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現代短歌

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現代短歌、はじめました。まだまだ初心者です。
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#連作

アンシンデレラ・ストーリー

アンシンデレラ・ストーリー



上質な嘘をまとった姫君は振り返らずに駆け去っていく。優秀な魔法使いがしつらえた靴は彼女にジャストフィットで、あの晩に脱げようはずもなかったが、王子はそれに気づかなかった。選ばれる者は待つふりをしながら、テーブル上の選択カードを巧妙に、かつ着実に切っていた。嘘と駆け引きは紙一重だ。

もし今夜、魔法使いに出会うのがあの子じゃなくて私だったら?姫君を追って主賓が出て行った舞踏会では、取り残された姫

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あいうえおnote【せ】

あいうえおnote【せ】



聖なる夜に12月 どこか浮き足立つ街に無垢なあなたと溶け込んでいく昼下がり
小さな路地の先にある茶色いドアを押し開けてみた

窓際に並ぶ木箱を開けたとき
爪弾かれた音の粒子が結ばれて いつかの冬に君とみた映画のエンドロールをなぞる

「意味があることだけを成す人生は味気ないよ」と笑った君の横顔が"救済"の意味をもつことは 僕とサンタだけの秘密だ

静寂が夜といっしょに訪れて 明日をたのしみに

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君とさよなら

君とさよなら



うそだってことは互いにわかってた。それでも笑顔でハグをし合った。
触れない手、合わない視線、寝るときは背中合わせで「ねえ、こんなのは違う」って告げる勇気も持てなくて、結局私は弱いまんまだ。

「鳥たちが一斉に鳴きはじめたら夕立がくる合図だよ」って
ベランダで洗濯物を取り込んだあなたの顔も思い出せない。
不確かな記憶をさぐってみたけれど、あなたに触れた指の先までつめたくてまるで作り話みたい。セピ

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