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恋と寒空⑤

恋愛小説『マイ・ブラウン・シュガー』
【第二十九話】

(ユリ)

暗い夜空に抱かれて
星を眺める時間に
思い出すのは君のこと。


田んぼ道、初めて君と歩いた日。
一瞬で蘇る記憶。
今日までに見たあらゆる君の姿が脳内で復元されていく。


「あー、好きだ。」


人を恋しくなるという感情が今まではわからなかったけど、知ってしまった自分が少し恥ずかしい。


ビュン


冷たい風が私の頬を叩く。
誰かが私に目を覚ましてほしいみたいに、怒っているかのように、痛い。


わかってる。
想像するより遥かに私の感情は激しくて、いずれ私は君の前の私を保てなくなるかもしれない。心の内を話さなければならなくなるかもしれない。

だけど、その時までは。
心の中にそっとしまっておいて、今までみたいな穏やかに温かくいられる距離感でそばにいたい。本音を言うのが怖くてこんなズルい考えをしていたけれど、この後予想を大幅に超えて感情が揺れ動いていくことを、この時の私はまだ、知らなかった。


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