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入りきらない本の感想や要約を

こんにちは。

普段は読書メーターというサイトで読んだ本の感想を記録してるのですが、
字数制限内にとても入らない本の感想や要約の雑記が溜まってきたので、
noteにまとめる形で記録したいと思います。

今回は以下の四冊を。


暇と退屈の倫理学

『暇・退屈』という人生の空虚さの代表格を哲学するという趣旨の本。

人生の大半を占めるのは退屈と気晴らし。
部屋の中でじっとしている退屈に耐え切れない人間が、惨めで・苦しみを求める人間だとパスカルは言います。(ニーチェによる定義も同様)

人は『気晴らし』=欲望の対象『気晴らし』=欲望の原因と取り違える。『気晴らし』の奥にある本物の欲求(やりたいこと)に目を向けることなく、ただ『気晴らし』を達成するために身を粉にする愚かさを持っている。
その上で、この取り違えを指摘することに終止する人間が最も愚かである。

この後半部分良いですよね。個人的に本書で特に良いなと思った部分の一つです(パスカルの引用ですが)。

つぎに退屈の根源と、それに対する対抗策に関する考察が続きます。

退屈の根源は「なんとなく退屈だ」という空虚さにある。
そしてこれに対して人は、「決断を行い、その内容に愚直に従う
(=決断内容への奴隷と化す)」
ことで空虚さからの逃避を行おうとする。

物事に対する隷属が非常に否定的な文脈で語られており、
『なんとなく退屈』を人間として楽しむことが推奨されています。
この点についてはどうなんでしょうか?
物事に対する愚直な隷属化は思考停止と同義かと思いますが、
それ自体を強く否定する意図があまりピンときませんでした。
決断とそれに対する隷属は言い換えれば思考と脱思考のサイクルですし、
それも一つのうまい過ごし方のような気が自分はします。

この隷属の文脈で、習慣化ということにも言及を行っています。

人間は成長と共に環世界の崩壊と移行(学校入学/習慣形成 等)を経験する。
環境をシグナルの体系として認識し処理すること(環世界の形成)は、
そのまま習慣・信念に対する隷属であり、他の動物以上に退屈を生む。

習慣はまさに決断の代替ですし、前の議論を踏まえてもここは納得です。
「習慣化は人間から思考を奪い去り空虚を生む、人類最大の敵だ」
という論はいろいろなところで目にしますよね。

ここまでで「退屈とは」「退屈に対する行為」「その行為の考察」
といった内容に触れた上で、本書では以下のようなスタンスを取ります。

人間としての生(人間で在ること)には退屈が存在し、
思考すること(動物になること)で退屈の処理を果たそうとする。
人が人らしくあるには、自身が人間であること(退屈の存在)を楽しみ、
動物になること(思考すること)へと構える
ことが必要である。

この文章だけを読むと、
「思考は人間を動物に堕とす。退屈を受け入れ楽しめるのが人間らしさだ」と言っているようにも読め「?????」となりますね。

少し書き換えると結論は以下の通りです。

人は多様な環世界により退屈しやすい。
だから思考をする(動物になる)心構え/準備をしよう。
『動物になること=1つの世界に没入すること』は人をより人らしくする。
動物になるということを通じて、退屈に退屈しない人間らしさを磨け。

ちなみに付録では以下のような議論もなされています。

人は生きていく中で「サリエンシー(新しい刺激)」に常に晒される。
これは人間に傷を生み、人間はそれに適応することで意識外へ追いやる。
退屈はサリエンシーがない状態であり、
故に人は過去の傷口が開くために退屈を不快に感じる。

「なぜ退屈は悪であり、人は退屈をこんなにも避けたがるのか」という
本書であまり言及されなかったポイントです。
「暇だと過去の失敗やトラウマを思い出すから適度に忙しいほうが良い」
という人が結構いますよね。
これに対して本書の内容を踏まえると以下の指摘が生まれます。
「決断や習慣に隷属して忙しさを作るのではなく、まずは思考し没入しろ」
個人的には非常に納得できます。(暇を埋めるための焦った決断が良かった試しがないので)

また本書の後半部分にはこんな記述もあります。

仕事を楽しむことについては、認める派閥と強要する派閥が存在する。
後者による強要は「仕事を楽しんでいないもの」に対する憐憫を生み、
人は自己意思に関わらず「仕事を楽しめないこと」に劣等感を抱え始める。

これは様々な場所で議論されてきた内容ですが、本当にその通りですよね。
Youtubeの「好きなことで生きていく」というスタンスはその代表例。
また仕事に限らず、Instagram上の他人に見せる用のキラキラした日常など、
他人の尺度で比較したうえで自分に劣等感を抱く機会に今は溢れています。

暇・退屈といった空虚さは、無意味で強い劣等感を簡単に連れてきます。
その意味でも、暇・退屈ということにしっかり向き合い構えることは、
この時代を生きる人間として非常に重要なことのように思います。

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ウォール街のランダムウォーカー

じっくりとしかし確実にお金持ちになる投資家への道を示す本ですね。

本書は理論や知識がメインで考察や議論を挟む余地がないので、
感想というよりも書いてあった内容をまとめる形にします。

投資家=確実性の高い収入の形で利益を得ることを目的
投機家=リターンが合理的に予測できない中で短期間での大儲けを目的

株式投資には二つの大きな流派が存在する
ファンダメンタル価値学派: 本質価値について現状分析と将来予測。
市場価値<ファンダメンタル価値(市場価値が過小評価と思えば)で購入、
上回れば(過大評価と思えば)売却
砂上の楼閣学派: 一般投資家の心理を重視。
希望的観測がどう砂上の楼閣を作り上げるかを分析予測する。

Q. なぜ論理に囚われない学派があるのか?
A. 市場が狂気に飲まれた記録が過去に多数あるから
e.g.1, チューリップバブル/ 南海バブル/ ウォール街株式投機バブル
心理的要因だけで急上昇した相場(短期間で早く儲けられそうな投機)は、例外なく金融の重力法則に従って反落する
e.g.2, トロニクス ブーム/ ニフティ・フィフティ ブーム/ 新規公開株ブーム/
インターネットバブル/ 住宅バブル/ 仮想通過バブル
機関投資家でさえ、大衆と同じ過ちを何度も繰り返している。

株価分析における二大流派
テクニカル分析(砂上の楼閣派): 株価チャートを作って、それを解釈する。
日々の株価の動きだけを追い、チャートのシグナルに従い駆け引きする。
※チャートの形成後/崩壊後にしか行動できない ⋀ 市場の流動はランダム
コイン投げによるチャート予測>テクニカル分析による市場変動予測
ファンダメンタル分析: 企業の成長率等から株式の適正本質価値を分析。
※情報分析の不確実性+人的ミスの存在 ⋀ 投資銀行業務に利益相反 等
猿がダーツで銘柄選択≒ファンダメンタル分析による銘柄選択の利益

本書を結論だけ知りたくて手に取った人は、以下の内容さえ読めばOKです。

結論:インデックスファンド等の長期的なバイ&ホールドがBEST
・利益成長率が今後5年にわたり市場平均以上の銘柄のみ検討
・株価がファンダメンタル価値以上になっている銘柄は禁忌
・投資家が「砂上の楼閣」の起点とできそうな銘柄を検討

新しい投資テクノロジー(tips)について
・銘柄のリスク=銘柄のリターンが市場平均を上回る度合いの決定要素
・リスク低減=分散投資(e.g., 構成銘柄50以上(多ジャンル)でリスク70%減)
・行動ファイナンス「人は常に合理的に行動するとは限らない」

財産の健康管理のための10カ条(※ アメリカの話です)
・元手を蓄えよ: 貯蓄, 継続投資は早めが吉
・現金と保険で万一に備えよ: マーフィの法則は楽観的
・現預金でもインフレヘッジを: インフレで現金所持だけでは減益になる
・節税対策と年金制度の活用を
・運用目標をはっきりと: 年齢と給与の将来性と将来設計
・マイホームの活用
・債券市場に注目
・金、ダイヤ、骨董、コレクターアイテム: ちょっとの金を除いて基本損失
・投資にかかるコストに意識を: 手数料と税金のコスト
・分散投資を大原則に: 自分のリスク選好を明確に

雑学的な部分として、本書で紹介されている以下の内容は面白いです。
インデックスファンド: 一株当たりの利益成長約5%/年, 配当利回り1.8%/年
債権: 優良社債満期4.5%, 10年物国債3%
インフレ: 約2%
定年後保有資産の切り崩しは4%/年で100歳までは固い

というわけでとにかくまずはNISA枠でインデックスファンドですね。

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イシューからはじめよ

コンサルタントに限らずどんな職種/場面でも必要なロジカルシンキング
知的生産の本質が書かれているとして人気な一冊です。

手っ取り早く「思考方法・コツ」が知りたいところですが、
本書ではまず「課題解決とは?」「そもそも課題とは?」を重視します。

仕事のバリュー = イシューの質(今解くことの重要性) × 解の質(明確さ)
∴ バリューの高い仕事 を生み出すには、次のステップで進める。
① イシュー度を上げる(課題を絞り切る)
② 解の質を高める

※ 逆の手順は"犬の道"(労力だけが高く、再現性が低い=指導できない)

これを踏まえて、課題解決の具体的アプローチは以下のように分解される。
① イシューの見極めを行う
② イシューを解ける規模まで小さく砕く + 全体のストーリーの流れを整理
③ ストーリーの検証に必要なアウトプットをイメージ + 分析を設計
④ ストーリーの骨格を踏まえて検証
⑤ 論拠と構造を磨く+報告書をまとめる

まず初めに以下のことが言及されています。
✖ 仕事の価値 = 解決方法(提案)のクオリティ
○ 仕事の価値 = 問題設定 × 問題に対する解決方法のクオリティ
これは非常に当たり前ですが、実際に動いていると忘れがちですよね。
ちなみに本書ではイシューという言葉が何度も登場しますが、
イシュー=『複数ある課題の内、解決する価値があるもの』です。
これはコンサル用語なんでしょうか?
日本語だと直感的じゃないですが、subjectに対するissueと理解しました。

ここから課題解決アプローチの各項目について、順に説明が入ります。

① イシューの見極めを行う
まず初めに仮設を立てる or スタンスをとる or イシューの言語化を行う
(e.g., 主語+動詞, Where+What+How, 比較表現 等で表現する)

Q: そもそも良いイシューってなに?
A: 本質的な選択肢である+深い仮設がある+答えを出せる の3つを満たす
※ 深い仮設=新しい構造を持つ(e.g., 共通性, 関係性, ルール, 等々の発見)

Q: どうやってイシューを見つけるの?
A: 一次(生)情報, 基本情報を入れる(漏れダブりなく, 決め打ちしない)
集めすぎ・知りすぎない に注意(→効率の低下, 創造性の低下につながる)

Q: イシューが見つからないときどうするの?
A: 「一次情報+見識ある人と議論」を再度繰り返す。それでもだめなら、
  ①変数を削る(状況を固定する), ②視覚化する, ③最終系から辿る,
  ④So whatを繰り返す, ⑤極端な事例を考える

② イシューを解ける規模まで小さく砕く+全体のストーリーの流れを整理
ストーリーライン作り=イシューの分解+分解後に基づいてストーリー構築
※ イシューの分解は漏れダブりなく(2W1H, 市場ニーズ+事業モデル 等)

基本的なストーリー作り(≒ 脚本ネーム作り)は以下の手順で進める。
①必要な問題意識・前提知識の共有
② 鍵となるイシュー(サブイシュー)の明確化
③ 各イシューに関する検討結果
④ それらを総合した意味合いの整理
※ストーリーラインはプロジェクトの進行に合わせ毎回細かく書き換える(以下のように意味合いが変化していく)
立ち上げ段階: 目的意識の共有
分析・検討段階: イシューに対する仮設検証を明確化するツール
まとめ段階: プレゼンの骨組み

③ ストーリーの検証に必要なアウトプットをイメージ + 分析を設計
Q: アウトプットのイメージって?
A: 最終メッセージを納得させるための「分析結果」のイメージ(絵コンテ)

Q: 絵コンテ作りってどうするの?
A: 軸・分析の本質を整理する (e.g., 比較(n倍), 構成(n%), 変化(n% up) 等)
※ 原因と結果の両方で軸を考える + イメージを具体化する(数字 + 明瞭さ)

「④ ストーリーの骨格を踏まえて検証」は、字の如くなので飛ばします。

⑤ 伝えるものをまとめる(論拠と構造を磨く+報告書をまとめる)
マインドセットとして、聞き手は「完全な無知」で「高度な知性」をもつ
∴ 簡潔・シンプルに伝える

以下の要素を踏まえながら、ストーリーラインの磨きこみを行う。
・論理構造の確認
・流れを磨く: 1テーマが細かなサブイシューに繋がり、流れるように結論へ
・ピラミッド構造のストーリーライン(トップレベルに結論を並べる)を意識
・優れたチャート: イシューに沿うメッセージ+分析比較に明確な意味がある+分析がメッセージを支えている
※1チャート1メッセージ

どれもシンプルで誰でもできそうな流れですが、
「課題の検討・解決方法の提案・分析と検証・報告」の全てで常に徹底するのはだいぶ骨が折れそうです。
ただ初めに意味のある課題を見極める点を徹底することさえできれば、
あとのステップは全てどうせやらなくてはいけないことな気がします。
その意味でもイッシューの見極めにどれだけ固執できるかが、
知的生産に対するその人の価値を決定づけそうですね。

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スタンフォード式 最高の睡眠

オーダーメイド枕や高級マットレスが普及してから早数年(十数年?)。
誰もが気になる眠りについてのハウツーであり教科書のような本です。

本書の主張として、睡眠は人生の1/3を占める上に『脳と体に休息を与え・記憶を整理し・ホルモンを分泌し・免疫を上げ・脳の老廃物を除く』モノ。
そんな睡眠の質は最も深い最初の90分の眠りで決まると触れた上で、
「どうやって『最初の90分の質』を上げるの?」という問いに答えます。

眠りのスイッチ = 体温のスイッチ・脳のスイッチ

体温のスイッチをコントロールするには?
・寝るタイミングで深部体温と皮膚体温の差を小さくし、スムーズな入眠を
 (e.g., 入眠90分前に15分程度の入浴, 寝る直前に足湯, etc.)
・室温、湿度、脳の温度の適切な管理(e.g., 26℃, 50%, そば殻マクラ)

脳のスイッチをコントロールするには?
・退屈を味方につける (≒ 眠気がないときに無理やり寝ない?)
次の日が早くても睡眠時間を前にズラさず、同じ時間に寝る
 ※通常の就寝時間の直前~2時間前 = 睡眠抵抗が強い

③ 覚醒(目覚める時)のポイント
・日光を浴びる ※曇りや雨でも屋外で直接浴びればOK
・起床時間に余白を作る (e.g., アラームを30分ズラして2回: 微音 → 普通)
起床後即行動+太陽光で体温up
・裸足や洗顔の皮膚刺激で深部体温と皮膚体温の差を広げる
・脳の興奮が必要なタスク(思考力大)ほど前の時間に動かす
 → 単調な作業が午後や夜に集中して入眠しやすく

Q: 作業が残っているけど眠気がある。どうしたらいい?
A: 早く寝て早く起きる。最悪『最初の90分』のみが死守できればOK

その他「人間は寝貯めできない。睡眠負債の返済には10h*2weekかかる」等
「そうなの?」と思える睡眠tipsが様々紹介されています。

ちなみに私も前は入眠に3時間かかる日が月に5日程度あったのですが、
この本を読んでからいくつか実践してからも特に何も変わっていません
ただ睡眠に対して割り切れる部分や納得できる部分が増えたので、
個人的に読み得だったと思います。



以上、読んだ本4冊の感想・要約でした。
今回の4冊はどれも数か月前に読み終えた本ばかりなので(一年以上前のも)、
書き出す内に改めて内容が整理できて良かったです。
短い文字制限でさっくりと感想をまとめておくのも良いですが、
情報が多い本については内容整理を残しながら読むのもとても良いですね。
今後も255文字に到底まとまり切らない本はこっちに残そうかと思います。

それでは。

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