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フランス地方菓子

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30年間、フランスの地方を歩いて、出会って、知って、作った、パリではお目にかかれない、その地方の人々の暮らしの中で育まれていった、愛すべきお菓子たちをご紹介しています。
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アニョーパスカル。アルザスの復活祭のお菓子について

アニョーパスカル。アルザスの復活祭のお菓子について

アニョー・パスカル。アルザス地方で復活祭に作られるお菓子です。信者数22億5000万人。世界最大と言われるキリスト教が普及した国では、1年に一度、キリストの復活を祝う復活祭(フランス語でパークPâques 、英語でイースター Easter)の日が定められています。

ベツレヘムで生まれ、ナザレで育ったイエス・キリストは、やがて使徒と呼ばれる弟子たちを伴い、各地を周って自らの教えを広めました。そんな

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花の水

花の水

お菓子作りややスキンケアに使う、花の水の原産地は、チュニジアを中心とする北アフリカあたりです。

朝早く花を大量に摘んで、それを煮て蒸留させたものがその水になります。

オレンジの花の水は、フランスでは最初にお菓子の香りづけとして使われました。もちろん今でも使います。主に南のお菓子に多いですね。そのほか、スキンケアとしても利用されているし(お菓子材料として探す場合は、スキンケア用なNG)、原産地で

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タルト・タタンを作ろう!

タルト・タタンを作ろう!

タルト・タタンは、フランスのサントル・ヴァル・ド・ロワール地方のラモット・ブーヴロンという町の駅前ホテル「ホテル・タタン」で20世紀終わりにこのホテルを営む二人の姉妹の失敗によって作られました。

リンゴのタルトを作ろうとしたら、レストランがあまりにも混雑していたので、一人がタルト型にりんごだけを詰めて焼いてしまいました。その後もう一人が焼き具合を見にくると生地がないことを発見。あわてて生地をかぶ

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人生初めての本は、フランス一周から始まった!

人生初めての本は、フランス一周から始まった!

休みで色々整理していたら、なんと懐かしいノートが。1994年4月から5月とある。

この本の目的は、日本でまだ知られていないフランス地方のお菓子とその背景について書くことだったので、もう一度現状のフランスを見たいと思い、旅を計画。フランス人の友人Isabelleや、今は三ツ星シェフになっているクリスチャン・レスケール、他パティシエたちに資料や本を沢山送ってもらって研究。もうみんなそんなことは覚えて

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復活祭の仔羊

復活祭の仔羊

Joyeux Pâques 💐今日は復活祭ですね!
教室のベーシッククラスでアニョー・パスカル焼きました。「アニョー」は仔羊、そして「パスカル」は復活祭、または復活祭の期間中のことを指します。

今フランスは復活祭のバカンス。お菓子屋さんでは卵形チョコが並んでいます。しかし、アルザス地方は、このアニュー・パスカルを作るのです。復活祭は移動祝日で、「春分の日の最初の満月の次の日曜日」と言われており

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京都お菓子教室、テーマはノルマンディー!

京都お菓子教室、テーマはノルマンディー!

ルーアンのミルリトン。

オージュ谷のりんごのビスキュイ。ポム ランヴェルセ。
クリーミーなリオレ、自家製柚子コンフィ添え。

京都お菓子教室2回目、フランスお菓子紀行、ノルマンディー編終了しました。

今回のお菓子とのマリアージュのお酒は、カルバドスとりんごジュースで作られたvin de liqueur、ノルマンディーのポモーPommeau de normandieです。

しかし!
さぁ、皆さ

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フランス、砂糖熱狂時代とラム酒菓子誕生秘話。

フランス、砂糖熱狂時代とラム酒菓子誕生秘話。

フランス、ロワール地方の主都ナントの銘菓「ガトー・ナンテ」を作りました。アーモンド主体の円形のラム風味の生地にこれまたラム酒をたっぷり効かせたグラサージュがほどこされたお菓子です。しっとりと柔らかく、お酒たっぷり。大好きな地方菓子の一つです!

これがなぜナントを代表するお菓子になったのか?
ナントはかつてボルドー、ルアーブルとともにフランスを代表する貿易港でした。16世紀以降、ヨーロッパの列強は

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当初はパリでも知られていなかったタルトタタン

当初はパリでも知られていなかったタルトタタン

ホテル・タタンのオーナーはタタン家から数回代わり、タルト・タタンが有名になった1900年初めにはすでにMme.Marcelマダム・マルセルという女性がオーナーになっていました。でもタルト・タタンは作り続けられていたのですね。それをCurnonskyキュルノンスキー(1872-1956)という当時、地方料理回帰を提唱して、28巻もの「美食フランス」という本を出版していた食評論家が絶賛し、パリでも評判

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タルトタタン、前身はブーランジェ。2人の姉妹は独身だった。

タルトタタン、前身はブーランジェ。2人の姉妹は独身だった。

タルト・タタンは、フランスはCentre-Val-de-Loireサントル・ヴァル・ド・ロワール地方のLa Motte-Beuvronラ・モット・ブーヴロンの駅前ホテル「Hôtel Tatinホテル・タタン」で二人の姉妹によって生まれました。姉妹の名前は、1838年に生まれたStéphanie Marie Tatinと1847年に生まれたGeneviève Caroline Tatin. 彼女たち

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もう一つの復活祭のお菓子

もう一つの復活祭のお菓子

今年の復活祭は、4月4日の日曜日。復活祭のお菓子といえば卵型のチョコが主流ですが、アルザスやロレーヌ地方では、アニョー・パスカルと呼ばれる仔羊型のお菓子を作ります。アルザスではもうひとつ、サフラン入りのセモリナ粉のタルトも。でもこのお菓子は今ではもう見かけることはないですが、アルザスのお菓子の本には載っています。正しくは、Tarte à la semoule au safrin au Kocher

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パンデピスは毒盛りに格好の食べ物だった!?

パンデピスは毒盛りに格好の食べ物だった!?

カトリーヌ・ド・メディシスは、イタリアからマカロン持ってきてくれたいい人?いやいや、彼女は実は毒盛りで有名な人だったのです~。なんとパン・デピスに毒を隠していたんですよ~。恐!

昨日作ったバナナケーキじゃないですけど、お菓子作りも日々更新。今日の更新は、パン・デピスの思い込み修正であります~。作り方じゃなくて、その素材について。パン・デピスって中世から作られていたので、イメージとしては小麦粉を使

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衝撃的だったあの味を目指して20年後に私がすること

衝撃的だったあの味を目指して20年後に私がすること

それは衝撃的な一口でした。30年前、三ツ星だった(今もだけど)パリのランブロワジー(あのグランメゾン東京第一回の放映でキムタクが修業したいと尋ねたレストラン)で研修していたときのこと、当時はパリのお菓子といったら気合入った何層ものムースが流行っていて、とにかくパーツが多かった。そんな中、このレストランのデセールは、基本的に本当にシンプル。ソースもない。その中のガレット・ブレッサンヌと呼ばれていたお

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