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映画『CLOSE/クロース』に心をえぐられる

昔の私だったらよく分からなかったという感想しか持たなかったんだろうな。

幸い年を重ねたおかげで分かったことがある。
原因は◯◯でその結果◯◯が起きて◯◯になって結論が出ました。はい終わり!
なんてはっきり言えるようなことは現実世界にはありえない。

そんな風にいえるとしたら、それは自分の理解できる範囲で解釈しているだけではないか。自分のバイアスのかかった世界にあてはめて理解した気になっているだけではないか。

映画を見ている最中あの子は◯◯だったんじゃないか、このときこんな気持ちだったんじゃないかとか考えようとしたけど、そんな風に自分が理解できるかたちに作り変えようとするのは不誠実な気がして。

劇中、学校でレオが反発する場面がある。悪意のない他者が自分の見える範囲だけを材料に自分のバイアスを通して分かったかのように語るなんて。

そんなことは現実世界にもありふれている。それに直面したとき、私はすごく嫌な気持ちになるけれど他者と関わりながら社会生活を送る以上避けられないことだ。なんとか折り合いをつけてやっていくしかない。

事実、真実、人の心や行動は白黒はっきりつけられるものではない。解釈は鑑賞者に委ねられ
ただ事実だけを提示してくる、そんな映画だ。

だとしたらこの映画は何のためにあるのだろう?製作者の意図やメッセージはあるのか?

きっと見ている者に擬似体験をさせたかったのではないだろうか。自分の身に同じことが起こったとき、あなたはどうする?どんな感情を抱く?

これが現実に起こったとしたら、受け入れたり結論付けたり過去のものとして心に留めたり、なんてことはすぐにできそうにない。

だからこの映画がいいのかそうでもないのか、好きか嫌いか、なんてことは見終わった直後の私には言えそうにない。

それは一生かかっても分からないかもしれない。メインビジュアルの少年や予告で流れる美しい花畑からは想像できない心をえぐられる映画。どうぞ心の準備をしてからご覧ください。



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