影響が私たちの生活に重くのしかかります。この長く、先の見えないトンネルを抜け出す方法はあるのでしょうか。どうすれば、もっと豊かで、将来に希望のある日本社会に変えることができるのでしょうか。

今回は論文を掲載します。というのも長らく「大学生」と称して活動をしてきたのですが、実は既に卒業しまして…他に良い名前が思い浮かばないのでペンネームとしてそのまま残そうと思うのですが、この際、その報告とあわせて、大学の成果物もここに記録しておこうという考えです。見てもらおうというつもりで書いていないので、少しだけ難しいかもしれません。

少し短縮したのですが、読むのに10分ちょっとかかります。ただ、この国の経済政策の方向性に、社会保障改革という切り口を持ち込み、いくつかの打開策をご紹介しています。これを3秒でわかるように言うと「セーフティーネットからセーフティートランポリンへ」ということですが、15分程のお時間がある際に、ぜひお読みください。

労働市場政策による構造的経済成長の達成


要旨
本稿では、労働生産性向上による経済成長の必要性を確認した上で、我が国やスウェーデン、デンマークの政策を分析し、労働市場政策の分野で行うべき政策の方向性を検討する。我が国では労働生産性の向上に向け、3つの課題、すなわち、①雇用を流動化すること、②低生産性企業から高生産性企業へと人材の流れを作ること、③企業外においても個々人のスキルを向上させることが問題となる。その解決のため、スウェーデンやデンマークの政策を参考に、3つの課題を解決する労働市場政策が必要であることを主張する。


Ⅰ はじめに

 本稿では、我が国の社会保障の持続可能性確保に関する社会保障・雇用政策の新たな役割を示すことを試みる。

 我が国における社会保障とは、「全ての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすること」(厚生労働省社会保障制度審議会)であり、最低生活保障としての役割が専ら重視されてきた。雇用政策についてもこの社会保障の枠内のものとして捉えられ、雇用保険や最低賃金による最低生活保障を中心とした制度設計がなされてきた。

 一方で、少子高齢化がもたらす社会保障の持続可能性への脅威、あるいは我が国の経済の長期低迷は、社会保障・雇用政策が最低生活保障以上の大きな可能性を秘めていることを暗に示しているように思われる。すなわち、社会保障・雇用政策は、最低生活保障を越えて、我が国の社会制度の持続可能性と国民全体の幸福度を高め、そしてより良い社会を後世に受け継ぐための大きな役割を担っている。

 以下では、まず、我が国が抱える社会保障の持続可能性に関する深刻な問題について、その現状を示し、その解決策としての雇用政策(労働市場政策)の重要性を確認する。次に、我が国の雇用政策の課題を分析し、海外における政策事例をふまえながら、我が国で行いうる政策を検討する。


Ⅱ 我が国が抱える社会保障の持続可能性問題

1 少子高齢化と社会保障の持続可能性問題

 我が国において進行している少子高齢化と、それによる労働力人口比率の低下は、社会保障制度の持続可能性に大きな影を落としている。

 我が国の社会保障体制は、主に現役世代からなる労働力人口が、主に高齢者からなる非労働力人口を支える形となっている。例えば、日本の社会保障財源の内訳をみると6割の社会保険料(所得に応じて支払い)と4割の税財源(個人・法人所得課税51%、消費課税35%、資産課税14%)からなっている[1]。このように、社会保障財源は消費課税と資産課税を除いた少なくとも約8割を労働力人口の所得に依存している。一方の給付の内訳をみてみると、日本の社会保障給付は5割の年金費と3割の医療費、1割の介護費、その他(雇用・子ども等)が1割ほどである。医療費も半数ほどが高齢者向けであり、社会保障給付の約8割が非労働力人口の中心をなす高齢者に向けられている[2]。こうした「労働力人口から非労働力人口へ」という社会保障体制において、労働力人口比率の低下・非労働力人口比率の上昇は、社会保障財源の担い手の減少と社会保障費の膨張の同時発生であり、労働力人口側の負担が大きくなることを意味する。

 このように、我が国は深刻な少子高齢化問題を抱えている。その問題の本質は、労働力人口とその比率の低下にともなう労働者ひとり当たりの社会保障負担の大幅な増加にある。これが負担できないような規模に膨れ上がれば、制度の持続可能性は失われる。具体的に見ると、労働力人口比率は少子高齢化にともなって2060年前後におよそ50%まで低下し安定する。これは現在の約60%から10%程度の減少である。一方の社会保障費の総額は2040年前後におよそ190兆円に達する[3]。これは、2016年の116兆円から今後20年で60%増加することを意味する。こうした労働人口とその比率の減少および社会保障費の増大の結果、労働者1人・1時間あたりの社会保障負担額は現在の824円から2060年には2150円まで増加すると試算されている(アトキンソン, 2020)。一方で産業全体の平均賃金(時給換算)は1200円程度であり[4]、現状とは大きな解離がある。そのため、将来の社会保障制度の持続可能性に大きな懸念が生じている。


2 社会保障の持続可能性問題にどう対応するべきか

 それでは、こうした将来の社会保障負担増加の問題に対して、私たちはどのように対応するべきだろうか。第一に、出生率向上政策によって少子高齢化を解消する策が考えうる。しかし、効果的な政策を実施した場合でも労働力人口比率の増加には時間がかかる。例えば、今年行った政策で来年子どもが生まれても、労働力を担うようになるのはさらにその20年ほど後だ。もちろん、効果的政策を行える保証もない。よって、出生率向上政策も大変重要であり、自己実現の推進という面でも進めるべきものであるが、それだけでは全てを乗り切れるわけではない。

 社会保障の新たな担い手による解決を期待できないのであれば、私たちの力によって解決する必要がある。要するに、社会保障費の負担増加はひとり当たりの負担能力向上によって対応しなければならない。仮にひとり当たりの社会保障負担が増加するとしても、ひとり当たりの所得が増加していれば負担は場合によっては可能となる。よって、この社会保障の持続可能性の問題に対しては、一人当たりの所得の向上、すなわち経済の成長によって対応する必要がある。

 一人当たりの所得は、次の2つから構成される。1つは労働力人口比率である。例えば、同じ人口100人の国でも、労働者60人の所得を国民100人で割るのと、50人の所得を100人で割るのとでは、前者のほうが国民一人あたりの賃金が大きくなる。よって、労働力人口比率が高い方がひとり当たりの所得は高くなる。これを実現するには高齢者や女性の労働参加促進などが一般的に行われる。そして、もう1つは労働生産性である。労働力人口比率が同じでも、労働力人口がひとり1時間平均1000円の利益を生み出すのと、2000円の利益を生み出すのとでは後者のほうが圧倒的に国民ひとり当たりの所得は高くなる。よって、ひとり当たりの所得を向上させる場合、労働力人口比率と労働生産性の両方ないしいずれかを向上させることになる。 

 そこで、労働力人口比率や労働生産性について、我が国の現状を見て行きたい。まず、労働力人口比率であるが、これはほぼ上がりきっている可能性がある。2011年から18年の間、生産年齢人口は618万人減少した一方で、労働力人口は371万人増加した。うち65歳以上の高齢者が291万人、女性は292万人で、高齢者や結婚後に引退していた女性の労働参加によって増加したと見られる(アトキンソン, 2020)。しかし、こうした動きは近年は頭打ちになっている。女性や高齢者の労働参加率は先進国平均並みになっており、これ以上の向上が不可能ではないとしても劇的な向上までは望めない。

 一方の労働生産性は「のびしろ」に溢れている。図1は、2019年のひとり当たり労働生産性の世界ランキングを示しているが、日本はOECD加盟国中26位と、トルコや韓国も下回って先進国最低レベルであった[5]。数字で見ても、日本は81,000ドル程度で、3位のアメリカの半分程度。トップのアイルランドとは2.5倍程度の差が生じている。このように、労働生産性については、そこに大きな成長可能性を見ることができる。現状は確かに良くないが、それは一方で、この芳しくない状況を好転させれば、それがもたらす変化はより大きくなるということでもある。以上から、ひとり当たりの所得を向上させ、社会保障の持続可能性を担保するには、低迷した労働生産性を向上させることが、まず必要であるということがわかる。


【図1】OECD加盟諸国の労働生産性(2019年・労働者ひとり当たり)

出典:日本生産性本部(2020)『労働生産性の国際比較2020』より抜粋


3 労働生産性向上の課題と解決策としての労働市場政策

 労働生産性向上の課題を以下で検討する。労働生産性の上昇下降の要素は次の3つに分けられる。第一に、純生産性である。すなわち、業種ごとの生産性上昇率が労働生産性に与える影響である。第二に、ボーモル効果である。これは業種ごとの名目シェアの変化による労働生産性への影響を指す。第三に、デニソン効果である。これは、生産性の低い業種から高い業種への労働投入の変化を指す。厚生労働省は、それぞれの要素についてどの程度、生産性に影響を与えたかを分析している[6]。その結果、「労働生産性を引き上げていく上で最も重要なのは各産業の労働生産性を高めていく取組」として純生産性要素の重要性に言及するとともに「欧米諸国との比較において、我が国では労働生産性の上昇に対する産業間の労働移動の寄与がより大きい」としてデニソン効果の重要性についても触れた。

 こうしたことから、労働生産性を上昇させるために重要なことは、全体的な生産性の底上げを行うことである。そして、労働生産性の低い企業・業種から高い企業・業種への労働移動を促進することである。しかし、そのいずれにおいても我が国は課題を抱えている。

 第一に、労働移動について見てみる。表1は各国の勤続年数別の雇用者割合を示している。勤続年数別雇用者割合を各国で比較したところ、日本では各国と比較して極端に勤続年数の短い者が少なく、勤続年数の長い者が多いことがわかる。こうしたことから、人口構造の影響等も受けるため一概には言えないが、それを加味したとしても、日本では各国と比較して転職を含めた失業やそれによる労働移動が低調であることが推測される。


【表1】勤続年数別雇用者割合(%)(2017)

出典: 労働政策研究・研修機構(2019)『データブック国際労働比較2019』
※労働生産性ランクは日本生産性本部(2020)『労働生産性の国際比較2020』のデータを利用。OECD加盟国のみが対象。

 

 第二に、労働移動が労働生産性の向上に十分に結び付いていないとの指摘がある。我が国においては、労働移動が低調であるとはいえ、一定程度の労働移動は発生している。しかし、それが必ずしも労働生産性の向上には繋がっていない現状がある。その原因はまず第一に、生産性の高い企業に雇用の吸収力がなく、結果として生産性の低い企業同士で人材の移動が行われてしまっているという雇用側の問題点があげられる。その原因としては、イノベーションによって高生産性企業において労働が要らなくなり、雇用が縮小する可能性がよく指摘される(今井, 2013)。しかし、内閣府の年次経済財政報告[7]における見解は異なる。高収益をあげている企業については誘発雇用者数に対して、実際の雇用者数の延びが小さく、リーマンショック前と比較しても大きく解離しているという。すなわち、実際には今井(2013)等の見解とは異なり、生産性の高い企業の雇用吸収の潜在力は高いのに、思ったように人材を確保できていないことになる。この原因について年次経済財政報告では雇用のミスマッチをあげている。さらに、三井住友銀行は調査報告[8]の中で、求職者超過の度合いが強まった職種においても雇用の充足率が低下していることを示しており、このことから、雇用のミスマッチの主因としては、雇用する側の求めるスキルに対して、求職者側が提供できるスキルが一致しない(あるいは足りない)ことから発生するいわゆる「スキルのミスマッチ」である可能性が高い。例えば、生産性の高い情報通信産業や化学産業が雇用を拡大しようとし、仮に多くの求職者が存在したとしても、その求職者の多くが情報通信産業や化学産業に従事するだけの十分なスキルを持っていなければ雇用は難しい。結果として十分に雇用を吸収できなくなってしまうのである。

 第三に、非正規雇用など、生産性の低い職で働く人が能力向上をはかれないまま、生産性の低い職を転々としてしまうという問題があげられる。具体的には2016年に発生した転職のうち128万人が非正規から非正規への転職であり。正規から正規は70万人。非正規から正規は34万人にとどまった。産業別でも労働移動が活発なのはサービス業など生産性が低いとされる産業が中心で、情報通信などへの人材流入はあまり進んでいない[9]。これらは労働移動を促し、労働生産性を高めようという取り組みの上で大きな問題となりうる。

 第四に、純生産性要素に着目した問題点も指摘されている。純生産性面での労働生産性の向上には無形資産投資が最も重要な点であるが、近年これが低調であるという問題がある。無形資産投資として最も求められている企業の教育訓練に対する支出は近年横ばいか減少傾向にある。企業は育成にあたる人材や時間の不足、育成した人材がすぐに辞めてしまう事などを人材育成の問題としており[10]、非正規雇用の増加や雇用慣行の変化、人手不足などによって、企業が人材育成の余裕やインセンティブを失いつつあり、無形資産投資が難しくなっている現状が読み取れる。

 以上のように、我が国においては生産性の低い企業や業種から生産性の高い企業や業種への労働移動、業種ごとの労働生産性の底上げが求められているが、そこには課題がある。第一に、固定されがちな現状にある雇用をどのように流動的な方向に誘導するのかという点である。第二に、労働移動を労働生産性向上に繋げるために、どのようにスキルのミスマッチを解消し、高生産性企業・業種の雇用の吸収を促進するのかという点である。第三に、雇用の流動化によって現在よりもさらに多くなるであろう非正規労働者を含めた非定着型労働者のスキルをどのように高めるかという点である。これら主に3つの課題の解決無くして労働生産性向上による経済成長はあり得ない。

 一般的に、労働移動や能力開発の促進は政府の社会保障政策・労働市場政策によってなされる。これが量的・質的に課題解決に繋がるものであれば問題は解消に向かうのであり、そうした制度設計こそ今まさに求められている。そこでまず、これら3つの課題に対する現在の政策的対応を確認してみたい。



Ⅲ 我が国における労働市場政策の現状

 労働移動の促進、高生産性部門の雇用吸収力拡大、非定着型労働者のスキル向上という3つの課題に対して、政府はそれぞれ政策を講じている。まず、労働移動の促進と高生産性部門の雇用吸収力拡大については、労働移動支援助成金制度を実施している。これは、企業が労働者に再就職のための訓練を実施することにより労働移動を促進し、再就職に成功した場合には訓練の費用を助成する制度である。本制度は再就職支援コースと早期雇入れ支援コースの2つのコースからなる。再就職支援コースとは、離職を余儀なくされる労働者の再就職支援を民間の職業紹介事業者に対して委託した事業主に対して助成金を支給する制度である。一方の早期雇入れ支援コースとは、ハローワークの認定を受けた労働者を早期に期間の定めのない労働者として雇い入れた事業主に対して助成金を支給する制度である[11]。これら送り出し側と雇い入れ側双方への支援によって労働者の早期再就職の実現による労働移動を促している。制度では、生産性指標等により一定の成長性が認められる企業がREVIC(地域経済活性化支援機構)や中小企業再生支援協議会等から支援を受ける企業から離職した者を雇い入れた場合に、支給対象者1人につき80万円を支給する優遇助成の制度も用意されており、高生産性企業の雇用吸収力拡大を同時にはかっている。

 しかし、制度の利用は低調である。2013年、政府は「日本再興戦略-Japan is BACK-」を閣議決定した。このうち「日本産業再興プラン」では「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策転換」が示され、雇用調整助成金から労働移動支援助成金への重点シフトが目指された[12]。これにより、2012年度時点で500倍程度の差で雇用調整助成金が上回っていた予算規模の差は大きく縮まったものの、実績ベースでは平成29年度時点で雇用調整助成金が約27億、労働移動支援助成金が約18億円[13]と、重点が完全に切り替わったとは言い難い状況である。この原因について、阿部(2016)は、事業主が再就職支援事業を利用するインセンティブがないことを指摘している。一般的に、事業主が再就職支援事業を委託するのは、退職金の上積みなどと同様に、雇用調整の実施についての同意を労働組合等から得るための前提条件になることが実態だからであり、そうした条件を掲げる労働組合があるのは一部の大企業に偏っているからである。他の事業主には利用のインセンティブがない。

 次に、スキルのミスマッチ解消策や、非定着型労働者のスキル向上策について、政府は公共職業訓練と求職者支援訓練からなる公的職業訓練制度「ハロートレーニング」を実施し、キャリアアップや希望する就職の実現のために必要な知識や技術の習得をサポートしている。公共職業訓練は、①離職者訓練(ハローワークの求職者を対象に無料で概ね3ヶ月~1年の訓練を実施)、②学卒者訓練(高等学校卒業者を対象に有料で1年または2年の訓練を実施)、③在職者訓練(在職者を対象に有料で2~5日の訓練を実施)、④障害者訓練(障害のある人を対象とする訓練)の4種類からなり(リクルートワークス研究所, 2020)、職業能力開発促進法に基づいて実施されている。受講場所は国や都道府県の施設および都道府県の委託する民間教育訓練機関等となっている。求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない人を対象に無料で行われ、求職者支援法に基づいて実施されている。受講場所は厚生労働大臣が認定した民間教育訓練機関等となっている。いずれも訓練受講に関する手続きはハローワークで行い、失業給付の他に訓練受講中の手当て(日額500円・最大2万円)や交通費(最大で月42,500円)等を受給できる制度がある。また、求職者支援訓練については失業給付の代わりに、本人収入が月8万円以下である等の一定の要件を満たした場合に月額10万円の給付金が支給される[14]。

 しかし、これらについても課題が指摘されている。それは、ハロートレーニングが十分なスキル向上のための訓練を提供できていないという指摘である。戦後職業訓練は、中小企業が訓練施設を事業所内に構えることができなかった事などを背景として、職業訓練のための施設を国や都道府県が建設して、その施設で専ら職業訓練を行う、いわゆる「はこもの訓練」を中心とし、今に至る。その結果、社会的ニーズへの対応が遅れがちになり、講座の内容や期間が実情と離れてしまうのだ。例えば、国や都道府県の実施する職業訓練はものづくりの技術習得を中心としており、ITなどの先進分野の訓練がほとんど行われていないことやオンライン講座の少なさなどが指摘されている。



Ⅳ 諸外国の政策分析

 各国ではいかなる政策を構築しているのか。政策内容を確認し、その効果や課題を分析する中で我々が参考にすべき方策を探りたい。ここでは第一にスウェーデンの、第二にデンマークの労働市場政策について分析する。両国とも高い労働生産性を誇っている。


1 スウェーデンの労働市場政策

 全ての人は就労能力を生かし、発展させ、必要なら職や居住地を変え、就労の努力をする権利と義務がある。政府は就労支援や教育・訓練といった積極的な措置によってそれを支援する。こうした理念は「ワーク・プリンシプル」と呼ばれ、スウェーデンにおける社会的コンセンサスである(佐藤, 2012)。これは自らの能力に応じて就労し、必要な時にサポートを受ける権利と同時に、就労や能力発展における努力の義務を示していると言える。こうした理念のもとに1930年代から50年代にかけて形成されたのがスウェーデンの労働市場政策であり、失業保険制度と積極的労働市場政策とが両輪の役割で運営されてきた。


(1)失業保険制度

 スウェーデンの失業保険は制度上は公的社会保険に含まれず、各労働組合が管理する基金によって運営され、加入者は雇い主が国に納める社会保険料とは別に給与の中から保険料を納める。ただし、この保険料だけでは運営が厳しく、現在では多額の政府資金が投入されている。被用者だけでなく自営業者も加入できる点に加えて、期間や所得保障の手厚さと失業者への努力の義務とが合わさっている点が主な特徴と言える。

 給付条件は、1日3時間、週17時間以上の就労が可能であること。求人を受け入れる用意があること。公共職業安定所に登録し求職活動を行っていること。公共職業安定所の指導に従って行動計画を策定すること等だ。基礎保険と所得比例保険があり、基礎保険は失業保険の未加入者と加入期間が1年を越えていない未資格者が対象である。給付期間は300日で、公共職業安定所が認めればさらに300日延長される。給付額は日額320SEK(約4000円)である。一方の所得比例保険は保険加入者が対象で、給付期間は基礎保険と同じく300日間と、300日間の延長を含めた最大600日である。最初の200日は上限を680SEK(約9000円)として従前賃金の80%を給付する。その後300日目までは70%、延長後の300日間は65%に引き下げられる。最低額は基礎保険と同じく320SEKである(山田, 2016)。



(2)労働市場訓練

 こうした手厚い失業保険制度は労働移動へのインセンティブを高め、また、産業構造を転換させる政策への支持を高めうる。一方で、手厚すぎれば求職活動へのインセンティブを損なう。そこで、失業保険の給付の条件となっているのが「積極的労働市場政策」への参加である。これは一方的に現金給付を行う失業保険などの「消極的労働市場政策」と対比して、失業者を受け身ではなく活性化させることを目的としている。

 スウェーデンにおける積極的労働市場政策は一般的に①労働市場訓練、②雇用助成、③就業体験の3つに分類されている。産業構造の転換が急速に進む社会では、労働者は他の業種の仕事を探すことも考えねばならない。そのためには他の業種の仕事に必要なスキルを獲得し、あるいは向上させなければならないが、それを円滑にしているのが労働市場訓練である。労働市場訓練は積極的労働市場政策の中核を担ってきた制度であり、労働力不足分野や先進分野のスキルの獲得や向上を目的として教育プログラムを提供する。管理は労働市場庁の担当だが、実施機関は国営企業や民間企業、自治体、成人高校など多様である。訓練期間は通常3~6か月。訓練参加者は失業給付と同額の給付を受ける。

 こうした、積極的労働市場政策の中心を担う労働市場訓練だが、その効果への評価は年代によって異なる。1980年代には効果が認められていたが、90年代になると逆に効果が認められなくなっている。しかし、2000年代になるとプラス効果が再び認められるようになり、受講しなかった場合と比べて失業期間を20%短縮したと結論付けられている(佐藤, 2012)。90年代初頭、スウェーデンは資産バブルの崩壊に伴う不況にみまわれていた。経済は91年から3年連続でマイナス成長を記録。失業率は2.4%から10%を越える水準へと急上昇した。こうした不況期になぜ労働市場訓練は効果を見せなくなったのか、その理由の第一は雇用の受け皿の少ない状況では、いくら訓練を行っても就業へと結び付きにくいという点。第二に、失業者が増えたために、公共職業安定所ができるだけ多くの失業者を労働市場訓練に吸収しようと、定員を大幅に引き上げた結果、質の管理がおろそかになってしまったという点があげられる(湯元・佐藤, 2010)。


(3)学び直し支援

 変化し続ける社会のニーズに労働者のスキルを合致させるためには、労働市場訓練だけでなく、就職後にも新たな専門知識や能力を身に付けるために、学び直しの機会を得ることが重要である。スウェーデンでは、大学や単科大学、高校において、職業と直結した専門課程が用意されている。さらには、大学よりも短期間で、より職業能力獲得に特化した教育を提供する職業大学も充実している。労働者は学び直しのため無給の休暇を取得する権利が保障され、18歳以上55歳未満を対象とした奨学金制度も受けられる。スウェーデンでは大学まで学費が無料であり、これらは生活費に充てられる(湯元・佐藤, 2010)。

 スウェーデンの高等教育の特徴は、一般教養よりも職業訓練的な要素を重視している点にある。卒業生は労働市場において即戦力となることが期待され、学部教育もそれを前提に構成されているからだ。教育課程修了時に取得する学位は、そのまま技能証明書と見なされ、これをもとに就職活動を行う。こうした仕組みにより、大学等での学び直しは、(自発的なものを含む)失業を契機に進学し、それまでとは別の業界の職能を得て仕事に就く流れを生み出し、産業の構造転換に大きな役割を果たしているのである。


(4)雇用助成制度

 90年代の反省や、その後に若年層の失業率があまり下がらなかった事などから、労働市場訓練は縮小され、雇用助成制度が重視されるようになる。この制度は雇い主に賃金を助成することで失業者の雇用を促進することを狙ったプログラムである。

 2006年、これまでの社会民主党政権に変わって発足した中道右派政権は「ニュースタートジョブ」を実施。これは、1年以上の長期失業者を対象とし、雇った企業や公的期間に対して最長2年間、社会保険料の最大2.5倍にあたる額を給付する制度である。さらに、訓練付雇用として、24歳以下の若年者や難民を雇用し、6か月以上の期間、労働協約で定める業種ごとの最低水準の賃金の75%を給与として支払い、労働時間の15%以上を訓練に充てた事業主に対し、①給与のうち社会保険料相当分、②訓練費用としてひとり当たり日額115SEKを最長1年間補助する制度も用意されている[15]。

 このように、スウェーデンの雇用助成制度は、主に長期失業者や若者、難民など、就労に当たって困難を抱え、就労の体験それ自体がより良い就労への有力な支援となる層を対象とし、労働コストを引き下げることによって雇用を促している。


(5)課題

 スウェーデンの労働市場政策の中心は長く労働市場訓練が担い、社会のニーズに人々のスキルや知識を合わせることで産業構造の機動的な転換を可能にしてきた。一方で、90年代の不況期、失業率が思うようには下がらない中、スウェーデンの国民は失業者への手厚い給付に反感を持つようになった。2006年の中道右派政権の誕生はその現れと言える。このような動きを経て労働市場政策も変化を見せ、中心は雇用助成等へと移ったのである。しかし、労働市場訓練の効果は長い目で判断をするべきだ。ただ就労を急がせる政策では短期的には失業率を引き下げるかもしれないが、長期的に見ればスキルのミスマッチの発生や質の悪い雇用に労働者を固定してしまう危険性を伴う。その点、中道右派政権の改革は拙速で過剰だったと言える。もちろん、訓練を就労につなげることも重要なポイントである。そのため、労働市場訓練を行いながらも、回復期においては失業者を就労に結びつける方向を重視するような柔軟な政策形成が望まれるのではないだろうか。



2 デンマークの労働市場政策

 デンマークの基本的な労働市場政策の仕組みは「フレキシキュリティ」と呼ばれる。これは、柔軟さを意味するフレキシビリティと保護や保障を意味するセキュリティとが合わさった造語であり、労働市場の柔軟さと手厚い生活保障とを両立させる政策である。そして、このフレキシキュリティ政策は①柔軟な労働市場、②手厚い失業保険制度、③積極的労働市場政策とが相互に密接に連携することによって成り立ち、これらは「黄金の三角形」とも呼ばれる。


(1)柔軟な労働市場

 デンマーク政府は、雇用者による不公正な解雇を規制してはいるものの、経済的理由による解雇は法律上規制せず、労使協議に任されている。これは1899年に行われた国レベルでの労使協定によるもので、経済変化に機動的に対応するために、雇用者に自由に採用・解雇を行う権限が与えられた一方で、労働者側は賃金や労働条件について交渉する権利を得た。こうして強い交渉力を得た労働者側はその後、経営側の支持も取り付けて、手厚い社会保障の制度化を成し遂げることとなった(若森, 2013)。


(2)手厚い失業保険制度

 こうした経緯から成立した制度がデンマークにおける手厚い失業保険制度である。この制度もまた労働組合による取り組みに端を発し、その後に政府が財源的な補助を与えた制度である。労働組合は職能別にそれぞれ失業保険金庫を持ち、政府が承認し、補助金を与え、監督を行うことで成り立っている。加入は任意であるが、加入率は8割弱となっている。企業には保険料負担は義務付けられていない。

 受給にあたっては、過去3年間に52週の雇用・保険期間(自営業者の場合は1年間の加入と週30時間相当の実質的な労働)があることに加えて、ジョブセンター(職業安定所)への登録、求職活動を行うこと、アクティベーション(職能向上を目的とした教育および労働プログラム)への参加、移民や難民の場合はデンマーク語教育を受けることなどが条件となっており、日本よりも厳格と言える。一方で給付期間は最長2年間と長く、給付水準も失業直前3か月の平均給与の90%を上限とするなど大変手厚い(日本貿易振興機構, 2011)。


(3)積極的労働市場政策

 デンマークにおける失業保険制度は大変手厚いが、失業者を雇用に戻すことには効果的ではない。要するに、これだけでは失業者による制度への依存を招いてしまう可能性がある。そこで、デンマークにおいても積極的労働市場政策を行い、失業者の就労や能力向上を後押ししている。

 失業保険の受給にあたって、失業者にはアクティベーションへの参加が義務付けられている。アクティベーションとは、失業者の職能向上を目指した取り組みで、①カウンセリングと労働市場訓練、②企業における訓練、③給与補助による採用からなる制度である。失業者はまずアクティベーションに参加するに当たってのガイダンスを受ける。そして、それぞれの目指す職能に応じた教育プログラムに参加し、能力の向上をはかる。再就職の方向性を決定すべき失業者や、就労に当たっての基本的な社会的能力が不足していると判断された失業者については、雇用主に賃金補助を支給した上で、職業訓練の場を提供してもらい、訓練を行う。また、同じように賃金補助を支給した上で失業者の雇用を一時的に確保してもらう制度もある。この場合は企業での職業訓練と異なり、企業が採用した場合には通常の労働・給与条件となる。また、移民や難民のために、デンマーク語の教育プログラムも用意している(小林, 2013)。

 このように、デンマークにおける積極的労働市場政策は、失業者と担当者との密な連携を軸として、一元的に実施されている。失業者に対してはスキルの向上のための取り組みが失業保険の受給条件として義務付けられており、モラルハザードや費用の増大が強く警戒されている。


(4)課題

 デンマークの政策は、黄金の三角形が大変精緻に作用し合っている。柔軟な労働市場は、その先に手厚い失業保険制度があってこそ国民的理解を得て成立するし、手厚い失業保険も積極的労働市場政策や就労支援があって初めて意味をなす。よって一部を切り取って参考にしようとせず、雇用を流動化し、スキルを与え、就労へと結びつける一連の取り組みを一体的にとらえることが必要である。

 なお、政策効果については90年代半ばの研究で、失業率の減少や再就職にあたって多くが常勤雇用者として戻ったことに、アクティベーションが大きく影響したと評価されている(嶋内, 2011)。一方で、若森(2013)は訓練の実施機関ごとの就職率の調査から、大きな効果が認められるのは民間企業による訓練だけで、公的機関による訓練には大きな効果は確認できないとしている。また、就労に向けて、基本的な社会的能力の養成が必要な場合が多いとされる公的扶助受給者にはアクティベーションの効果が非常に低いこともわかっており、どのように養成するかが課題となっている。


Ⅴ 我が国が採るべき労働市場政策の方向性

1 我が国や各国の政策から何を学ぶか

 スウェーデンやデンマークでは徹底的に、失業をポジティブにとらえるための政策が行われている。我が国では自発的なものでさえ失業は避けるべき悲劇とされているが、これら各国では必ずしもそうではない(坂井, 2007)。だからこそ、人々は積極的に労働移動を行い、企業も労働組合も後押しする。それは至極合理的な判断に基づく。労働移動したい時、しなければならない時、それを実行しやすい支援体制が充実している。手厚いセーフティーネットや手厚い就労支援がある。それだけではない。充実した教育・訓練の制度や雇用助成制度により、これまでとは異なる業種への転職も決してハードルの高いものではなく、転職後の賃金アップも十分見込める。よって、彼らにとって労働移動をしない理由はあまり存在しなくなる。労働移動を積極的に行うことは、この場合において合理的なのだ。そしてもうひとつ大事なのは、だからこそ、人々は緩い解雇規制を受け入れ、そしてそれら全てが相互に作用した結果、目まぐるしく変わりゆく世界の中でも、産業構造や人々のスキルを迅速に適応させることができているのである。これが、両国が高い労働生産性によって経済を成長させている所以と言えよう。これは我が国とは対照的だ。解雇規制緩和には多くの人が反対をしているが[16]、これもまた、失業が生活の不安定化とイコールになってしまっている我が国の現状においては至極合理的な反応である。


2 基本的方向性

 では、我が国の課題や、各国の政策事例を確認した上で、我が国はどのような政策的方向性をとるべきだろうか。これまで確認したように、我が国は労働生産性を高めるために、いかに雇用を流動化させるのか、いかにスキルのミスマッチを解消して高生産性企業・業種に労働力を移動させるのか、いかに企業内での教育訓練が望めない労働者のスキルを継続的に高めて行くのかという3点を課題としてあげた。

 その上で、基本的な方向性としてはまず最初に、失業・転職に対する不安をできる限り払拭しなければならない。これは雇用流動化における大前提である。この効果としてはまず、自発的失業を促す効果が期待できる。また、解雇規制の緩和など、雇用の流動化を生み出す各政策への国民的理解を獲得しやすくなる効果も期待でき、非自発的失業へのアプローチも見えてくる。ただし、それが単に失業保険などの経済的支援だけを指すかと言えばそうではない。転職を実際に行った人に対するアンケート調査[17]ではあるが、希望する行政的支援として「より多くの求人情報の提供」や「企業年金・退職金が不利にならないような制度の改善」が多く上がっており、多角的なアプローチも重要である。さらに、労働市場訓練が雇用のミスマッチ解消への一助として重要だ。社会のニーズに合わせて知識や技能を与える制度を確立できれば、雇用する側の求めるスキルと求職者側の持つスキルとが一致しやすくなり、ミスマッチは発生しにくくなる。加えて、これは全体的な労働生産性の底上げにも有効である。労働生産性を高める方法としては全体的なスキルの底上げも求められていた。より充実した労働市場訓練の制度を確立したい。


3 具体的政策の検討

(1)失業保険の充実化と政策的方向性の転換による失業不安低減

 まず、失業保険の充実化と政策的方向性の転換による失業不安低減である。第一に、失業・転職に対する不安をできる限り払拭する。そのためには、所得保障を強化することが最低限必要である。我が国では、企業において雇用を維持・固定することによって雇用安定を図っており、それが国民の生活を保障している。しかし、労働者の生活保障を雇用保障と一体化させ過ぎていることで、雇用からの離脱は生活保障からの離脱とイコールになってしまっている。これでは、自発的な失業を促すどころか、雇用流動化のための政策に対する国民的理解を得ることすら不可能である。まず、失業保険の目指すところを最低生活保障から所得保障へと切り替え、失業と生活不安とが一体的にならないようにすべきだろう。菅原(2009)は失業保険の給付額を増加させた場合、各個人の失業に対する便益が増加し、失業を選ぶインセンティブが増加することで自発的失業率が増加することを証明しており、失業保険の金額面、期間面での充実化は自発的失業の増加、ひいては雇用の流動化に一定の効果を与えうる。現状、我が国の失業保険(雇用保険)制度は表2で示すように、各国と比べて期間や所得保障の割合で手薄いため、所得保障の割合の引き上げと、給付期間の延長を検討するべきである。この際、自発的失業の取り扱いについても見直しを要する。現状、自発的失業者の失業保険水準は非自発的失業よりも低く、積極的な労働移動を妨げる可能性がある。


【表2】失業保険制度の国際比較

出典:労働政策研究・研修機構(2014)『失業保険制度の国際比較』
※日本:年齢によるが概ね従前賃金日額がおよそ7千円未満が80%で、それ以上は50%水準となる。
※スペイン:勤続要件が厳しく、勤続6年以上で最長2年間、勤続3年では最長1年間となる。
※上限金額は2020年6月20日時点のレートで算出
※SMI:社会的流動性ランキング(WEF-Social Mobility Report 2020-)


 こうした取り組みは、失業に対する人々の不安を低減させるだけでなく、その結果として雇用流動化を促す政策への人々の支持を高めることが期待される。自発的失業へのアプローチにとどまらず、非自発的失業へのアプローチを可能にするひとつの方法でもある。一方で、失業保険の水準を引き上げれば、労働移動を行うことなく失業保険の中で安住してしまう者が現れると懸念される。実際にスウェーデンでは、こうしたことが世論の反発を招いた(Ⅳ-1参照)。教育・訓練への参加を給付条件としたり、景気変動に応じた給付水準の調整等によってこれを回避する取り組みが求められる。

 第二に、現状、我が国の雇用政策は雇用調整助成金と労働移動支援助成金のふたつが同程度の比重で存在しているため、前者を大きく縮小させるべきと考える。なぜなら、労働移動の推進と相反するからである。後者は、目指すところは正しいが、企業自体には制度を積極的に利用し、労働者を移動させるメリットがほとんどなく、労働移動を十分に活性化できない。そこで、労働移動を行う個人を対象に助成し、労働移動へのインセンティブを高める方向に変更することがより効果的である。

 第三に、雇用の流動化にあたっては、解雇規制についても検討が必要である。現状、非正規労働者の解雇規制は緩く、正規労働者の解雇規制は厳しいという二重の構造が存在する。産業構造の転換と言えるほどの労働移動を促す場合、後者へのアプローチも検討せざるを得ない。また、菅原(2009)は、失業保険の給付額の増加が自発的失業を促進する一方で、有効需要の増加から非自発的失業率を低下させてしまうことを指摘しており、非自発的失業に注目した雇用流動化策はこうした観点からも求められる。失業に対する不安感を各政策で払拭した上、国民的理解を得られた段階で当然議論の対象となるべきであろう。

 第四に、経済的支援以外のアプローチも欠かせない。ハローワークにおける支援・情報提供体制を強化するため、人的・金銭的資源の配分を強化するのは大前提とし、さらには退職金などの制度面の課題も解決しなければならない。多くの企業で正社員に対して導入されている退職金制度は、勤続年数の長い人ほど金額が増えるシステムを採用している場合が多い。社員を引き留めるためと推測できるが、労働移動の推進においては弊害となる。実際に大久保(2018)は「退職金による、長い期間1つの会社で働く意思があり、時間選好率の低い人材を選別する効果は首肯された。」として退職金制度の存在が社員の勤続年数の長期化を招いている可能性を示している。企業風土を変えるという意味でも、勤続年数による格差の規制や、確定拠出年金への移行推進などの政策が望まれる。

 第五に、最低賃金に着目した議論もある。アトキンソン(2019)は、最低賃金を引き上げることで、人件費を賄えない低収益企業の退出を促し、残った高収益企業へと労働者が移動することで労働生産性を向上させることを提案している。効果がある可能性については厚生労働省も認めており[18]検討が求められる。一方で、これはあくまで低収益企業が淘汰された後、労働者が円滑に高収益企業へと移動できる環境の存在が前提条件であり、そのための環境整備がまずは必要と考える。もし、失業不安・生活不安を取り除く政策が不十分なままであれば、この最低賃金の大幅な引き上げ策も国民的理解を得られない。


(2)スキル獲得支援および雇用助成によるミスマッチ解消とスキルの底上げ

 次に、スキルのミスマッチを解消し、雇用を高生産性企業・業種へと移動する一助となるよう、労働市場訓練の強化や学び直しの推進が行われるべきと考える。低生産性企業・業種から高生産性企業・業種への移動には、当然、新たなスキルの習得が必要となる。これが備わっていなければ高生産性企業が積極的に労働者を雇用することはできない。これまで、我が国では長期雇用慣行を背景とし、企業内で教育訓練が行われ、他企業・業種では評価し得ない職能を労働者に与えていた。しかし、非正規労働者が増大するなど慣行は崩れ、企業内における教育訓練は期待できなくなっている。このように、企業内の教育訓練への依存は労働移動の妨げとなる。そのため、企業内の教育訓練に頼らず、スキルを習得する新たな場が必要と言える。スウェーデンやデンマークでは外部労働市場訓練や学び直しの制度が整備されている(Ⅳ-1,2参照)。これにならい、労働市場訓練を大幅に整備することを提案する。

 現状は、政府が実施する労働市場訓練の内容はものづくり中心であり、変わりゆく社会のニーズに合わせたものとは到底言えない。規模も小さく、公的機関が行ういわゆる「はこもの訓練」が中心の我が国では、デンマークの例で明らかになっている(Ⅳ-2参照)ように十分な効果は見込めない。そこで、民間を十分に活用することが重要だ。ハローワークとの相談を踏まえつつ、ある程度自由に失業者や希望者が民間の訓練機関を選べる環境を作り、競争を生じさせ、社会のニーズにあった訓練環境を作ることが求められる。政府はそこに、例えば再就職後に賃金が上がった場合に、訓練を実施した民間事業者に対して助成を行うなど、インセンティブを与える政策を加えるだけでよい。こうすることで、訓練のキャパシティを確保しながら、訓練の内容も多様化し、社会のニーズに合うものとなり、質を担保することが可能である。一方で、労働市場訓練における民間の活用は、訓練実施機関の多様化を招き、利用者にとってはわかりにくいものとなる。そこで、失業者や希望者を適切な訓練へと結びつけられるよう、ハローワークなど職業紹介・就労支援機関が一元的に失業保険や訓練、職業紹介への接続を行う「入り口の一本化」が求められる。また、デンマークの事例(Ⅳ-2参照)では、基本的な社会能力が不足し、労働市場訓練の効果が見込めない者に対するアプローチが課題となっていた。そうした方々に対しては労働市場訓練とは別に、社会福祉と連携しながら基本的な社会能力を養成し、社会に包摂して行く取り組みも必要となる。

 学び直しの体制整備も重要となる。社会で求められるスキルは常に変化する。しかし、我が国では一度教育の課程を経たら、そのままスキルを更新することはほとんどないのである。これについては労働市場訓練の充実によってある程度解決できるが、特に専門的なスキルについては、労働市場訓練だけでは心もとないのも事実であり、学び直しの体制整備も求められる。体制整備においては、経済的な負担を取り除く制度や、学び直しのための休暇制度なども必要不可欠ではあるが、スウェーデンで行われているような、学び直しの成果が就労やキャリアアップに直結する制度(Ⅳ-1参照)も必要である。例えば、教育機関が提供したスキルを資格の形で見える化すること等が求められる。

 教育内容の見直しも急務である。スウェーデンやデンマークでは高等教育における教育内容が職業と大変密接である(Ⅳ-1,2参照)。一方、我が国の高等教育における専門教育は職業との結び付きが弱く、学び直しがその先の就労やキャリアアップに繋がらなくなってしまう可能性がある。また、基礎的な教育に関する問題も指摘されている。アトキンソン(2020)は各国と比べて我が国の大卒者のスキルが低い要因としてクリティカルシンキングの能力不足を指摘している。実際にWorld Economic Forum(2019)によると、我が国におけるクリティカルシンキング教育の充実度は世界87位と大変遅れており、スキル面での最大の課題とされている。教育内容についても課題に対応した抜本的な見直しが必要と言える。なお、労働市場訓練や学び直しの推進など、企業外における教育訓練の拡充の取り組みは、非正規労働者といった企業内での教育訓練が望めない労働者のスキルを断続的に高めて行くという課題への、ひとつの対応策ともなりうる。そうした観点も含めた制度設計が望まれる。

 スウェーデンの雇用助成制度(Ⅳ-1参照)も参考になる。長期失業者に加え、非正規労働者や低生産・低賃金で働く労働者を雇用した高生産性企業に対して、その新規雇用にあたってかかるコストを助成する制度を整備することで、雇用に向けたインセンティブを確保するのである。要するに、労働市場訓練などのように労働者側のスキル向上によってスキルのミスマッチを防止するのではなく、雇用コストを引き下げることでスキルのミスマッチを防止する取り組みである。我が国の労働移動支援助成金制度では、現在、一定の成長性が認められる企業が困難を抱える企業から離職した者を雇い入れた場合に、支給対象者1人につき80万円を支給する優遇助成を行い、高生産性企業の雇用吸収力拡大をはかっている。よって、金額や既存雇用との置き換えを防止する措置については議論が必要ではあるが、これを応用・拡大する形で実現することが適当と考える。

 一方で、我が国特有の、雇用を企業に固定する形の労働形態を維持しながら成長産業への労働移動を推し進める方法も提案されている。小林(2017)は我が国における賃金上昇を伴う職種転換の多くが企業内職種転換という形で発生し、外部労働市場ではむしろ賃金低下を伴う職種転換の方が多く発生している点を指摘。その上で、雇用調整助成金に非定型的な知識集約労働分野への異動による雇用維持を優遇する形でのインセンティブ付けを提案している。これについては確かに我が国の雇用慣行と親和的であり、一定程度推進されることが望ましいかもしれない。しかし、これは複数の職種を同一企業内に抱える、規模の大きな企業においてのみ成立するものである。我が国における労働者の7割は現状、中小企業に雇用されており[19]、全体的な効果を得るには労働市場訓練などの質を高めるなど、外部労働市場の課題を解決しながら、これを利用すべきである。


(3)起業支援による高生産性企業の雇用吸収力拡大

 高生産性企業・業種の雇用吸収力拡大という点では、起業の促進も求められる。内閣府は平成27年の年次財政報告において、高収益企業のうち雇用者数で高い伸び率を示した企業の多くは、上場後間もない成長段階の企業だったとしている。このように、新規参入の企業は、例外はあれ、社会のニーズに合った業種をとりやすく、成長段階においては強い雇用吸収力を持つ。そのため、起業が活発であれば、高生産性企業・業種の雇用吸収力は拡大するのである。しかし、現状、我が国では欧米各国と比べて開業率が低く、起業は低調である。日本政策金融公庫の調査[20]によると、「起業に関心がある」とする起業関心層は16%にとどまり、起業が低調な原因となっている。岸本他(2016)は、こうした起業意識の低さの要因として、①起業を知る機会が少ない、②事業に失敗したときの「人生のコスト」が大きい、③事業資金、ノウハウや人脈が足りない、④金銭的・非金銭的な見返りが少ない、という4つをあげた上で、①起業家教育や実学教育の積極的な取り入れ、②セーフティーネットの拡充、③不動産担保に頼る融資からの脱却とクラウド・ファンディングの普及支援、④起業支援窓口の一元化や起業イメージアップ戦略などを実施するべきとしている。実学教育の積極的な取り入れやセーフティーネットの拡充についてはこれまで提案してきた通りだが、加えて、小中高校における起業体験なども含めた起業家教育の推進や、クラウド・ファンディングを利用するに当たってのプロジェクト設計およびプロモーションの支援、支援窓口の一元化、起業促進に向けた広報活動なども積極的に行うべきである。

 一方で、中小規模の事業者を過度に保護する政策を行ってしまえば、高収益をあげられなかった新規事業者の退出を促すことができず、低生産性企業も多く残してしまう。これでは本末転倒であり、我が国における企業保護のあり方も同時に検証が必要であろう。


(4)職業紹介・就労支援機能の強化による確実な就労への結び付け

 高生産性企業・業種への労働移動促進にあたっては、職業紹介・就労支援の機能強化も重要である。不況期には教育訓練などに失業者を吸収する必要があるが、回復期においては十分なスキルを得た者から、迅速に就労へと結びつける必要がある。ここまでセットで強化されて初めて高生産性企業・業種への労働移動が可能となるのであり、職業紹介・就労支援の機能強化が求められる。これについて、阿部(2016)はドイツで実施されている「職業紹介バウチャー制度」の導入を提案している。これは、職業紹介・就労支援機能を政府だけでなく民間事業者にも担ってもらい、官民や民間同士の競争を促すことで機能強化を進める方策である。具体的には、政府が一定の水準を満たした求職者に対してバウチャーを渡し、求職者がそのバウチャーを用いて自らが選んだ民間か公共の職業紹介所を利用する制度である。職業紹介・就労支援の成果にあわせて報酬が政府から職業紹介・就労支援事業者に支払われるシステムとなっており、これによって職業紹介・就労支援機能の強化が競争的に図られるようになっている。

 これは、確かに政府が独占的に職業紹介・就労支援を実施するよりも、機能強化のインセンティブ付けを有効に行いうる制度と言える。しかし、課題もある。橋本(2014)は、もともと求職に有利な人的集団が利用し、成立した就業関係が短期間で終了する傾向にあるとしている。職業紹介・就労支援事業者が就労実績ばかりを気にする結果、就労後までを考えない質の低い職業紹介・就労支援が行われている可能性がある。こうなると、職業紹介・就労支援機能の強化という方向性と逆行してしまう。さらには、職業紹介・就労支援の実施機関が分散することの懸念もある。求人情報が分散したり、利用に対する複雑さが生じることの懸念である。

 こうした課題に対しては、例えば、就労実績だけでなく、就労後に前職よりも賃金が上昇したか等、勤務状況に応じた報酬制度を導入する方法が考えられる。また、職業紹介・就労支援を利用するに当たっての入り口をハローワークに固定し、ハローワークは各種手当てや教育訓練との接続や職業紹介所への接続を実施。その後の業務を民間事業者が実施する形をとることで複雑さを解消する試みも考えられる。加えて、ハローワークがもつ求人情報等を民間事業者に公開して情報の分散を防ぐ取り組みも有効かもしれない。このように、様々な改良を加えながら、日本型職業紹介バウチャー制度の導入も検討するべきであろう。


(5)まとめ

 以上、我が国が取るべき政策の方向性を提案した。基本的にはスウェーデンやデンマークの政策を参考に、失業への不安を払拭し、自発的・非自発的失業を誘導し、質の高い教育訓練の制度整備や雇用助成によりスキルの底上げとスキルのミスマッチの解消を促し、起業支援や職業紹介・就労支援等も踏まえながら高生産性企業・業種への労働移動を促進しようとするものである。こうした一連の取り組みが、一体的に機能することで、全体的な労働生産性の向上に向けた一助となるのではないだろうか。そして、結果として経済成長を促し、ひとり当たりの所得が向上し、社会保障の持続可能性も担保されることになると思われる。

 ただし、ここでも注意が必要である。現状の社会保険制度は主に労働者の所得に対して、保険料を定め、労使折半で負担する構造が基本となっている。そのため、この社会保険料に依存している現状では、労働生産性が増加しても企業が十分に賃金を向上させなかった場合、社会保障財源を思ったようには確保できない懸念がある。基本的には労働生産性の向上と賃金の上昇には相関関係が認められており[21]大きな問題とはならないかもしれないが、今後もそうあり続ける確たる保証はない。場合によっては企業の利益に対する課税によって新たに生じた財源を確保する方が効果的である。現状の社会保険型の社会保障制度を継続するのか、あるいはスウェーデンやデンマークのように、税財源を中心とする社会保障制度へと移行するのか、社会保険料の現役世代負担の重さが問題となりつつある今、併せて検討するべきと思われる。


Ⅵ おわりに

 昨今、社会保障の持続可能性に関する議論が生じたとき、その論点は「いかに社会保障の歳出を減らすか」という部分に終始することが多いように感じる。それも大事な議論ではあるが、同時に「いかに歳入を増やすか」という議論もあって然るべきであろう。そこには「これ以上の経済成長は不可能だ」という、国民全体の一般常識のように浸透した諦めや絶望があるように思えてならない。しかし、本稿ではまだ我が国に希望ののびしろがあることを示した。これまで救貧のための手段とされてきた社会保障・雇用政策が経済成長の手段となりうるのである。

 本稿ではまず、社会保障の持続可能性のために、労働生産性向上による経済成長が必要であることを示した。そして、労働生産性向上にあたっては雇用の流動化、高生産性企業・業種への労働移動、非定着型の労働者のスキルの向上という3つの課題への対処が必要であるとした上で、我が国における現行政策の問題点や、各国の政策とその効果や課題を参考に、解決策を提案した。その内容は、スウェーデンやデンマークの政策に沿った形で、失業への不安解消によって雇用の固定をはがし、教育・訓練の拡充によって能力を高め、これによるスキルのミスマッチの解消や職業紹介・就労支援機能の強化、起業支援等によって生産性の高い企業・業種へと移動させ、全体の労働生産性を高めるものである。これら政策は、概ね現行政策を応用・発展させたものであるが、量的に大幅に拡大されており、これまでの雇用慣行を大きく根底から覆すものとなっている。そのため、実施にあたっては財源問題もさることながら、どのように国民的理解を得るのかも重要な課題となるため、慎重な検討が今後も必要になると言える。ただし、状況は日々悪化しているのであり緊急性は高い。国民全体に広がった諦めに対して希望を示し、丁寧に説明をすれば、理解を得ることは可能であると信じている。


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脚注
[1] 財務省(2020)『所得・消費・資産等の税収構成比の推移』(https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/condition/a03.htm#a03:最終閲覧日2020年10月20日)
[2] 厚生労働省(2017)『社会保障給付費の推移』(https://www.mhlw.go.jp/content/000651378.pdf:最終閲覧日2020年10月20日)
[3] 厚生労働省(2019)『今後の社会保障改革について―2040年を見据えて―』(https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000474989.pdf:最終閲覧日2021年1月6日)
[4] 厚生労働省(2020)『令和元年度賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算)』(https://www.mhlw.go.jp/content/000685358.pdf:最終閲覧日2020年11月15日)
[5] 日本生産性本部(2020)『労働生産性の国際比較2020』(https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/report_2020.pdf:最終閲覧日2021年1月5日)
[6] 厚生労働省(2016)『労働経済の分析 平成28年度版』(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/16/16-1.html:最終閲覧日2020年10月20日)
[7] 内閣府(2015)『平成27年度年次経済財政報告』(https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je15/pdf/p02022_1.pdf:最終閲覧日2021年1月13日)
[8] 三井住友銀行(2016)「強まる雇用ミスマッチと労働力の供給制約」『調査月報』7月号、pp.1-7.(https://www.smtb.jp/others/report/economy/51_1.pdf:最終閲覧日2021年1月13日)
[9] 星野卓也「成長產業への転職促すには」『読売新聞』2017年5月24日、朝刊、p.11
[10] 厚生労働省(2017)『平成28年度能力開発基本調査』(https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11801500-Shokugyounouryokukaihatsukyoku-Kibansetsubishitsu/0000118619_4.pdf:最終閲覧日2020年12月30日)
[11] 厚生労働省(2019)『平成31年度 雇用・労働分野の助成金のご案内』(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/dl/koyouantei_02.pdf:最終閲覧日2020年12月19日)
[12] 内閣府(2013)「日本再興戦略-Japan is BACK-」(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/saikou_jpn.pdf:最終閲覧日2021年1月5日)
[13] 労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会(2019)『雇用保険二事業について』(https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000571986.pdf:最終閲覧日2020年9月20日)
[14] 厚生労働省(2020)『求職者支援制度の概要』(https://www.mhlw.go.jp/content/000645028.pdf:最終閲覧日2021年1月5日)
[15] 厚生労働省(2018)「欧州地域にみる厚生労働施策の概要と最近の動向(スウェーデン)」『2018年海外情勢報告』pp.137-151.(https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/19/dl/t3-05.pdf:最終閲覧日2019年6月28日)
[16] 松原麻依「解雇規制緩和、反対派が賛成派の2倍~労働市場活性化や企業の新陳代謝に期待の声も」『Business Journal』2014年3月16日0時5分(https://biz-journal.jp/2014/03/post_4389.html:最終閲覧日2021年1月13日)
[17] 厚生労働省(2016)『平成27年 転職者実態調査』(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/6-18c-h27-2-04.pdf:最終閲覧日2021年1月13日)
[18] 厚生労働省、前掲『労働経済の分析 平成28年度版』pp.107-109.
[19] 中小企業庁(2019)『中小企業白書 2019年版』(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf:最終閲覧日2021年1月13日)
[20] 日本政策金融公庫(2019)『起業と起業意識に関する調査』(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/topics_190117_1.pdf:最終閲覧日2021年1月13日)
[21] 財務省(2019)『企業規模と賃金、労働生産性の関係に関する分析』(https://www.mof.go.jp/pri/research/discussion_paper/ron319.pdf:最終閲覧日2021年1月13日)

あとがき

 長い文章でしたが、読んでいただきありがとうございました。
 さて、この論文を完成させて以降、多くの社会的変化がありました。そのひとつがロシアによるウクライナ侵攻とそれによる資源価格の高騰。ふたつ目が、米国FRBのインフレ抑制策に伴う急激な円安(円暴落)です。そしてこのダブルパンチがもたらした物価高は私たちの生活を苦しめています。そして、これらの現象は、日本経済の脆弱性を露呈することとなりました。しかし、その対策として行われていることは、あまりにも小手先すぎるのではないでしょうか。強い日本経済を作るには社会構造そのものを改革する政策が必要不可欠だと私は思うのですが。
 ただ、社会人になってからあまり時間が経っているわけではありませんが、企業側の視点に立って見たときに、この論文にも不十分な点があるなと感じています。民間の力をまだまだ過小評価しているなと思うわけです。我が国では昨今、政府というよりも民間企業が非常に大きな力を持つに至っています。そこには多くの人的、技術的資源が蓄積されています。これをもっと活用して良いと思うのです。
 例えば、失業保険について、この運用を民間の企業集団に一部お願いする方法があるでしょう。あるいは労働移動について、投資が成長産業に集中する仕組みを強化する方法も考えられます。それぞれ、課題もありますが、検討に値します。今後こうした方策についても研究できたらなと考えているところです。

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