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世界の終わり #1-8 プレミア

「ぼくらが欲しているのは、峰岸さんが収集しているフィギュアです。フィギュアを渡してくれれば、ほかになにも望みません」
 眉根を寄せている峰岸氏へ向けて、ぼくはできるだけ優しく丁寧な口調で語りかけた。
「白石がいったとおりだ。フィギュアを差しだせば退散する。ここをでたあと、あんたが屋敷にいることを誰かに告げ口するつもりはないから、その点は安心しな」と荒木がつけたす。
 なるほど。峰岸氏は屋敷に潜んでいることをうしろめたく思っているに違いないから、同意を得るには効果がありそうなひとことだ。
 ただし、峰岸氏が家族との生活よりも、集めたフィギュアのほうに重きを置いていたら、話は別だが。
「黙っていてくれるのか?」峰岸氏は訊いてきた。「わたしとシンのことを、誰にも話さないと本当に約束してくれるのか」
「約束する」
「フィギュアを渡しさえすれば、いいんだな?」
「あぁ。そもそも、あんたが屋敷に残っているなんて知らなかったんだ。あんたもそうだろうが、おれたちだって驚いたんだよ。殴ったことは悪かったと思ってる。ただし、先に殴り掛かってきたのは、あんたのほうだからな」
「……あぁ」バツが悪そうに、峰岸氏は顔をそむけた。
「あんたがいま、一番大事にしているのは家族との生活だよな? おれたちは、その生活を奪う気なんてない。欲しいのは玩具。フィギュアが欲しいだけだ」
 荒木は後退し、峰岸氏と距離を置いた。
 静寂が降りてくる。
 ぼくは黙って両者の動きを観察した。
 峰岸氏は押し黙っているが、心の中でなにを考え、どのような決断をくだそうとしているのかわかるような気がした。いや、わかる。ハッキリとわかる。峰岸氏の胸の内は手に取るようにわかっている。
 そしてぼくが推測したとおり、峰岸氏は望む答えを口にしてくれた。
「わかった。案内しよう――保管部屋に」
 訪問一件目。
 目的は無事に果たせそうだ。

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