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多様な価値観が飛び交う国際色豊かなスタートアップでのチーム・ビルディング: Empath Data Scientist Sara Akaoka Badssiさんインタビュー

Empathは2017年10月31日にスマートメディカルという医療モールを展開するスタートアップのICTセルフケア事業部から独立しました。スマートメディカル時代から、多国籍で様々な背景を持つメンバーが集う、インターナショナルな日本発のスタートアップを目指していた中、突如フランスから「Empathに働くことに興味がある」と1通のメールが。そのメールを送ったのは、現在Empathでデータ・サイエンティストとして活躍する、Empath初の海外メンバーであるSaraさんです。Saraさんは入社後、彼女の専門領域であるデータ・サイエンスの業務に留まらず、海外企業との打ち合わせ、海外展示会での出展などのプロモーションなどの多岐にわたる業務にも携わってくれました。そのような中でも、SaraさんがTech in Asia Singapore2018のピッチ・コンテストに日本のスタートアップで初優勝したことを皮切りに、Empathの海外展開が急速に進みました。

今回紹介するのは、Empath初の海外メンバーであるデータ・サイエンティストのSaraさんです。モロッコで生まれ、大学進学時に渡仏し、フランスにおける高等教育のグランゼコールであるグルノーブル工科大学の応用数学、理論計算機科学、計算機科学学部(ENSIMAG)に入学、卒業後同大学院に進学しました。大学院在学中は、日本の京都大学への留学も経験しています。Saraさんは、Empathの前身であるスマートメディカル時代からデータ・サイエンティストとして参画。Empathに新しく入社するメンバーのチーム・ビルディングにも積極的に関わってくれて、みんなに声掛けをしてくれています。また、プライベートではダウン症の子どもたちや訳があって両親と離れて暮らす子どもたちへのサポートを行うボランティアの活動をしています。そんなSaraさんに今回インタビューをさせてもらいました。

1.人とロボットの無機質なコミュニケーションの脱却: Affective Computingとの出会い

-Saraさん!インタビューの時間をいただき、ありがとうございます!早速ですが、Saraさんのこれまでの経歴について教えてください!

幼い頃から得意であった数学を武器にして、コンピュータ・サイエンスや数学について学べる大学への進学を考えていたところ、フランスの国立グルノーブル工科大学のENISMAG*に合格しそのまま大学院に進学しました。グルノーブル工科大学在学中に京都大学へ留学し、情報学研究科知能情報学専攻の西田豊明教授の研究室で1年間学びました。もともとコンピュータ・サイエンスや数学を学ぶ中で、人工知能に興味があったのですが、人間がコードで指令を出してコンピュータがただ指令にのみ反応して応答するような無機質なコミュニケーションのやり取りには違和感を持っていました。せっかくコミュニケーションを取るのであれば、人間やロボット関係なく楽しくコミュニケーションができる世界になればいいのにと漠然と考えいたんです。そのように考えていた時に、西田先生が提唱する「楽しくて有益な会話ができる人工システム(ロボットやコンピュータ)を作り出す」という価値観に触れ、Affective Computing(感情コンピューティング)**という世界に出会ったのです。Affective Computingは、まさに私が実現していきたいと考えていた世界観だったんです。

*Saraさんが卒業したグルノーブル工科大学は、フランスの高等教育機関であるグランゼコールに認定されている。Saraさんが在籍していたENISMAGはフランスの中でもトップクラスのコンピュータ・サイエンスや応用数学の教育機関だ。 (Angie, Power (2003). France's educational elite. The Telegraph. https://www.telegraph.co.uk/expat/4190728/Frances-educational-elite.html (accessed 2020-03-24).

**1995年にマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボのロザリンド・ピカード教授が提唱した感情とコンピューティングに関連する分野 (Rosalind, Picard (1995). Affective Computing. MIT Media Laboratory Perceptual Computing Section Technical Report No321. https://vismod.media.mit.edu/pub/tech-reports/TR-321.pdf (accessed 2020-03-24).                                

-そんな出会いがあったんですね!1年日本に留学したことで、Saraさんが実現したい世界が見えたんですね。留学を終えて、フランスに帰国した後はどんなことに取り組んでいたんですか?

京都大学の留学終了後は、フランスに戻って金融系の会社でインターンをしていました。金融系の会社でのインターンをしていた理由は、数字を扱うし自分の得意分野が活かせるのではないかと考えたためです。しかし実際にインターンをしてみると、私自身が京都大学留学前に違和感を持っていたコンピュータに対しての無機質なコミュニケーションを取っていることに気づきました。このことがきっかけで、実際に働く環境や業界については慎重に考えないといけないなと改めて思ったんです。人とのコミュニケーションを大切にし、より人に役に立てるような業界で働きたいと思い医療系の分野で自分が役に立てることを模索していました。また、フランスに帰ってから、フランスは好きだけど日本の方がより挑戦できる環境だなと感じていました。というのも留学中は寮に住んでいたこともあって、たくさんの人に助けてもらいながら暮らしていました。なので、日本の会社で働き、一人で暮らすことで、より自立した生活を送ってみたいと思うようになったんです。

Saraさん記事用

写真:Saraさんが日本へ留学していた時の一枚。勉強の合間に同じ研究室の仲間とのコミュニケーションも欠かさなかった。

2.日本の会社における暗黙の「常識」に対する違和感: スタートアップ企業への就職と実際の業務

-日本の会社で働く上で心配だったことはありますか?またどうやってEmpathに出会ったんですか?

ステレオタイプかもしれないですが、日本の有名な大きい企業だと「女性はお茶をくむ」「身を粉にして働いて残業は当たり前」という海外で育ってきた私にとっては驚くようなことがあるというイメージがあったので、そういう職場だと正直働くのは厳しいかなと思っていました。あとは、フランスでインターンをしていた時に、大企業とスタートアップ両方のインターンを経験したのですが、スタートアップの方がメンバ―同士の仲が良く、雰囲気が良いと感じていたので、日本のスタートアップで働いてみたいと思っていました。あとは大学と大学院で学んできたことを活かせて、医療系の分野でいいスタートアップがないかを探していました。当時「French Tech」や「International Startups」というキーワードで2~3週間ほど時間をかけて探していたところ、Empathの前身であるスマートメディカルに出会いました。当時フランスにいたので、メールを送ってSkypeで面接をしてもらえるように頼んだんです。すぐに返事を送ってくれて、Skypeで面接をしてもらい、自分自身の専門領域であるデータ・サイエンスを医療の領域に活かせること、あとは面接時に下地さんと山崎さんと茶圓さんと話したり、他の社員の人柄に触れられたりしたことが決め手となりここで働きたいと思い即決しました。遠隔ではありましたが、みんなの雰囲気が充分に伝わったので即決したことに不安はなかったです。

-突然フランスから連絡が来て、実際に会うことなくSaraさんが入社を即決してくれたので、みんな驚いたと聞いています!(笑) 実際スマートメディカルでは、一番携わりたいと思っていた医療に携わっていたということですが、Empathとして独立してからはコールセンターに注力をし始めましたよね。実際、医療からコールセンターに向けた取り組みに変わることに対する気持ちの変化はあったんですか?

スマートメディカル時代に私が作っていたのはEmpathの感情解析のコア・エンジンでした。そのコア・エンジンを使うことで、医療はもちろん自動車など他の業態でも使っていただけたので、自分が取り組んできたことが貢献できて嬉しかったです。また、データ・サイエンティストという役割ではありますが、海外の展示会でEmpathの技術の紹介をしたり、ピッチ・コンテストに出場したりました。特に2018年に出場した、Tech in Asia Singaporeのピッチ・コンテストでは、初出場なのでとても不安でしたが、なんとか優勝することができ、自分が会社に貢献できているという自信にもつながりました。正直、Empathに独立してからコールセンター領域に注力をすると会社全体で決まった時は、未経験の領域だったので、不安な気持ちもありました。でも、一緒にはたらくEmpathのみんなもコールセンターについて未経験の人も多いし、みんなで業界についての勉強をしながら進めていけているので心強いです。

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写真: シンガポールで開催されたTech in Asia Singapore2018では、初めてのピッチ・コンテスト出場でありながらも見事優勝を飾った。

-コールセンターに注力すると決めたことで、Empath全員が団結して一気に事業が進みましたよね。そんな中で、現在Saraさんが実際に携わっている普段の業務について教えてください。

データ・サイエンティストとして、論文を通してデータ解析に必要な知見を集めたり、音声の特徴量を抽出するためのデータ・クレンジングなどを行ったりしています。単純に音声の特徴量のみの抽出であれば、これまでもやったことがあるのですが、今Empathが取り組んでいる、コールセンターの音声というのは私も初めて挑戦する領域のため、コールセンターの音声の特徴量を抽出するためにはどのような情報や傾向を見ていく必要があるのかについて論じている論文などを読んで、コールセンターと発話・会話のダイナミックスに特化した知見を集めています。そういった知見を集めながら、コールセンターのオペレータさんやお客さんの音声の特徴量の抽出を行っています。ここで抽出した特徴量を使ってオペレータさんとお客さんの発話の評価をするモデルを作っています。データ・サイエンティストってデータを使ってモデルを作ることが仕事なのですが、実際にモデルを作るには、データを集める、データ・クレンジングをする、そして分析をすることが必要なんです。なので、意外とモデル自体を作るよりも、データの解析が時間がかかっているんです。データ・クレンジングについての詳細は、人事領域で注目を集めているピープル・アナリティクスのスタートアップであるパナリット・ジャパンが公開したデータ・クレンジングの記事が参考になります。

3.国際色豊かなスタートアップとして取り組むチーム・ビルディング

-モデルを作ると単純に一言ではいうけど、そのためにはたくさんの準備と努力が必要なんですね。さて、SaraさんはEmpath入社4人目で、前身のスマートメディカル時代からメンバーとして活躍していますが、Empathにメンバーが増えていくなかで、サラさんがEmpathにとって必要だと感じていることはありますか?

Empathのメンバーはみんなとてもやさしいので、時々相手を思いやりすぎて遠慮しがちになって、自分の考えを言えていないのではないかなと感じるときがあります。もちろんそういうメンバーが好きだからこそ、今Empathにいるというのもあるのですが。一人ひとり役割は違うし考え方が違うからこそ、それぞれのメンバーが自分の意見を伝えていき、お互いが歩み寄ることで、より強いチームになれると思っています。

-なるほど!確かにみんなちょっと内気な面もあるメンバーもいるので、最初は意見をまとめて、全員が共通した認識で、実際の業務に落とし込むのが難しい時期もありましたよね!そんな中で、Saraさんがチーム・ビルディングを目的としてボードゲームやダンスゲームをしながら遊ぶ「empath-theme-nights」というSlackチャネルを作ってくれた時、すごく嬉しかったんですよ!このEmpath Theme Nightsをやってみようと思った理由を教えてください!

仕事から離れたところでの活動を通して、他のメンバーとのチーム・ビルディングをしたいと思ったからです。私は仕事中はとても集中していてあまり話さないことも多いのですが、本当は人と話すことが好きだし、友達とボードゲームやNintendo SwithのゲームJust Danceで遊ぶことも好きです。仕事中って各メンバーがそれぞれの業務に携わっているので、頻繁に話すことがなくて少し寂しいなと感じることもあったので、SlackでTheme Nightというチャネルを作ってみたんです。サークルのような形で、時間が合うメンバーとコミュニケーションを取る時間を大切にしています。

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写真:SlackのTheme Night Channelでは、Saraさんが定期的にメンバーを募って、ボードゲームや、ダンスゲームをする企画を立て、Empathのメンバーとのコミュニケーションを取っている。

4.多様な背景や価値観に触れたことで学んだコミュニケーションのあり方

-Empath Theme Nightsは私も何度か参加させてもらいましたが、仕事以外でのその人の素の部分が見えて面白いですよね。ゲームとなるとみんな必死になるし(笑)。社内での活動がすばらしいですが、社外でも何か個人的に取り組んでいることはありますか?

週末にボランティアに参画しています。というのも、私は有難いことに幼いころから家族の支えがあり、自分がやってみたいことに挑戦することができています。一方で、私が実現できてきたことが当たり前でないことも理解しています。高校までモロッコで育ちましたが、モロッコでは学校に行けない人もいたり、働けない状況の人も多くいました。そのような環境で生活していた時、私にできることは少なかったけれど、自分が社会人になって自立した今だからこそ今困っている人の役に立てればという思いがあるので、ボランティア活動を続けています。実際は、ダウン症の子供たちや訳があって両親と暮らせない子供たちへのサポートを行うボランティアに参画しています。ボランティアを通して特に印象的だった出来事があって、最初私は両親と暮らせず施設で育っている子どもたちに配慮して、子どもたちから私の家族についての質問が来た時に、話題を変えて自分が子供の頃の話を避けていたんです。でも子どもたちと接していく中で、それは自分が気にしすぎていただけであり、時間をかけてコミュニケーションを取っていくことで、私自身も遠慮をすることなく自然と子どもたちの話を聞いて、自分が経験してきたことも普段友達に話すように子どもたちに接するようになりました。このことから、相手のことを思って何も言わないのではなく、自ら心を開いて人に接することで、目の前の人とのコミュニケーションをより楽しくできるなと感じたんです。これは、先ほども伝えましたが、Empathで働いているときも同じだと考えていて、自分とは違う価値観を持った人たちとのチーム・ビルディングするにあたって意識していることです。

5.あとがき

フランスからの突然の連絡から、早3年。Saraさんが入社してから、Empathの海外展開が加速化し、海外にゆかりのあるメンバーの入社が増えてきました。それは、Saraさんが専門領域のデータ・サイエンスに留まらずに、自分が貢献できるのであればと海外進出における取組みを進めてくれたからです。また、Empathのメンバーが増えていく中で、チームのコミュニケーションが良くなるようにEmpath Theme Nightsを自主的に主催してくれた背景には、Saraさんが実際にボランティアで自ら体験したことがきっかけとなっているということが今回のインタビューで分かりました。

実際に筆者である私もSaraさんのやさしさに助けてもらったことがあります。入社1カ月後にフランスに出張へ行くことになった時、フランスに行くのが初めてで何も知らない私に、どこのホテルに泊まったらよいか、展示会の会場への行き方、パリの見どころなどを教えてくれました。また、治安の関係上絶対に乗ってはいけない地下鉄の路線を教えてくれて、「パリは街の風景が素晴らしいから歩いて楽しむのがいいよ!」と教えてくれたことを今でも覚えています。そんなやさしいSaraさんだからこそ、利便性を追求したその先に生まれる「人と機械の無機質なコミュニケーション」ではなく、「人間と機械に優劣なく双方が楽しくなるコミュニケーション」を実現する世界が作れるのだと感じました。

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