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読書記録:男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 2. じゃあ、ほんとにアタシと付き合っちゃう? (電撃文庫) 著七菜 なな

【永遠の友情を誓いあった仲だから君とは対等でいたい】


【あらすじ】
ある男女が永遠の友情を誓い合い、2年半の歳月が過ぎた頃。
二人は今さら、互いへの恋心に気づき始めていた……!
散々積み上げてきた黒歴史から目を背け、「恋愛って何?」な態度を装い続ける悠宇と日葵、だったのだが――。

「悠宇。中間試験、全部白紙で出しちゃったの……?」

降って湧いた悠宇、退学の危機!
加えて悠宇の初恋相手・凛音の「一番になるね」宣言に、学校での“you”の身バレと、そこから巻き起こる恋するリア充たちのフラワーアクセブームが、二人の心をさらなる混沌へ突き落とす!!

果たして恋と向き合った日葵は〈真の親友〉へ前進なるか?

Amazon引用

追試対策やアクセ作りの中で、友情に変化が生じる物語。


友人としての期間が長かった故に、自分の恋心に蓋をし続けた悠宇と日葵。
しかし、互いの歩み寄りによってもう一歩先の関係を築いていきたい。
二人の関係が次第に変化する中、追試やアクセブランドの身バレといった困難が立ち塞がる。
更に、凛音のアプローチが過激になり、考える事が山積みの混沌へと陥るが。
自分の好きな物を続ける原点を顧みる事で、情熱が再熱する。
真の親友を目指す為に。

友情ではなく恋を選ぶ。
しかし、果たしてそれは良い物なのか、それとも悪い物なのか。
友情に恋は必要か、はたまた不要か。
だが、確かに変化は兆しを見せる。
そして変わり始めてしまったのであれば、もはや止まる事は許されない。

怒涛の如く巻き起こる波乱の中、表面化するのは親友同士でありながらも、対等ではない悠宇と日葵の歪な関係性。
並び立つのではなく、どちらかがどちらかに、まるで依存するかのように寄りかかって、出来てしまった今の関係性。

隣にいるけれど特別ではない、だけど隣は譲れない。
しかし、今。
その関係に否を唱える強力なライバルはすぐ傍にいる。
自分の好きな悠宇であって欲しいと願う日葵とは違い、ありのまま全てを受け止めると宣言する凛音が。
心を折れた悠宇にかけたその言葉もその想いも、逃げではなく、立ち向かう為の想い。
そんな姿勢に感化された日葵が見出す運命共同体として生き方。
彼女が願って選ぶ、道に迷う悠宇の支え方と受け止め方。

恋心が錯綜する波乱の幕開けを乗り切る中で、美しくも清かざる物である、人の心という物を自覚する。
何よりも、自分の純情の汚さと浅ましさを認識させられる。
相思相愛の仲ながらも、お互いが一番と言って憚らない癖に、「親友」という建前は外せない。
それは本当の気持ちと向き合う事を恐れたが故の予防線。
悠宇は、夢として目標として努力し積み上げてきたフラワーアクセサリーのデザイナーとしての道を自ら捨て去る覚悟をしてしまうほどに、日葵を最優先して。

しかし、夢を追いかけている悠宇を魅力的に感じた日葵は、自分と妥協するように付き合って、夢を諦めて欲しくない。
情熱に惹かれたから、熱量を認めてくれたから。
嘘に逃げず、痛みから逃げず、欲しい物の為に対等な友情を結び直していく。
そんな二人の関係は美しく写るが、人である以上、欲望や邪念も当然持っていて、その醜さ故に一朝一夕に片付かない問題が乱立する。

そんな問題達を、他人の恋愛を見て学んで、暗黒面に起因するといえる、座礁からの脱出の仕方を模索していく。
恋にうつつを抜かすのではなく、自分の夢の初期衝動と原点回帰に立ち返る中で、自分は作りたいから創作するのか、他人を喜ばせたいから作るのかを考え始めるようになる。

真の親友である為には、まだ足りない。
両想いになるにはまだ遠い。
もどかしい関係の中、悠宇を襲うのはいずれは訪れる筈だったクリエイターとしての試練。
自らの好きを否定されて、どうしよもなく傷つけられた時、何を思って、どう進むのかという大切な過程を見出す為の関門。

悠宇がクリエイターとしての試練に見舞われる中、日葵もまた自分の姿勢を見つめ直す。
目標に向かって、頑張ったり、折れたり、立ち直ったりを繰り返してようやく掴んだ物。
夢と恋に散々振り回されてすれ違ってきた二人だったが。
そんな悠宇に凛音が、自分の本心を打ち明ける事で、彼に素直になるように促し、悠宇と日葵はようやく親友という建前抜きで、本音でぶつかり合う。
もう形にこだわって、拗らせていく面倒くさい関係は終わりにする。

お互いへの想いに蓋をして「親友」という楔に固執していたのが間違いだった。
心に棘が刺さり、罅の入った二人の関係に、一つの終止符が打たれる。
対等に近づけた悠宇と日葵の関係。
そして、悠宇はクリエイターとして、己のエゴを貫き通す覚悟を手にする。
もう心ない批判を恐れない。
自分を愛してくれる人だけを数えて生きていく。

恋心は綺麗なだけじゃない。
時に呪いでもあり、醜い呪縛だ。
けれど、どんな醜い種でも、大輪の花を咲かせる事だって出来るから。
美しいだけの物なんてない。
しかし、人は綺麗な物に目を奪われるし、それだけを追い求めたいと希う生き物でもある。
強い光には濃い影が伴う。
それを理解して、共に乗り越えていく決意を固めた。
雨降って地固まるように、散々苦しめられた葛藤を受け入れて、飾らない等身大の自分と向き合う事が出来た。
こうしてぶつかり合っても、何度でも支え合えば良い。
支えるのは凛音でも出来る。
けれど、ぶつかり合って、お互いを立ち直らせるのは、日葵だけにしか出来ない。

そうやって繰り返し、芽生えた絆は危機に直面するほどに強く深くなる。
恋と友情と夢。
青春の瑞々しい日々の中、思春期その物の感情をぶつけ合って、お互いを成長させていく悠宇と日葵。
そんな二人を複雑な表情で眺める凛音の気持ち。

美しい物を輝かせる為の努力を邁進する彼らは、親友を越えた恋人同士になれるのだろうか?



















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