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「発酵道」酒蔵の微生物が教えてくれた人間の生き方(寺田本家当主 寺田啓佐著)

微生物の世界は、「愛と調和」で成り立っていた。
それを見て、「人間も微生物のように、発酵しながら生きれば、争わなくても生かされる」ことを確信した。 

 発酵道「微生物から、生き方を学ぶ」P.2

何年も前から好きな一冊。日本酒で有名な寺田本家の二十三代目当主さんが書かれた「発酵道」という本です。

私が手前味噌づくり中に、「麹菌たちよ~♡」と感謝したり、触れ合いにわくわくできるのは、この一冊との出会いによるものです。発酵について学んでいると、ついつい教科書のテキストよりも、発酵の本質について感動させられるこの一冊、「発酵道」に手が伸びてしまいます。(←こうしていつも脱線して資格の勉強が捗らない)


「発酵道」の中の私が大好きなシーン

江戸時代から三百年続く老舗の造り酒屋「寺田本家」に婿入りした著者であるご当主さんが、お酒のことは全く分からないけれど、前職で得意とした家電販売の商売センスで酒蔵を経営していこうと、軽い気持ちで二十三代目の当主になります。

ところが、それまで花盛りだった日本酒ブームが去り、世の中の流れに乗って効率と利益を追求し続けるも、どんどん経営は傾くばかり。
上手くいかないのを周囲のせいにして、博打や煙草でストレスを発散し、従業員や家族のみならず、ご自身の身体までも顧みなかった結果、「腸が腐る」病気になり大手術をすることに…

そんなどん底の入院中に人生について俯瞰していると、あることに気が付くのです。

「発酵すると腐らない」。ぬかみそで気づいたことは、こういうからくりだったのか。いい発酵がいい発酵を呼び、腐敗など寄せ付けないのだ。
よくわかった。すっかり腑に落ちた。自分はずっと、全く逆をやっていた。腸が腐敗して、体が腐敗して、心まで腐らせていたのだ。
あぁ、そう、「発酵」と「腐敗」は、人間の気持ち、意識にもあてはまることなのだ。

発酵道「どん底で見えてきたこと」 P.53

自分は発酵していこう、会社も発酵していこう。そう決心したからには、とても今までの酒造りを続けていてはいけないと思った。

発酵道「本物の酒を造ろう」 P.56

そこから、効率や生産性を追うことを止め、私利私欲を捨て、「本物の酒造りを始めよう」と、生命力の高い米を無農薬栽培する米農家さんを探し、昔ながらの本来の酒造りの手法を研究します。
「みんなに喜ばれる酒、百薬の長を造ろう」と、当時の時代に逆行した新しい酒造り、新しい人生の幕が開けていくわけです。

そこから有名な日本酒「五人娘」の誕生秘話、微生物たちにならって「競争よりも共生」する商売など、日本酒に興味が全くなくても、(日本酒好きにとっては製造工程が丁寧に描かれていて、それはそれで学びが深い)胸が熱くなる、夢中になって読んでしまう、生き生きと私達の心を「発酵」させてくれる一冊です。


自分の働き方を必死に探す私に刺さったメッセージ

それは決して嫌々やっていることではなく、微生物にとってそうすることが快くて、自分の好きなことをしている。そして、楽しく働いている。私には、そう感じられる。生命のおもむく方向へ、自ら進んで行っているのではないかと。

きっとそうやって自分らしく生きることが、微生物にとっては自然なのだろう。まさに微生物というのは、本当の意味で自分のために生きている、「自分好き」なのだ。

こうやって微生物の世界をのぞいているうちに、生命のおもむくまま、「自分にとって最も快いことを選択していく」ことが、実は自分を生かす最良の生き方なのではと思うようになってきた。

発酵道「微生物をお手本にして」 P.115

私欲ではなく、本当に人に喜ばれる、人の役に立つ仕事をしよう。
生物界は「自分好き」。自分の得意や好きを思いっきり表現して、自分の魂が喜ぶ仕事で私の役割を果たそう。
そう感じさせてくれる、「自然」の法則が背中を押してくれるような気持ちになります。


  • 発酵、腸活、日本酒、食育

  • 競争ではなく共生

  • "本物"を造る

  • 私欲ではなく人の役に立つビジネスを

こんな方向性を深めたい方にお勧めの本でした📖


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