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『校閲至極』毎日新聞校閲センター(毎日読書メモ(506))

毎日新聞社から届くお知らせメールの中に、毎日新聞校閲センター『校閲至極』(毎日新聞出版)の案内が出ていて、面白そうだったので読んでみた。「サンデー毎日」に連載されている、毎日新聞校閲センター所属の校閲担当の社員さんたちのエッセイ。毎日新聞社では東京と大阪に校閲センターを置いているそうです。「サンデー毎日」の連載は2018年5月に始まり、現在も継続中。毎日新聞のサイトに最近の分が掲載されているけれど、有料会員にならないと全文は読めない。

校閲、と言えば勿論思い出すのは宮木あや子『校閲ガール』(角川文庫)(続編も含め全部読んだのだが、感想文を書いていない時代だったので記録が残っていない…)、そしてちょうど半年前に読んだのは、牟田都子『文にあたる』(亜紀書房)。河野悦子は出版社の校閲部の社員であり、牟田都子さんはフリーの校閲者として、主に文芸関連の単行本を校閲されている。
そして今回読んだ『校閲至極』は、新聞記事の校閲である。文章の単位は短い、そしてスピード勝負。そして、事件等のスピード勝負の記事が手を離れ、時間が出来ると、連載コラムとか料理レシピとか、ストックのある文章の校閲をする。1冊の本を統一性をもって校閲するのも大変だが、時間に追われながら、様々なジャンルの記事やコラムを、頭を切り替えながら見ていくのは別の大変さがある。
新聞社で用語や漢字の使い方について統一基準を設けていて(当用漢字以外は基本的にひらがなにする、とか、動詞もここはかな表記で、と決めているものがあったり)、記事内のすべての感じを同じ基準に揃えて提示できているか確認したり、作者が書いた用例が、思い込みによる誤記ではないか、辞書をひいて確認したり。数字の桁が1桁間違っていないか、単位がおかしくないか。
色々なうっかり間違いそうな事例が書かれていて、どれを読んでもなるほどなるほどと思う。カタカナの「ニ」と漢数字の「二」が間違って版組みされていないか。コンピューターかコンピュータか。ウイルスが「ウイスル」になっていないか。品川駅前で起きた事件の現場は品川区ではない可能性が高いことに留意して記事を確認しろとか。ジェンダーへの配慮、方言はどこまで再現できるか、「ベット」ではなく「ベッド」とか。

誤植を見逃せば、次の日にお詫びを出すことになる。毎日が緊張。初歩的な、誰にだってすぐわかるよと思うようなミスも、関係者全員気付かずに活字になってしまったりする(本文中に写真で紹介されていて、これは...と思ったのは高校野球の記事の大文字の見出しで、「劇的サヨサラ」と書かれているもの。これはやっちまった感が強い!)。

担当者によりコラムへのアプローチが違い、それぞれに面白いのだが、どれを読んでも、皆さんが誇りと愛情をもって、校閲の仕事をしていることがひしひしと感じられる。
色々な出版の現場で、硬軟さまざまな文章を、誤謬なく、統率がとれて読みやすいかたちで提示するために頑張っている人がいるのだな、と思うと、何を読んでも心温まる、愛しい気持ちになる。感謝。

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