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■大河ドラマ『光る君へ』第1,2話を深掘りしたい人のための参考本

大河ドラマ『光る君へ』、第1話について視聴率こそ振るわなかったものの、NHK+の視聴数が歴代最多だったそうで!

視聴率について、主演の吉高由里子さんが言及されたpostのせつなさが深く印象に残っていたこともあり、何とはなしにほっとしました。

さて、その『光る君へ』。大河ドラマ初の平安時代が舞台とのことでしたので、視聴前は優美で長閑な平安絵巻が繰り広げられる?と思っておりました。駄菓子菓子、蓋を開けてみたら、容赦なくバイオレンスが展開し、ずいずいと「身分社会」という現実を突き付けてくるお話で、思わずおろおろ。

私たちが義務教育で習った、ふんわりとした平安時代像では追い付かないものとなっています。

そこで今回は、私たちに染みついている「平安時代像」を揺るがし、大河ドラマ『光る君へ』をさらに楽しむための、教科書では習わないけれど、これも実際の平安時代だ! という本を幾つかご紹介します。

■名前だけじゃない天皇像

第1話では、さらりと坂東巳之助さん演じる円融天皇が出ていらっしゃいました。

考えてみれば、「円融天皇」ってあまり有名ではない帝です。私自身は『大鏡』という歴史物語を研究していましたから知っていましたが、教科書には系図以外にはなかなk見かけない名前です。

しかも、その円融天皇は、どうやら三郎(道長)の父である兼家との関係はぎくしゃくしている様子。ドラマでは、さらりと「兼家が力を付けることを避けるため」と解説されています。が、実はほかにも理由はあったのです。

■『平安時代天皇列伝 桓武天皇から安徳天皇まで』

■樋口健太郎、栗山圭子編
■戎光祥出版
■2800円+tax
■2023年11月

こちらの本は、平安時代に即位した天皇32人を即位順に解説しています。一人ひとりの天皇が持つ事情や背景を踏まえた説明となっていますから、とても読みやすく、分かりやすいです。

もちろん、円融天皇も載っていますし、ドラマの中でこれから即位する花山天皇、一条天皇、三条天皇、後一条天皇も項立てされています。

また、たとえば、三条天皇の皇子である敦明親王のように、皇太子になったものの、天皇に即位できなかった方にも言及がありますので、平安時代における天皇の在り方を知るには最適な一冊と言えましょう。

詳しい内容はこちらの記事に書いてあります。

■『敗者たちの平安王朝【皇位継承の闇】』

円融天皇と共に、第1、2話で話題をかっさらったのは本郷奏多さん演じる師貞親王(のちの花山天皇)です。

花山天皇については、平安時代の歴史に詳しくない方々にも、奇行の目立つ「痴れ者」という印象が強く付いています。あと、超女好きというイメージも(笑)

ですが、それは彼が「藤原氏にとって役に立たない帝であったから」とスルドク喝破したのがこちらの本です。(超女好きは史実ですが/笑)

■倉本一宏 著
■角川ソフィア文庫
■1120円+tax
■2023年11月

本書では、神話のなかにいる武烈天皇を原型として、平城天皇、陽成天皇、冷泉天皇、花山天皇について、古記録と説話を丹念に読み解いていきます。そうして、なぜそのようなイメージが創出されたのか、その答えを丁寧に提示していくのです。

実は、大河ドラマ『光る君へ』の時代、師貞親王の父である冷泉天皇は上皇としてまだ存命です。花山天皇はその息子ですから、そもそも色眼鏡で見られがちな立場ではありました。また、時代の潮流にそぐわない親王の悲劇とも言えるものが花山天皇にはあったことが本書を読むと分かります。

そのあたりのことも含め、こちらの記事に詳しく書きました。

■身分差のある社会の現実

第1話では、三郎(のちの道長)の次兄である藤原道兼の言動に注目が集まりました。たとえば、彼の発言にあった、自分よりも身分が下のモノへの目線。これは私たちのなかにある「平安時代」のイメージからすると、大きな衝撃を与えるものでした。

また、ドラマのなかでは、上級貴族である藤原兼家と下級貴族の藤原為時の、邸宅や食事、衣装における落差の凄まじさも目を惹きました。それは平安時代が完膚なきまで「身分社会」であることを私たちに突きつけるものでした。

そんな下級貴族たちの日常などを古記録から読み取り、提示したのがこちらの本です。

■『平安京の下級官人』

■倉本一宏 著
■講談社現代新書
■940円+tax
■2022年1月

大河ドラマ『光る君へ』の時代考証を担当されている倉本先生のご著書です。『小右記』などの貴族日記から読み取れる下級官人たちの日常や右往左往が色とりどりに描かれています。

私たちは日本史の授業で、平安時代について学びます。そこでは、どうしても藤原道長などの有名な上級貴族の事蹟のみに注目してしまいます。あるいは、古文の授業で習う平安時代についても、似たような趣です。

でも、彼らが生きた平安時代も、現代と同じく、社会が円滑に機能するためには名もなき人たちの働きが必要不可欠だったのです。たとえば、下級官人たちがいなければ上級貴族たちが行おうとした施策は一つも実施することはできなかったはずです。もっと言えば、彼らがいて世話をしてくれるからこそ、上級貴族たちは安泰に生活できるのです。

「平安時代」と大きく括ったまま理想化することなく、イメージ先行で語るのでなく、現実的な生活に密着させて考えることの大切さを本書は具体的に教えてくれます。

■『殴り合う貴族たち』

■繁田信一 著
■文春学藝ライブラリー
■1400円+tax
■2018年8月

こちらの本も、古記録から思いの外バイオレンスな上級貴族(の息子)たちの姿を活写します。本書を読むと、第1話での道兼の発言もふんわり理解できる気がします。

優雅でも優美でもない、ひたすら欲望にまみれ、猪突猛進に動く彼らの姿。現代の倫理観からすると、ちょっと?引いてしまうところもありますが(笑)、それでも本書を読むと、「貴族」という現代からは想像のつかないところで生きる彼らが、お話のなかではなく、現実に生きていたことを強く感じることができます。

■まとめ

今回は、第1、2話をより理解するのに助けになる本を4冊ご紹介しました。吉高由里子さん演じるまひろの生きる環境が変わるにつれ、私たちが知りたいことも変化してくると思います。そのときには、また私自身が勉強になった本をこんな風にご紹介したいと思います。

ちなみに、大河ドラマ『光る君へ』をより楽しめる知識を詰め込んだ記事は、こちらのマガジンに収めてあります。

こちらは毎週記事を更新していきますので、よろしければご覧になってみてくださいね。

んじゃ、また。

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