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エッセイ:精神障害者の僕が支援者を殺しそうになった話

 僕は少し前まで、「支援者を殺すか? 殺さないか?」というところまで追い詰められてしまっていました……。

 ナイフを持って診察室に乗り込み、叫びながら逆手に持ったそれを振り下ろす。返り血を浴びながら医者の腹を刺しまくって、内臓を掻き分けて引っ張り出していく。

 本当にもう少しで実行に移してしまうところだったのです……。未遂で済んだけど、もしあと一歩間違っててたら……?

 別に犯行予告とかでは無いんです。ただ苦しいからネット上の「誰か」に打ち明けたいだけ。自分の精神を落ち着かせるためにも匿名のnoteに書き込んでおきたいだけだから、許して欲しい。


 ……さて、何があったのかというと、僕は六畳ワンルームの狭いアパートに4年間住んでいたのですが。
その部屋はケアマネジャーと不動産屋から紹介された物件だった。

 狭い割には家賃も変に高く、下見の時点で、「精神障害者とは言え、人間をこんな狭い部屋に住まわせるのか?」と思ったけど、当時生活に困っていた僕には選択肢が無かった。

 洗濯機を置く場所も無い。トイレ風呂も同じユニットバス、2畳に無理矢理詰め込んだような汚らしい浴室だった。食事と排泄する場所が同じ空間にある訳だし、風呂も風通しが悪くて、カビが勝手に生えてくる。ここまで狭い部屋というのは中々無い。

 ゴキブリとかが怖くて、調理も出来ないし、部屋の中だと食べカスが落ちるから、外にある駐輪場で食べる羽目になっていた。友人から「こんなのタコ部屋だろ」と言われたけど、その通りだと思った。

 住人の民度も最悪で、深夜に突然叫び声が聞こえてきたりする。精神疾患を抱えた者が多かったのでしょう。特にアジア系の外国人が物凄く怖い……。僕は普通に差別意識がある方だし、綺麗事を言うつもりも無い、単純に何かやらかしそうな雰囲気があった。見るからに底辺っぽい人達に囲まれてて、どう考えてもトラブルになる予感しか無かった。

 そしてある日突然、隣人の男性が暴力を振るって来たのです。胸ぐらを掴まれて二、三発叩かれました。僕も負けじと押し返していたのですが。高齢者とはいえ力はある。僕の部屋がどこにあるのかまで突き止めようとしているようだった。

 当然すぐに通報しました。ただ証拠不十分で逮捕まではしてくれなかった。管理会社、不動産に相談しても何もしてくれない。こんなことがあるのか?と思ったけど、分譲だったからその人に誰も注意してくれないのです。

 警察署に行って被害届を出そうとしたけど、それも受理して貰えませんでした。

 何かされる前に逃げ出さなくてはなりません。引っ越しを決意することにしました。

 けど、ここで問題がありました。アパートの更新料が一年契約だったのです。通常のアパートの4倍くらい料金が掛かるから滞納してしまっていました。

 以前は介護施設で働いていたけど、パワハラを受けて退職してしまった僕には、そんな大金を払えるわけがありませんでした。

 引っ越そうとする僕に、ケアマネと不動産屋が怒って引き止めようとしてくる。事情を伝えてはみるものの、そんなことはお構いなしで家に上がり込んで来る。

 六畳ワンルームの部屋に逃げ場はありません。正方形に近い直方形の部屋。布団があるだけのゴミ溜めみたいな部屋。

 間違ってるのかもしれないけど、そこにお金を払いたくありませんでした。引っ越しに必要な最低限の貯金を奪われたくなかった。

 この時に、初めて「搾取されてしまう!」と危機感を覚えたのです。「払える訳ないって言ってんだろ!」思わず激しく怒鳴り散らしていました。

まさか精神障害の人間から、反抗されるとは思っていなかったのでしょう。「住んでるならルールに従えよ」と、ケアマネに嫌味を言われるのですが。

 「じゃあ、アンタにセクハラされたって捏造してやろうか?」と言い返すと、物凄く怒った顔で渋々帰って行きました。自分でも何やってんだろうな、と頭を抱えたくなった。

 隣人から暴力を受けていることを精神科のクリニックに訴えるのですが。「薬を増やすのでそれを飲んで下さい」としか言われなかった。

 謂れのない暴力を受けて「大人しく薬でも飲んでろ」と言われても、困るばかりだった。

「薬を飲んで精神を安定させなさい」
「それがダメなら入院して下さい」
「ルールに従って下さい」

 ここで引き下がる訳にもいかなくて、どうにかして解決して欲しかった。そもそも、そんな部屋に住まわせたからこんなことになったんだと、何かが弾け飛んでしまった。

「お前らがあんな家に閉じ込めたからだろ!!!」

 今までの溜めに溜め込んだ怒りが大爆発した瞬間だった。自分でもビックリするくらい大声を上げて喚き散らしていた。

「今まで僕の話なんか何も聞いてくれなかったじゃないか!!!」

 医者やカウンセラーに飛び掛かるくらいの勢いでキレてしまっていた。周りの人間が押さえつけて来て、薬を飲ませようとして来るのだが、僕はそれを全部拒絶していた。4年間、2分間しか話を聞いて貰えなかったし、不利な条件ばかり差し出して来たから、殺意が抑えられなかった。

そしてすぐに警察を呼ばれてしまったのです。これはさすがにヤバイと思ったのですが。警察も「この程度では連行なんて出来ませんよ」と話しており。
医者達がまどろっこしそうにしていた。「今すぐにつまみ出してくださいよ!」と苦言を呈してた者もいた。皮肉にも、この時ばかりは「警察は何もしてくれない!」という僕の思いが少しは伝わったのかもしれない。

 家に帰されることになったけど、僕が安心して眠ることが出来る場所なんてありません。そして結局のところ、クリニックを出禁になってしまい。電話で一方的に「二度と来ないで下さい」とだけ言われた。

 急に打ち切られてしまったからには、別の精神科を探さなくてはならないし、紹介状も書いてもらわなくてはならない。早く僕のことを追い出したいのでしょうけど、それなら、せめて次の精神科が見つかるまで最低限のことをすれば良いのに、中途半端なことばかりされるから縁が切れないのです。

 僕だって関わりたくなんか無かったけど、背に腹は変えられないので、医者に紹介状だけは書いて貰えたが。投げ捨てるようにそれを渡された。

 そうこうしている間にも、自室でのトラブルが悪化していく一方だった。警察に通報されたことを恨んでいたらしく、通り掛かる度に睨み付けられていた。

 護身用ナイフが手放せ無かった。いざとなったら殺すしかないと思った。

 更新料を支払うように電話が掛かってくる。かと言って逃げ出すにはお金が必要だし、その貯金だって減っていく……。

 いつのまにか、「僕をここまで追い詰めた支援者達を片っ端から殺さなくてはならない……」と、そんなことばかり考え始めていた。タイトルには「殺しそうになった」と書いたけど、実際には目を抉り出したり、耳や指を切り落としたりして身体障害者にしてやりたかった。

 切断したソレを目の前で噛み潰して、使い物にならなくして、朝起きるたびに後悔させてやりたかった。

 もう、殺すだけじゃ気が済まなくなっていた。後遺症を負わせて、カタワにして僕と同じ惨めな気持ちを味合わせないと。代償を支払わせてやらないと納得出来なかった。自転車で行ける距離だったので、本当にやってしまっていた可能性はある。

 そんな異様な状況下だったのですが、唯一の救いは、共◯党だったのです。今までの事情を説明すると、親身になって話を聞いてくれたし。適切なアドバイスをくれたのです。

 「そのアパートは完全なる貧困ビジネスですよ」と言われた瞬間、肩の荷が降りる感覚がありました。理解者がいた……という安心感。

 他にも新居探しを手伝ってくれたり、不動産屋との仲裁までしてくれたのです。「法律的にも支払う義務が無いから安心して良い」と話してくれました。もし、この人達がいなかったら本当に犯罪者になっていたと思う。

 引っ越しが終わった時に、心の底から安堵していた。……というわけで精神科もケアマネも不動産屋とも縁が切れた。もう、僕を束縛する存在はいないのです。これが自由なのかと本気で嬉しかった。

 新居は広くて日当たりも風通しも良くて綺麗だったし、足を伸ばして眠ることも出来る。自分で好きな料理を作ることも出来るし、食事をするスペースもあった。

 それにも関わらず、お風呂に入っていたら、「ケアマネの視線」を感じたり。夢の中で医者達が睨んで来たりして、夜中飛び起きることもあった。フラッシュバック、PTSDの一種なのでしょう。今でも動悸がしたりするし、目眩がする。急に過呼吸を起こして嘔吐したこともありました。

 薬、体質に合わないから飲めないんですよね。飲んで暴れ出してもお医者さんの責任にはならないんですよね。僕が入院すれば良いんですよね。僕だけが我慢してれば良いんですよね。

 僕も昔、介護施設で働いたことがあったけど、利用者から恨まれてるんだろうな……と感じることは多々あった。

 これは僕の逆恨みなのでしょうか? 更新料も払わず逃げ出したことが本当に悪いことなのでしょうか? 僕は、あの部屋で殺されるのを待っていれば良かったのでしょうか?
もう何も分からないのです。

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