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詩集:”檄文”

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2006~2009(Digitalize2)
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記事一覧

リボン

     リボン ひらひらとしたリボンを引くと 楽しげな心持になる どこまでも引いていき…

渕 言址
1年前
4

手触り

     手触り マンホールの中をのぞき込む 曲がっている線 血が固まっては融ける―――繰…

渕 言址
1年前
3

檄文

   檄文 詩人たちよ叫べ かつて産業革命の際に 煙を吐き出しながら 冷徹な力で人間たちを…

渕 言址
1年前
2

追加された次元

     追加された次元 天へと帰還する銀の光 その束 白い風車がゆっくりと回転する その…

渕 言址
1年前
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離反

    離反 狂ったことさえ知らぬ指 私はうずくまる 置いてきぼりにされた場所を見回す 総…

渕 言址
1年前
5

微熱

   微熱 安定した核反応が続く――― じりじりと照りつける太陽からの熱線が吸い取られ じ…

渕 言址
1年前
7

水面

   水面 神々が神々となるまでの 気の遠くなるような長い年月――― その遥か遠くから 減衰されて届いた小さな波 揺れ 溶けていた光を析出し 撒き散らす波 その水面に突き刺さる―――音の破片 32bit の像 私の五感を模倣する者が居る 神々の時間を 縮めようとする者が居る 微細な波の頂点のみを渡る 飛び石を伝うように・・・ 光をも超え 置き去りにして Digital by digital. 私は置換される 手をかざしてみる 薄れてゆく五感 消えてゆく生   

あこがれ

   あこがれ    お茶の葉の香り    シューベルトのピアノ・ソナタ    潮騒   …

渕 言址
1年前
5

選択

   選択 無数の小さな抜け穴が その道には用意されている もしくは 無数の分れ道が その…

渕 言址
1年前
5

対象

   対象 それは個人的な帰結である うたかたの 雨の 流れの中にひそかに息づく魚 崇める…

渕 言址
1年前
3

瞑想

   瞑想 私の中に在る電子の雲 潜在的な 不規則な 歩くもの 飛び交うもの かつて触れたこ…

渕 言址
2年前
3

焦燥

   焦燥 広々とした広間で 私は所在無く寝そべっている 暖かな午後が停まっているようだ …

渕 言址
2年前
4

部屋

   部屋 冴え冴えとした月あかりの スレートの屋根に沁み込む 蛍光灯のあかりの ツゲの葉…

渕 言址
2年前
7

眺望

   眺望 ビルの最上階から眺める都市は 電子基盤の上に並べられた回路のように ある規範をもって息づいていた 信号とカーナビと 経済と社会と 法律と――― 電子のように活動するもの 化学反応のように進む再開発 ある部分では腐食するまま 私、という思いが この眺望のどこに潜り込めるのか この回路のどこに生き続けることができるのか 自動的にはめ込まれ 自動的に働かされ 自動的に生かされてゆく―――知らず知らずのうちに 向かい合った鏡の間に立った時のように 無限に映され