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【読書日記】子どもが心配 〜人として大事な三つの力〜|なぜ日本は「児童虐待社会」なのか⁉︎|「自分の人生は自分のもの」ではない

「なぜ、死んではいけないんですか?」
と、質問する子どもの心理には暗黙のうちに、

自分の人生は自分のものなんだから、
自分の体をどうしようと勝手だろう

と考えているようです。


どうも
安全・安心と絆でつながる
キャリアコンサルタント
のタルイです。

週一でnote更新してます。



いきなりで物騒な話ですが
日本は「児童虐待社会」だそうです。


大ベストセラー『バカの壁』の著者である
養老孟司先生が警鐘されてます▼



詳しく調べてみました。

間違いなく
日本の10~39歳における
死因の第1位は自殺でした。

https://www.mhlw.go.jp/content/1-1-03.pdf



また別の資料によると

先進国G7の中でも
15~34歳の死因の第1位が
自殺である国は日本だけでした。


確かに、
子どもの自殺について、
明らかに日本の社会に
問題があるようです。



養老先生が考える
その根本的な原因は
大きく2つある
というのです。


まず一つが「都市化」です。


すでに昭和30年代の終わりごろから
日本は都市化が進み

子どもの遊び場も、遊ぶ時間も
一貫して少なくなっています。

その結果として、
生き生きとした子どもの日常
日本社会から失われてしまったのです。



もう一つは日本が戦後から取り入れた
近代西洋思想からくる
「個人主義」の考え方です。

『自分の人生は自分のものである』

この考え方に問題があるということです。

「戦後の日本では、『自分の人生は自分のものである』という考え方が広がった。しかし、こういう考え方からは生きる意味なんて出てこない


しかし、なぜでしょうか?

日本が都市化したことと

「自分の人生は自分のもの」と
個人主義になったこと


それがどうして
「生きる意味を見出せない」
ことになって

さらに児童虐待の話にまでなるのか?



子どもの自殺の原因は
日本の都市化と戦後の個人主義にある。


この説にあなたは

「昔の日本は良かった、
 でも、今の日本はダメだ」


「都会より田舎暮らしの方が良い」

このように
養老孟司さんの主張は
ただの懐古主義者
同じように感じたかもしれません。

私も最初はそう感じましたが、

本書を読み進めるに従って
理解が及びました。


明確に違います。


ここから
まとめていきます。



◆著者はバカの壁の養老孟司さんと4人の有識者です。

○○の壁といったら養老孟司先生。


そもそも、
解剖学者のである養老先生と
子どもの話は共通項がなさすぎ
と思うかも知れません。


実は養老先生は
30年以上にわたり
鎌倉市内の保育園の理事長を
務められてました。


子どもたちのことを
考える機会に恵まれていたのです。


今回、
子どもが心配になって
いろいろな方にお話を
伺いたいと考えたら


4人の博識ある先生方と
対談することができて
この本が生まれたそうです。


本書は対談をまとめた形式です。

私は著者が違う本5冊を
一気に読んだような充足感を得ました。



ここからは

●人として大事な3つの力とは

●なぜ日本は「児童虐待社会」なのか
⁉︎

●なぜ「自分の人生は自分のもの」ではないのか?

そして最後に私の感想を加えて
まとめていきます。


◆【人として大事な3つの力①】認知機能


宮口孝治さんといえばベストセラー
「ケーキの切れない非行少年たち」
が有名ですね。


非行少年たちが
凶悪な事件を起こしてしまう背景には

大体の子が小学校2年生くらいから
学校の勉強についていけなかったことが
大きな原因の一つだそうです。


その理由は明らかに
見たり、聞いたり、想像したりする
認知機能が弱いことが
特徴ということです。


認知能力に問題があると

「丸いケーキを三等分した図を
 書いてください」

この問いに対して

下記の右側のような
切り方になってしまうのです。


このように
明らかに「見る力」などの認知機能や
知的能力に問題があるのに
学校で気づかれないまま
ずっと放置されてしまう。


こういったケースに対する
学力支援が重要とのことです。


この章で印象的だった
フレーズを引用します。

褒めることで効果があるのは、「自分の尊敬できる好きな先生」からのものです。自分の嫌いな先生に褒められても。嬉しくもなんともない
「『ああ、そうだったの。でもあなたにも問題があるんじゃないの?』みたいなことを言ったら、一発アウトです。子どもは自分の話を否定されたことで、大人が思っている以上に傷つきます」(宮口幸治)
感情統制に問題のある子には、タイプが2つあります。一つは、自分の感情がコントロールできない。もう一つは、人の気持ちが理解できない。大人はまず、その子どもがどちらのタイプなのかを判断するところから始めるといいでしょう。




◆【人として大事な3つの力②】共感する力−1

髙橋孝雄先生は
慶應義塾大学医学部小児科の
主任教授です。


髙橋先生が危惧されているのは

自分の五感から入ってきたものを
「情報化」せずに


インターネットなどで
二次的な情報の「後追い」に
偏重する現状です。


小児科医として
大いに危惧されています。


なぜならば
小児科医は子どもの声を傾聴して
「違和感」にいち早く気づくことが
仕事だからです。


子どもと接するときは 
理屈ではない違和感を
大切にすることが重要なのです。

また
親には本能的に
「子供の心を読み取る力」
備わっているのです。


目の前の子供の状態よりも
ネットの情報を参考にしてしまう
現代の風潮。

これは「共感する力」とは
真逆の行動ですね。


この章で印象的だった
フレーズを引用します。

「私はかねてより、『親は自分の願望を子に託すな』と訴えています。『こういう教育をしてやれば、自分にはできなかったこんな夢が実現するのではないか』というような気持ちが強すぎる」
高橋孝雄先生談




◆【人として大事な3つの力②】共感する力−2


小泉英明さんは
物理学者・神経科学者で
日立製作所役員待遇フェローでもあり

脳の活動を実測する
光トポグラフィの開発に携わった、
脳科学の第一人者です。



ちなみに光トポグラフィとは

近赤外線の光を、
頭に照射することで

うつ病や双極性障害や
統合失調症の

いずれの可能性が高いかを
判断するなどに活用できます。

https://youtu.be/r5Si9RBmjbI


小泉先生は脳の進化から
乳幼児期にふさわしい教育を
考えてらっしゃいます。

やはり教育の最終目標は
子どもたちの幸せにあると
確信を深めていました。


「幸せのポイントは『共感』能力、言い換えれば『温かい心』(Warm-heartedness)を育むことにある、それこそ子どもたちが幸せになるための教育の最終目標であると考えています」
小泉英明:談

幸せというのは
物質的に満たされることより

今置かれている状況に満たされ

「自足」して生きることになる
と考えられることのようです。


この章で印象的だった
フレーズを引用します。

きつい言い方をすると、極端な過保護、過干渉は、脳神経科学的に見ると、赤ちゃんにさるぐつわをはめて手足を縛るようにして脳神経回路を構築できなくしてしまう過程に近い、ということです。
小泉英明:談




◆【人として大事な3つの力③】自分の頭で考える人になる


髙橋和也さんは
東京は東久留米市にある
自由学園の園長です。


尾木直樹さんと共著で本も出されてます。

自由学園の特長は
「真の学力とは『自ら学ぶ力』です。」
とされているところです。

「なぜだろう?」
「どうしてだろう?」

という、
子どもたち自身の内側から湧き出る
日々の疑問を原動力にして

問題発見の力
自ら学ぶ力
協力して問題解決に取り組む力を

育むことを大切にされているそうです。


この章で印象的だった
フレーズを引用します。

「結果が自分に返ってくることばかり求めていると、自分の利益になることだけをしようという発想になります。自分を超える価値や理想に触れていくことが、未来の社会をつくる生徒たちが育つうえで大切だと、私は思っています」
髙橋和也:談

「自分を超える価値」については
自然がありますね。

自由学園では
5,000本弱の樹木が生い茂り、
小川が流れ、
畑では生徒たちが四季を通じて
さまざまな花や作物を
育てているそうです。

自然・環境とのつながりが学べるのは
素敵なことですね。


ここまでをまとめますと
本書が教えてくれる
人として大事な3つの力とは

認知機能
●共感する力
●自分の頭で考える人になる


私がこの3つに関して感じことは

社員教育関連の本と
児童教育の本は
共通項が多いことを
再確認できました。



ここからは序文でお伝えした
養老先生が問題提起されている

◆なぜ日本は「児童虐待社会」なのか⁉︎

◆なぜ「自分の人生は自分のもの」ではないのか?

以上2点をまとめます。



◆なぜ日本は「児童虐待社会」なのか⁉︎


養老孟司さんは
「児童虐待社会」の問題点を

「都市化」
「脳化社会」
「ああすれば、こうなる」

この独特な3つのキーワードで
解説されてます。


まず、「都市化」とは

人間が頭の中で考えたこと
外に出してを作ることです。


これを「脳化社会」とも
言い換えてます。


都市化
とともに
人間は自然からどんどん離れて

現代では意識が肥大化した
「脳化社会」となってしまった。

AI(人口知能)などはまさに象徴的で 

自然の一部である人間が
壊れていっている


という見方もできるとおっしゃってます。


都市とは例えば、
切符を買って電車に乗れば
目的地に着くように

「ああすれば、こうなる」

という考え方でつくられているそうです。



私は「ああすれば、こうなる」とは
正解主義のことだと捉えました。

本来の答えとは
仮説を立案して
トライ&エラーの検証の末に
導き出されるものです。


「こうやったら、こう動く」
「こうやったら売れる」

こういった正解主義の考え方を盲信せず
まず自分にとって正解かどうかを
ちゃんと検証した方がいいですね。



私も東京に住んで長いです。
都市で暮らして日々感じるのは

「わからないことがあっちゃいけない」

「人生に想定外のことが
 起きてはいけない」

といった、
脅迫観念に近いものを
感じるのです。


きっと
都会で子育てする親御さんにとっても
そうではないでしょうか?


「子どもの育て方で
 わからないことがあってはいけない」



この圧力を日々感じていませんか?


何にでもちゃんと答えがあって
誰かが教えてくれると思ってる人が
増える一因は都市化にあるようです。


言い換えれば、
自意識が肥大化した
「脳化社会」にあるようです。


ここから話を戻します。

多くの場合、
都市化すると少子化が起こります。 

確かに先進国の都市は
どこも出生率が下がります。

その理由は
都市は大人の頭でつくられるからです。


これは極論ですが、

都市にとって子供は厄介な存在なのです。


しかし子供は本来は自然に近いのです。


赤ちゃん
は産まれてから、
本人が意識していないのに
周りの環境から多くを学び成長します。

つまり子どもは
オーガニックラーニング
基本なのです。


また、
オーガニックラーニングゆえに
親の思うようには育ちません。


よって脳化が進んだ都市では

子どもを産むのを控えたり

産んですぐに大人にしようと教育したり

あるいは管理したりする。


こうしたことが
少子化の根本的な原因であり
児童虐待の真相である。

これが都市化する日本が
児童虐待社会と考える
養老孟司先生の考えです。



◆なぜ「自分の人生は自分のもの」ではないのか?

もちろん国のものでも他人のものでもありません。



「自分の人生は自分のものである」

この考えについて
養老孟司先生は

日本が戦後に蔓延した
個人主義の弊害である
と考えております。

そしてこれが子どもの自殺
大いに関係があるのです。


「なぜ、死んではいけないんですか?」

と、質問する子どもの心理には
暗黙のうちに、


自分の人生は自分のものなんだから、
自分の体をどうしようと勝手だろう


と考えているそうです。


確かに個人主義のヨーロッパでは

一部の国で自殺幇助が
認められていますね🤔


では結局のところ

自分の人生は自分のものでない
とするならば


そんな自分とは一体何なのか?


これは
多くの人が知りたいことですよね。


この問いに
養老先生は教えてくれました。



解決策は
「自然のなかに身を置くこと」です。


これは結論が飛躍してるようで
筋が通ってました。


そもそも「自分」とは
最初、直径0.2ミリの受精卵でした。

それが大きくなって
大人になっていきます。

この自分の体は
田んぼや畑や海からとってきたものを
食べてつくられました。


つまり
自分自身は環境そのもの
自然の一部なのです。

養老先生は
使命感を持っておっしゃてます。

子どもに、
自分の体が田んぼと
つながっていることを
教えないといけない。


自然と自分とのつながり、
世界とのつながりといっても
いいのだけど、

自然と自分は地続きであることを
感じてほしいのだと。



つまり
養老先生が伝えたいことは
頭でごちゃごちゃ考えずに
自然に体感覚で問え!

と言っているように
私は感じました。


養老孟司先生は田舎に移住しろとも
子どもに自然体験させろとも
言ってません。

あくまでも「田舎風」

空き地があって
虫がいて
そこに行けばいつでも仲間に会える 

それだけで十分とのことです。

「何もかも手に入るわけではないけれども、生きているだけで満足できる。そんな状況を、生まれてくる子どもたちに対してつくってあげないといけないでしょう。何も難しいことではありません。親が子どもに対して『あなたたちが元気に飛び跳ねていてくれればいい』とさえ、願えばよいのです」
(養老孟司)

養老先生が
多くの著書で繰り返し伝えている
メッセージは

「森へ行け!」です。


この動画内で街と森を行き来する
”現代の参勤交代”のお話は
面白かったです。

まさにワーケーションではないですか!



あと、これは私だけかもしれませんが
なぜかいつも養老先生とユパ様が重なってみえます。

ナウシカは「森に帰ろう」だった。



私は田舎風の"風"に注目しました。

今後、脳化が進んだ都市では
AR /VR技術やテクノロジーの力で
森に行かなくても森を見ることができるようになります。


こういった試みが
私たちにどういった影響になるのか
頭ごなしに否定するのではなく
見守っていきたいですね。



◆【私の感想】世界は振り子のようで思想は揺り戻る

戦後の日本は個人主義に揺れ動いた。


私が本書を読んだ感想を端的にまとめると

都市化は「人間らしさ」を失せて
代わりに「自分らしさ」を作り出している

このように感じました。

そこから2つのことを考えてみました。


●「自分らしさ」について考えてみました

この「自分らしさ」とは
客観的視点である「自己」のことか
それとも主観である「自我」のことかで
意味が変わってくるのです。

自我が肥大化すると
自と他の境界線があやふやになります。
現実と妄想の区別がつかなくなります。


自分らしさと人生の意味について
問うならば

ナチスの強制収容所を
生き延びた心理学者である
ヴィクトール・E・フランクルの

「意味は外側にある」

という言葉が参考になります。  


人生の意味は「自分の中にはない」とし
自分の外側にしか、
自分を実現する場がない

ということです。


人生の意味は

自分だけで完結するものではなく、
常に周囲の人、
社会との関係から生まれる

ということです。


ヴィクトール・E・フランクルについては次回書きます。



●自分軸と他人軸について考えてみました

自分軸と他人軸。

なぜ2軸しか存在しないのでしょうか?

世界には「自分軸」と「他人軸」の他に
「社会軸」も存在すると思います。

あなた私たちが社会を形成しています。

2軸で考えがちなのは
西洋思想の影響です。


西洋と東洋の違いは
物事の決定の仕方も違います。

西洋思考は表と裏の「コイン投げ」
コイン投げは表と裏の二項対立の状態
そこからは「衝突」しか生まれません。


東洋思想はグーチョキパーの
「じゃんけん」
三すくみの構造です。

じゃんけんには「あいこ」が存在します。

その根底には誰も勝たない、
誰も負けないという
東洋思想があるのです。


私がお伝えしたいのは

「日本は東洋思想に戻り、
 全体主義にするべきだ!」

ではありません。

日本の行き過ぎた全体主義が
失敗したのは
戦争で十分に学んだことです。


参考にしたいのは

今からおよそ180年前
幕末の思想家:佐久間象山の言葉



「東洋の道徳、西洋の芸」


この西洋の芸とは、
芸術のことではなく
「技術(テクノロジー)」のことです。

つまり、佐久間象山は
東洋
の原理原則に
西洋の技法を足すことで

人類の新しい指針が生まれると
考えたのでした。


西洋と東洋の良いところを
ほどよく融合させていく発想は

これからもっと
必要になっていくと思います。


禅の思考であるマインドフルネス

利他の精神から
シェアリングエコノミーであったりと


実際にテクノロジーの最先端は
東洋思想が取り入れられてます。

いま日本は東洋思想に揺り戻しかもしれない




今回はまとめきれませんでしたが
4人の有識者のお話は
大変興味深いものがありました。


最後までお読みいただきありがとうございます。


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