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短編小説

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記事一覧

ニッポンてところは なかなかステキ (1)

『うちの敷地内で、怪獣が死んでいるんですけど』 【概要】  父親の唐突な思いつきで、アイ…

ニッポンてところは なかなかステキ (2)

          *  アイルランド暮らしのころ、ニッポンについての知識はほぼ皆無だっ…

ニッポンてところは なかなかステキ (3)

          * 「よく見れば可愛い顔をしているでしょう? 目なんかクリクリしてい…

ニッポンてところは なかなかステキ (4)

          *  キョウトにきた!  新幹線に乗ってキョウトにやってきた!  妙な…

ニッポンてところは なかなかステキ (+α)

(本作は『ニッポンてところは なかなかステキ』4の続きです)           *  動…

おはよう、アカリ(1)

 チック、タック。  チック、タック。  頭頂を二度叩かれた目覚まし時計が、うつぶせになり…

おはよう、アカリ(2)

          *  あぁああ。  なぜわからなかった?  どうして気づけなかったんだろう。  帰宅するなりベッドへ倒れ込んだきみは、額に手を添えて控えめな唸り声をあげた。眉間に皺が寄っている。すごく具合が悪そうだ。ひょっとすると熱があるのかもしれない。急いできみへ近づいて、顔を覗き込む。 ( !?)  大丈夫?――と尋ねる前に、予想外の〝微笑み〟が返ってきた。  嬉しいけど、ダメだよ。無理しないで。寝ていて。身体を起こさないで。横になったまま楽な姿勢で――という願

お別れの会を終えて (1)

『その探偵は、対象をひとめ見ただけで、犯人であるか否かを言いあてる』 【概要】  ロック…

お別れの会を終えて (2)

          *  へぇえ。そうなんだ?  そういうつもりだったんだ?  いいよ。別…

お別れの会を終えて (3)

          *  頭をあげて。  お願いだから、そんなことしないでよ。  みっとも…

お別れの会を終えて (4)

          *  電話をかけてきても、もうでないから。  メッセージに返信もしな…

古書堂の殺人 (1)

〝魂〟と呼ぶのが相応しいか。  それとも〝心〟であろうか。  かたちも、色も、質量すら有し…

古書堂の殺人 (2)

 出入り口の扉を開けると黄ばんだ背表紙の本の列に圧倒され、遅れて下腹あたりを刺激する心地…

古書堂の殺人 (3)

 乾燥した冷たい空気が流れこんできて、首筋を撫で、無防備な襟首(えりくび)から服の中へと入ってくる。遠くから子供の声。かわらず目をさす強烈な可視光。串間は、見えない手で勢いよく背中を押されたようにして路上へと躍りでる。  通りの左——五十メートルほど離れた四つ角で、スーツ姿の男が手をあげていた。左内だった。左内ともうひとり——体躯のいい私服警官がダッフルコートを着た俯き加減の小柄な男を間に挟んでおり、挟まれた男はサバイバルナイフ所持で拘束された瀧川ソウヘイだと推測できた。瀧川