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talkin’ about Ayako Wakao

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若尾文子出演映画の思い出とささやかな考察
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talkin' about  Ayako Wakao

talkin' about Ayako Wakao

女優覚醒/小津安二郎

1960年代半ば映画界が衰退していく頃、銀幕世界に生きていた俳優が、小さなブラウン管の中に登場し始めた。少年だった私は、ほぼ親戚の若い叔母ほど年上の若尾文子をTVドラマで知り、魅せられた。映画の脇役からTVで売れ出したタレント役者とは違って、華のある、まさに ”高嶺の花”!
戦後映画の興隆の波に乗ってデビューした女優は多々あるけれど、彼女ほど完璧な容姿、声、たたずまい、スピ

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talkin’ about Ayako Wakao 2

talkin’ about Ayako Wakao 2

(仮) 娘が階段を上る時/溝口健二✨女が階段を上る時 (主演/高峰秀子/監督/成瀬巳喜男)
個としての女優が銀幕で存在感を輝かせるには、会社の商品である映画を、作品にまで昇華できる監督との出会いが不可欠。十代最後の年、戦前からの名匠、溝口健二監督から役をふられました。戦後復興に伴走する映画界への時代の要請が、新しい銀幕の華を求めるのは必定であったやな。

芸妓・美代春(木暮実千代)の家に、舞妓志望

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talkin’ about  Ayako Wakao 3

talkin’ about Ayako Wakao 3

魔風継承/京マチ子
若尾文子は1956年、「赤線地帯」 に続いて、東京の花街を舞台にした作品に出演しています。

淡島千景と山本富士子がライバル芸者の意地の張合いを演じる。若尾は淡島の置屋のお酌・お千世の役で、三年前の 「祇󠄀園囃子」 に戻ったかの容姿ですが、溝口監督の作品で階段を上がった若尾には、役不足となったのは否めません。
先輩女優淡島と、(ミス日本初代グランプリの栄冠の後、大映に迎えられ

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talkin' about Ayako Wakao 5

talkin' about Ayako Wakao 5

The edged age '60s (1)
* 女優開眼/増村保造

妻は告白する

滝川彩子 (若尾文子)をめぐる二人の男は夫の亮吉 (小沢栄太郎)と幸田修 (川口浩)。戦争を挟んで世代は異なる二人だが、自身の中に男としての等身大の愛慾を抱えている。しかし、それは日常を逸脱するほどのものではなく、妾を囲うことがステイタスであった日本的男性社会では、めんめんと黙認されてきた種のものだろう。

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talkin' about Ayako Wakao 6

talkin' about Ayako Wakao 6

The edged age '60s (2)
🔥愛と戦争💀
清作の妻

富国強兵教育の優等生である清作(田村高廣)が兵役から戻った。彼は村の活性化のためにリーダーシップを発揮する。周囲は清作の嫁取で盛り上がる。周りからは当然と見られていたのは村の有力者の娘ですが、清作には今ひとつ気がのらない相手なんですな、これが。

そこに、借金まみれの貧しい家のために、町の商家の隠居老人に囲われていたお兼

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