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新時代のストップモーションアニメ"JUNK HEAD"

 観た。とんでもないものを、観た。

 永遠に止まっていたnoteでの映画レビューを突発的に再開してしまうほどには興奮している。

 今回、口を取る勢いで大熱弁するのは上映時間101分のSFカルトアニメーション作品"JUNK HEAD"。鑑賞を迷っている方、モルカーでストップモーションという撮影技法に興味が沸いた方(こじつけの誘い文句)今すぐ各映画館へ。劇中に漂い続ける狂気と渦巻く情熱は、大きなスクリーンで目の当たりする事を勧めたい。私が感情のみの文字起こし布教をせずとも、JUNK HEADが多くの人々の心を射抜いていくのは従順承知。が、兎に角最高で最高だったので、自分の為に喋る。いつもそう。

 物語は、超未来が舞台。環境汚染で減少し続ける人類が電脳的に生活を営む異世界SF。地上より遥か奥底、地下の開発を試み人工生命体マリガンを創造するも、自我の暴走による反乱が起こりその作戦は失敗に終わる。その後、遺伝子操作により人類と呼ばれる生き物は永遠の命を手にするが"生殖機能"を失う結果に。で、なんやかんや1600年経過した頃、未知のウイルスも大量発生しちゃって人口の約30%は減少…いっけなーい!滅亡!滅亡!やっぱこれ独自に進化し続けるマリガンに最下層乗っ取られたままだとやばくな〜〜い!?調査員募集して住めば都の地下取り戻して、人間たちの生活守らなきゃまずいっしょ!!GOGO探索スタートじゃん!?というのが大体のあらすじ。聞いたこともない単語とオタクが小難しい話早口でし始めたな。と嫌煙されてしまうのにビビり、後半優しくてお茶目なギャルに頼る。腹が立った人は公式HPに答えそのものが記載されているので、そちらをGOGO探索して下さい。

 まずもう、ストーリー(活字)の時点で最高。地底迷宮、ディストピア、不気味クリーチャー。自分の中の好奇心やときめきを誘発するワードが各所に散りばめられている。サイバーパンクや無類の怪物好きは胸の高鳴りが止まらないだろう。そして、ポスターに目をやると、主人公らしいこの無機物機械はダンス講師と来たもんだ。もう何だそれ。やりたい放題のシャルウィーダンス。そして、畳み掛けるように衝撃の事実も目にする。監督の堀貴秀さんはたった一人、独学でこのアニメの企画を開始したというのだ。その制作期間、なんと7年。7年?何て?ついこの間までピカピカのランドセル背負ってた甥っ子、あっという間に学ランに袖を通すようになってなぁワシも歳とったもんじゃわい…じゃないんだよ。入学して卒業してまた入学するような年月を、これ、堀貴秀という人間が一人で、そう、狂人です。惜しくも、世間が着いて来れない俺たち早過ぎたな現象によりクラウドファンディングも一度失敗している。しかし、その事態に屈する事なく恐ろしい執念と愛で長編アニメとして完全体に仕上げたものが今、日本の映画館で公開されているのだ。もはや、意図的な奇跡。自ら仕組んだ軌跡。鑑賞後に物凄い勢いでこの文章を綴っているのだけど、キーボードに涙がぽとんと落ちた。よく、よく公開まで…という歓喜&感謝の涙がぽとんと。

 そして、ここからは劇中のネタバレを遠慮なしに喋り倒すので、鑑賞前の方は悪しからず。




 続編をお願いします(頭を垂れまくり)

 第一声がこれなの、酷な話過ぎる。今作のコマ撮り総数、おおよそ14万コマというリアルを知っても尚、続編を求めてしまって本当にごめんなさい。書いて字の如く、狂い人。柔らかく表現するなら狂人(くるんちゅ)です。あの、もう、本当に最高でした。おもしれ〜〜〜!!って心の中で叫びながら映画館を後にするの、エヴァンゲリオン以降早々ないだろうと思ってたのに、マジでおもしれ〜〜〜!!!特大声

 まず言いたいのが、内装業を本職とする堀貴秀さんのセットの作り込みが半端じゃない。博物館に飾ってもらえませんか拝観料払うので。全部ハンドメイド、信じられるか?っていう興奮が常に頭を支配する中、只々フィギュアのクオリティの高さと、人の手によって生み出される物作りの孤高さを味わい尽くす時間だった。さらに圧倒されるのは視覚的情報だけでない。登場するキャラクター達の声、音楽制作もほぼ監督が担っているとのこと。これがまた良かったんだ。この世界でのオリジナル言語があるという設定で、村人やクリーチャーによって喋り方の違いがありそれが何とも愛おしい。六角精児のような悪人は鼻につく大阪弁でよう喋るし、バルブ村の男性陣たちは韓国映画に出てくるような独白喋り、母体株を匂わせるニコという女形は表情さえ見えないものの、声だけで可愛らしい印象をもたらしていた。魅力溢れるデザイン性や、とても独学とは思えない忙しないアクションシーンに目が行きがちだが、そういったキャラクターへの細部のこだわりに私は製作者のとてつもない愛を感じる。そして、セットのクオリティが尋常じゃ無いことは冒頭でも述べたが何故かそのどれも、無機物さがない。おどろおどろしく蠢く彼らに、ドロっとした生暖かい息遣いさえ感じるのだ。錆ついた謎の機械、土埃で汚れた血生臭い床、無数に伸びる橋でさえ吹き込まれた命なのだと思った。

 そしてこの作品が好きな理由をもう一つ喋らせていただきたい。私はエロティックもグロテスクも、ユーモアの中に混在するものだと思っている。 JUNK HEADは、排泄物や男性器を揶揄するものが遠慮なしに登場する。一生その類でガッハハと笑う性分ゆえ、永遠にぼくの夏休みの心を持ち合わせてる人間は、にちゃりとマスクの下、笑みを浮かべる他なかった。

 背中に生えた謎の食材"クノコ"を管理する未知の管理人、あの空間と生態系は芸術だ。個人的に、バイクのフォークリフトや8番浄化装置管理人も好き。各々、アイデンティティーを活かしたエピソードが存在しそうなキャラクターの数々。描写がないからこそ、待てよあれは何だったのだ?という想像を掻き立てられ妄想するのが本当に楽しい。絵本作家ショーンタンの作風にも似た可愛らしさをどこかに感じながら、今もまだ頭の中で彼らが脳内を駆け巡っている。

 次に、この映画1番の見所はエンドロールのクレジットだと言い切っても過言ではない。笑いとハテナが止まらなかった。埋め尽くされる堀貴秀の名前。怖、怖い怖い一回止めて。何のバグ?これとこれ除いて、俺。っていう書き方で良かったじゃないですか。クリエイターの権化。パンフレットを抱きしめながら、1800円でとんでもない作品を見れてしまった感動に打ち震えた。頼むからもっとお金を払わせてください。メイキング映像か、ドキュメンタリーを別途で企画してもらって、是非拝ませて欲しい人、鳥取県の人口くらいは居ます。DVDのリリースが待ち遠しい。ワンシーン毎に停止して、気の済むまで喋るやつを、やる。新社会人の皆さんは一発芸なんかを強要して来る理不尽な上司に異形マリガンの喋り方で対応すればいい。オンゲァヴゥンガホンガ…?等と発すれば、まだ生身のボディーを持ち合わせてる人間はついて来れるはずもない。お前!知能の低いグロームやるなって!キャハハ!と、はしゃげた先輩や同期だけ大切にしよう。

 ふざけてばかりで申し訳ないが、純粋に、ストーリーの続きが早く知りたい。そう思わせる物語を生み出した堀さんは凄い。という、IQの低い感想文になってしまった。

 マリガン達は言う。人は私たちの創造主であり神様である。

 否定する一般市民は言う。踊ろう、実際に踊った事はないけど。

 アレクサンドルは言う。空は綺麗なの?天国ってあるのかな?

 人類は絶滅してしまう運命にあるのか。生命の樹は何に味方するのか。何度も降りかかる死の瀬戸際の体験が、主人公に生を与えるというカタルシスを最後に幕を閉じ、ネクストステージへ。好きなものをグツグツと煮立たせ詰め込み、誰との感動も共有する事なく自身の脳内に没頭した作品は何と愛に満ち満ちていることか。不思議惑星キンザザや、BLAME!、リドニアの騎士然り、作り手のノンストップギア脳内を覗かせてもらえる作品が本当に好きだ。


 ここまで無呼吸で綴り続けたが、映画館GOする気になっていただけただろう、か…。膨大な時間と我が身全てを捧げてこの作品を作り上げたMr.ファンタスティック堀貴秀さんに愛ある拍手を。日本で公開する事を実現してくれた関係者及び、携わったクリエイターの方々に大いなる感謝を。絶対的な狂気に感化され、今日もどこかで芽生えるクリエイトの存在にざわつきながら、いつかの続編を心待ちにする。最後に、ネーミングも爆裂にイカしてるので子供に付けようと思います。名字 JUNK HEAD 名前。

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池袋シネマ・ロサにて展示中の堀貴秀作 パーソンフィギュア

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