見出し画像

ロミオ

ロミオは、ほんとうにいいやつだ
いつも誰かを心配して
自分のことなんかそっちのけで
飛び回っている
皆ロミオが好きだ

ある日、ロミオは家から出てこなくなった

皆が心配してたずねると、ドアに張り紙がしてあった
「少しお休みします」

皆心配してお見舞いの手紙をポストに入れた

ロミオいいんだよ。無理しないで
きっと疲れたんだよ

でも、一か月たっても二か月たってもロミオは出てこない

皆どうしたんだろうと噂した

ロミオは気にしすぎなんだよ
考えすぎだよね
もっと心を大きくもたないと

皆の声はベッドのロミオにも届いた
心配をかけさせまいとロミオはドアを開けた

皆は、よかったと胸をなでおろした
「もう少し待ってほしいんだ」とロミオは言った
実際、ロミオはまだ随分痩せていた

お日様の光を浴びたらなおるさ
言いたいことがあったら何でも言ってよ
人のことばかり考えないで
自分らしく生きなくちゃ

「わかったよ、ありがとう」とロミオは言った

それからロミオはすっかり変わった

思い通りにならないと不機嫌になり
言葉やこぶしで人をなぐった
泣かせても謝りもしない

ロミオは、悪魔だった

皆ロミオに震え上がり、怖がって避けた

ロミオは言った

ごらん
本当のぼくは嫌いだろう?

ぼくはただ皆のことが好きだったんだ
そばにいたかっただけなんだ

優しくしたかった
気にしていたかった

たしかに本当のぼくじゃない

でも、それも、きっとぼくだった

怖がらせてごめん
もう行くね
さようなら

ロミオ、
君がいなくなって
皆本当にさみしがってる

君のやさしさに気付かずに、ごめん



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?