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【コラム】食料自給率を問題にする意味はない #042

この件、いろいろなバイアスが組み合わさっているので、専門用語とかデータは参考リンクにしたり極力省くので、気になる人は自分で調べてほしい。


■まず国際社会で食糧生産を見ること


「日本は食料自給率が低いのが問題だ」このままではいけない・・・という話は知っている範囲でも30年前から言われている。改善した試しがない。データを見てもそれ以前から下がる一方で上がったことはない。

それで政策の問題とか農業の高齢化・後継問題とかいろいろと言われているけども、それも手が打たれたことはないし解決したこともない。
まず誰もがこの事実を「シンプルな事実」として認めることだと思う。

そもそもそれ自体問題なのかどうか?から考えたほうがいい。
これは石油を輸入頼っているからヤバいんだぞ!という何十年も前から言われていることと同じで、メディアが問題にして煽りやすい構図が後ろにある。

国際社会では食料自給率が100%を超えている国が全体の20%強しかない。(🔗この世界地図がわかりやすい。ただし2013年データ)

カンタンな話、しかし乱暴に言うと、国土が広い国は食料自給率が高い。狭いと低い。例えばシンガポールが農業に力を入れているなんて誰も思わない。
砂漠など乾燥しているとか山ばかりで耕作地が限定されるとか(日本)自然条件でどの程度生産できるかが変わる。
あとは人口。単純に人口が多くて耕作地が少なければ%が下がる。カナダとかオーストラリアは人口に対して面積が広いというのもある。
そればかりが法則ではないけどメタで考えると一定そういうことが言える。

世界のほとんどの国が食料自給率100%を切っている。
しかも、国際社会は食糧に限らず相互のやり取りありきの世界にもうなってしまっていて、だからロシアや北朝鮮に対する経済制裁が一定の効果を出したりする。
つまり、食料自給率が低い国が飢えるようなことがあると、たちまち別の分野込みで関係する国まで困ることになる。だから安全と言いたいのではなく、すでに「だから流れを止めない仕組みがすでにできている」。これが最初に認めるべき事実になる。


■食べることが一度でも問題になったことがある?


なるべくあまり注目されていない、しかし本質的なことを書こうと思う。
2つ目に言いたいのは「飽食」。

食糧廃棄・・・食べ残しのこともよく問題にされるけど、カンタンに言えば誰も食べることに困ったことがない。90年代に米が不作になった時、タイ政府が無償で米を譲った。このことにメディアと国民は「不味い」と言ったことがある。
どんだけ上から目線だということだけど、エセ貴族風を装えるほどには日本人は食料を重視していない。なぜなら余るほどあるから。キャベツが数十円高くなった、家計が厳しいというニュースはよく取り上げられるけど、それも何十年も前からやっていることは変わらない。
苦しみを使ったパフォーマンスでしかない。

ほとんどの日本人は一般的な日本食を食べるけども、他の国に比較するとこんなにまでさまざまな食品があるのか!?というほどバリエーションに富んでいる。もともとの日本で食べられていたものではない食品が飽和的に溢れかえっている。
究極そういうのは食べなくても成り立つわけで、飽和需要ありきで食糧のことを考えるからどうしても相対的に自給率は下がる。食べなくてもいいものを用意するので相対的に自給率が下がる側面がある。

言いたいことは「ある家庭が食べない食料を大量に買っていれば、そりゃエンゲル係数上がるよね?」ということ。輸入しなくていいものを輸入しなければ食料自給率は上がる。
別にそうして上げることや、現在下がっていることを問題にしていない。飽食はダメだとも言っていない。余裕がありまくる、問題があるのではないということを言っている。


■バイアスの話にしよう


食料の「問題」はいろいろと言われているけども、何十年も変化しようがない物事だと捉えるとさほど気にすることではない。いやいやそういう考え方がダメなんだ!と思える理由はいくらでも出せるが、ダメな問題に対して解決策がないなら、ダメを事実として認めて別の方法でどうにかするしかない。

農業の後継がいないとか、それには法的な制約や経済的な魅力の薄さがあるとか、JAの利権が大きいとか、そういうことを取り上げても何にもならない。
結局言っていることの本質は、自分の事業として自分がうまくいくかどうかは「大きなもののせいでうまくいかないんだ」と言っているだけだ。そんなどうにもならないことをどうにかしようとするなら、自分がどうにかできることを死ぬほど考えるしかない。

今回の思い込みは、食料や農業に関係することは問題がたくさんあるというメディア主導の思い込みにある。
複雑なバイアスがあると最初に書いたけど、選挙ではそういう不遇を被っている農家票がモノをいう地域も少なくない。自分で自分の首を絞めることをしていたりする。

食料自給率の%に問題はない。そんなことが問題になるなら食料自給率が高い場合でも問題はある。
食べることに困っていないということに問題はない。
農業にも問題はない。産業としての農業は国によって自給率が異なり、国際関係で補い合うようにできている。
農家としての農産業に問題があるのだとしたら、それは自分で、または周囲との協力によって解決する問題でそれは会社経営や事業経営と何も変わらない。もし後継問題や収益性の問題があるのだとしてそれが政策や農機具購買など経費の問題だというなら、一般事業も会社経営もうまくいかないのは政策と必要経費のせいだということになる。こんなにおかしな話はない。


何十年も文句を言いながら「成り立っている」のであれば、それは理想的な姿でもなく、問題が山積しているとしても、そのようなシステムで成り立つから成り立っている。
システムが脆弱でヤバいとか、輸入が止まったらどうするんだ、というのはシステムを作り回す仕事をする人の責任でやることで、手出しができないが恩恵と損失をこうむる側が叫べばどうなるというものじゃない。
そんなことをしている暇があるなら、自分が生き残るために必要な方法を取ったり、そのためのシステムを自分で作ることだ。当たり前のことを当たり前にすることしかない。

脆弱なシステムに踊らされたくないなら、別の業界なり仕事をすればいい。誰かが束縛しているわけじゃない。最悪なのは自助努力せず人のせいにして、しかもその世界から足を抜け出すことはできないんだと被害者ヅラすることだと思う。そしてそれを煽るメディアに乗ってやるべきことをやっているんだ!言うべきことを言っているんだ!という勘違いを正すことだろうな。

日本の食料自給率
食料自給率の推移


🔹松原靖樹プロフィール



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