anone8話

「好きな人に着けてほしいランジェリーの色は?」「わ、若草色」のシーンとてもよかったですね……。みかん鍋も満を持して出てきて、思わず笑いました。だいぶ遅れたけれど8話の感想です(7話の感想はこっち)。

前回は亜乃音さんとハリカちゃんの疑似親子、というよりも親子関係というべきか、2人の関係へのフォーカスが強かった。今回はその2人だけじゃなくて様々な愛する人と愛される人が描かれていたなと思う。そしてその誰もが大切な人に道を外してほしくないという風に考えている。道を外す理由が切実で、その当人が心から望む行為であっても、それは本当の幸せにならないと、その行為を止めようとするのだ。

前回、亜乃音さんはハリカちゃんが偽札を作ることを何が何でも止めようとしたし、今回語られたように、生活に不安を感じて苦しんだ先に玲さんが不倫を求めることを止めようとするのである。

はたまた、るい子さんは持本さんが偽札づくりに没頭することを良くは思っていない。持本さんは少ない寿命を目の前にして、自分の人生を取り戻すために、悔いのないものにするために、誰かに求められるために偽札を作っている(たぶんその内心は3話などを中心にもっと考える余地があるけど)。
るい子さんは亜乃音さんとは違って遠回しに、持本さんを引き留めようとする。「本人も気づいてない魅力に気づいたときに、人は人を好きになるんです」って、ヒュージャックマンを持ち出しながら語り合う2人はほほえましいし、それを眺める亜乃音さんとハリカちゃんもほほえましい。

それに対して中世古さんのすれ違いは悲しい。「そんなにお金って大事かな。お金ないってそんなに怖いことかな」という言葉に「怖いことだよ」と答えるシーンには2人のギャップが見える。中世古さんはひたすら奥さんに偽札づくりを隠し続けるし、奥さんは”わたしお金なんてなくてもいいの”という言葉を唱え続けるだけで前にも後ろにも進まない関係性だ。

そして中世古さんに首を絞められていた花房さんも止める人であり、亜乃音さんを愛する人である。花房さんは「現実が怖いんでしょうね。目の前の現実が怖くて見たくないものは見たくない」というように、亜乃音さんの不穏な動きを察しながらもその真実は暴こうとしない。「工場たたみましょう。街出て、新しい人生を歩むのもいい。」というように亜乃音さんの悪事を止めようとする。プライベートには踏み込みすぎないのが花房さんの亜乃音さんに対する距離感なのだ。

大切な人に道を踏み外してほしくないという気持ちから現れる愛の形にも、その2人の距離感にも、様々な形があるということを感じた。道を踏み外してほしくない、と言うべきかはわからないが、彦星くんと茉歩さんの関係も似ている。「好きな人のこと、助けられるかもって思ったら助けるのが当然でしょ?」という正しい道に戻そうとする茉歩さんと、「そんなにしてまで生きたいと思わないよ」という彦星くんの言葉が今までのあらゆる2人の関係をはっきりと表している。
助けることが当然であり、正しいとも思えるが、それは本当に当人が望むことかどうかはまた別なのだ。純粋な好意と好意に基づく道徳的な行動があってもそこから良い関係が生まれるとは限らない。人と人とが満足して幸せな関係を築くのは難しい。

そんな風に感じられる8話でした。じゃあ、ついにお互いの好意を確認したハリカちゃんと彦星くんはどうなんだろう、という風に思いました。彦星くんのために偽札を作ろうとすることを彦星くんはどう思って、その気持ちをどう伝えるんだろう。
今夜の9話も楽しみです。

#anone #エッセイ #感想 #テレビドラマ #ドラマ #坂元裕二

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