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読書記録:りゅうおうのおしごと!17 (GA文庫) 著 白鳥士郎

【逆境を乗り越える為に、哀しき運命を押しのけろ】


【あらすじ】
「久しぶり……銀子ちゃん」

八一と銀子、再会。

「プロ棋士になります」

就位式でそう宣言したあいは、女流枠で出場した公式戦でプロを相手に連勝を続ける。
しかし勝てば勝つほど周囲から人は離れていき……。

一方、世界最強のスーパーコンピューターが計算した百年後の将棋を目にし、八一は絶望する。

それでも未来の将棋に立ち向かう八一に明かされる、もう一つの秘密。

それは――

「……久しぶり。銀子ちゃん」

激闘に次ぐ激闘! 悲しき運命に直面した時、人はそれを受け容れるのか、それとも乗り越えるのか!?

未来に挑む棋士の姿を描く17巻!!

「運命よ、そこをどけ――この飛車が通る!!」

あらすじ要約

プロ棋士になる宣言をしたあいは勝つ程に孤独になる中、世界最強のAI、淡路と八一が立ち向かう中で明かされる未来の物語。


東大に入るよりも狭き門であるプロ棋士の世界。
そこに大言壮語したあいは孤独となる。
より孤独に、より深淵へ。
女流枠で出場した公式戦でプロを相手に連勝を続けるものの、目指す道の厳しさを痛感してしまう。
人間性をアンインストールする事で、より強くなっていく側面と。
人との繋がり、これまでの歴史という、ある種の人間性を獲得する為の矛盾した戦い。

求められるのは相手の心を打ち負かすのでなく、強くする将棋。
将棋の「真理」に迫るには、自分だけでなく強い相手が必要だという事。

一方で最強AIである淡路に散々と蹂躙される八一。
未来からの使者が齎す絶望。
そして、過去の因習の打破に対するぎしぎしとした軋轢。
銀子の名残りを持つAIと対局する中で、見える次の課題。
自己学習型の機械が最強であり、自己学習型AIが最恐である。
自ら創造した物に滅ぼされる将棋業界の暗雲立ち込める未来。

演算能力を極限まで高めて行くと、全てが予め「決定事項」となり果て、戦いそのものが無意味化してしまう。
将棋を極める事は、将棋というゲームの全解析を終えてしまう事であり。
その全貌を知ってしまえば、最早、将棋人生に自らでピリオドを打つ事と同義で。

そして、銀子の抱えた過酷な運命を知る。
だが、運命だと諦めてしまえば、そこで人生は詰んでしまう。
運命を切り拓く者だけが、最後に心から笑えるのだと。

各々が決意と覚悟を携えて。
100年後の将棋を見据えながら、AIを駆使して将棋の未来を覗く八一と天衣。
将棋の「歴史」は戦いを通して、紡がれて受け継がれていく。
自分の中に流れる将棋の歴史を自覚した者だけが生き残る。

恐らく、AIが作る将棋の未来は、焦土のような荒涼とした冷たい世界。

大切なのは、AIのように完全に計算された勝利ではなく、人間が将棋を指す意味を求め続けて、己の全身全霊を懸ける事。
きっと、不完全な人間同士が指し合うからこそ、そこに滾るようなドラマや歴史が宿るのだ。

たとえ、コンピューターによって、将棋が完全に解明されたとしても、人が生み出した時代遅れの戦法にこそ、ロマンが生まれる。

人間が指す将棋だからこそ、その指し手に棋士の熱い生き様が垣間見えて、人々の心をどうしよもない程に揺さぶり、未来への希望を灯してくれる。

しかし、決定的に対照的な道を歩み始めたあいと天衣はどこを目指すのかは今はまだ分からない。

逆境でこそ光輝く彼女らに運命は微笑むのだろうか?










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