anone9話

今回はハリカちゃんと彦星くん、持本さんとるい子さんのシーンが本当に良くて、テレビに釘付けになりながら一部始終を観ていました。本当はみんなに幸せになって欲しいのにな…と悲しくなります。
でも、坂元さんの『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』の音ちゃんと練くんのように、自分の幸せを優先しない、不器用な振る舞いの人々がやっぱり愛おしいなとも思います(ちなみに、8話の感想はこっち)。

今回、持本さんとハリカちゃんは嘘をつき、大切な人を守ろうとした。でも、その顛末は対照的だったのが印象的だった。ハリカちゃんは彦星くんを騙しきり、嫌われることに成功し、2人とも傷ついた。持本さんは騙すことに失敗し、お互いの中に居場所を得た。

じゃあ、ハリカちゃんと持本さんは何が違くてこうなったのだろう、と思う。多分それはハリカちゃんと彦星くんの距離が、持本さんとるい子さんの距離とは違ったからだろう。「青羽さん、顔が近いです」というくらい現実での距離が近かった2人と、チャットや電話、カーテン越しの顔が見えないなかで会話してきた2人の差だ。

カーテンは、一緒に生活してきた人々の距離感と直接会ったことのない2人の距離感の象徴だし、物理的な顔が見えるか見えないかという差異でもある。
カーテンで区切られていなければそれほど強い言葉をぶつけられなかったかもしれないし、泣いている顔も苦しい顔も見えてしまう。
これは、持本さんだからかもしれないが、直接るい子さんとぶつかり合う持本さんは、「若干迷惑です、厄介です」と言う。若干という言葉で言葉の棘を和らげてしまって、厄介ですと言い直すような躊躇が現れているのだ。
ハリカちゃんだって、彦星くんの顔を見ていたら「よかったあ、分かってくれて」なんて言えなかったかもしれない。

ハリカちゃんと彦星くんのカーテン越しの会話の流れやショットの移り変わりはとてもよかった。話自体は悲しいのだけれど。
例えば、身長の話やバンザイしたらパジャマからおへそが出る話。お互いが目の前にいるのに、カーテンがあるから互いの見た目を説明し合うことで話が盛り上がる。でもそのカーテンの意味は反転して、2人を分け隔てるものになってしまうのだ。
身長の話をしている時、2人は1つの画面の中に同時に存在している。しかし、雲行きが怪しくなり、ついにハリカちゃんが決別の言葉を述べ始めた時には、それぞれは別々のショットで映し出される。
「そろそろ話聞いてるの重荷になってきた」「君のことめんどくさくなっちゃった」と言いながら自分の言葉を否定するように首を振り、「僕も僕のことがめんどくさいし」「そうだね、重荷、だよね」という彦星くんの言葉を打ち消すように首を振る姿は本当に悲しい。

そうやって、"亜乃音さんが私にしてくれたみたいに、彦星くんの居場所になりたい"と言って家を出たハリカちゃんは、帰ってきた時には彦星くんの居場所にはなれず、亜乃音さんという居場所も失ってしまう。
それだけじゃなく、春人くんは火事のことを思い出してしまった。中世古さんが「これは僕の犯罪です」と言ったり、ハリカちゃんや花房さんが偽札を眼にした時に、もう取り返しはつかない、見て見ぬ振りはできない、と言ったように犯したことからは逃れられないというメッセージがここにきて春人くんにも現れてしまった……と思った。

来週どのように話が収束して行くのか、未だによく見えていない中世古さんの抱えるものとはなんなのか、が気になって仕方がない。
anoneの世界のみんなが、幸せになってくれるような結末がいいな、と思いつつ来週を待ち望みます。

#エッセイ #感想 #anone #坂元裕二 #テレビドラマ #ドラマ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?