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出口治明著(2023)『働く君に伝えたい「考える」の始め方』ポプラ社

自分の頭で考えることの重要性を説く本

わたしも時折、色々なところで講師をしていたことがあるが、そのなかでいつも講義の軸とするところは「自分の頭で考え抜くこと」を伝えている。

今は自分の頭を使わなくてもネット検索で色々な知識を得られるし、さらに比較しながら理解することも出来る。しかし、その考察もありきたりの他人の見解を自分の意見のようにまぶしながら言葉にする人も増え、ちょっと質問するだけでその本質に行き着いていない表層的な事象だけで判断している人があまりにも多い印象を受ける。

本書は、題名に「考える」と提示しているとおり、その考える視点を提供してくれている本である。考える力(思考力)を得ていると、世の中ある程度楽観的に見れる点は、著者と同じ見解である。また、この本でも多様性は組織の強さにつながる点を指摘している。さらに「考える」が「思う」や「悩む」と違うのは、『知る」というプロセスがあるかどうかと説いていて、その知る術の1つが著者が実践している読書でもある。

わたしは結構速読に近いことをするが、著者は1文字絶やさず精読するそうである。
著者は「考える」ためには「知り、学ぶ。問い、考える。」ことが重要であり、思考のツールとして、「歴史」の時間軸、他の国や地域を参考にする事、数字やエビデンスを参照し、だれがみても同じ結論に達するデータを重視している。多様性を求められる中で、議論するためには最低限必要な素養としてこれらのツールが必要になることは誰でも理解できるのではないだろうか。

更に、考えることを歪める要因として、アンコンシャスバイアスにも触れている。僕らはある程度型にはまった考え方をしてしまう癖があり、これを除外することが何より多様性の中では重要な考え方でもある。特に男女差のところは著者の強い主張だと思うが、本の背景がグレーの紙で強調されている。それだけ日本にとっては深刻な問題だと捉えていることがわかる。

人として正しい判断をするためには、その根底として「考える力」を持っていなければならない。本書の内容は、決して難しいことが書かれているわけではなく、当たり前のことをきちんと整理して記載されている。ぜひ身の回りのことからでも、自分の頭を使って考えてみる習慣を得る一歩のために本書を読んでみては如何だろうか。

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