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【人間関係】いわゆる「いちゃもん」「言いがかり」――パワハラしてくる人の手口&対処法①

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
パワハラ、モラハラをしてくる人は、悪意ある人は意図的に、あるいは、彼らが積み重ねてきた経験を基に無意識的に、他者(こちら側)を支配する心理術を使ってきます。
 
そんなパワハラ、モラハラから身を守るためには、相手がどんな心理術を使っているのかを把握しておくと、その対処法も見えてくるものです。孫子の言葉「敵を知り、己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」です。
 
かつて自らもパワハラを受けた経験があり、現在は心理学をベースに、話し方や声のノウハウコミュニケーショントレーナーとして1万人以上レクチャーしている司拓也さんは、新刊『嫌われずに「言い返す」技術』の中で、パワハラしてくる人の手口を会話事例を交えながら、パワハラ、モラハラで使われる代表的な心理術を分析、その対処法についていくつか紹介しています。
 
今回は、パワハラ、モラハラで使われる代表的な心理術の1つ、いわゆる「いちゃもん」「言いがかり」として知られる「ストローマン論法」について解説、その対処法を紹介している該当箇所を一部編集して公開します。

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いわゆる「いちゃもん」「言いがかり」──ストローマン論法

 ストローマン論法とは、ひと言で言うと、「いちゃもん」「言いがかり」です。
 議論中に相手の意見を恣意的に不正確に表現し、それに基づいて反論する手法を指します。
 具体的には、「子供を道路で遊ばせるのは、リスクがあるから避けるべき」という提案に、「子供をずっと家に閉じ込めるのは幼児虐待だ」と誇張して表現するようなケースが該当します。
 その他にもいくつかケースがありますので紹介します。

議題・論点の歪曲。主題そのものを変えて、議論を堂々巡りにする──悪用事例①

 ストローマン論法は、サッカーの試合中に突然ルールを野球やゴルフのルールに変えるようなものです。

上 司 競合他社が取り入れている新技術について学び、当社も導入を検討すべきだ!
あなた しかし、競合他社が導入している技術を導入するにはコストが今の2倍かかります。また、それによって現在確保されている売り上げや利益が半減する恐れがあります。(正当な主張)
上 司 なんだ、その言い草は! 新しい技術を学ぶ意欲はないのか! 技術的に遅れをとって市場での競争に敗れていいと言うのか!

 ここでは部下がコストの懸念を述べたにすぎないのに、上司はそれを技術的遅れや市場での競争力喪失という大きな問題に結びつけて反論しています。
 こういった「言いがかり」と言ってもいい主張をしてくる相手とかかわると、議論は空転し、ただ時間だけが浪費され、こちらのストレスも増えます。

「たしかに」&「そもそも」で話し始める──対応テクニック①「承認&原点回帰」

 この事例の場合、「たしかに(承認)&そもそも(原点回帰)」というワードで対応して話し始めることをおすすめします。これは、ストローマン論法全般に対処できる伝え方でもあります。
「たしかに」という言葉を使うことで、相手の意見を受け入れ、尊重している素振りを見せ、その後「そもそも」と続けて、議論の本質や目的に焦点を当てて、論を展開します。

あなた たしかに! 技術的遅れや市場競争力に敗れることについては絶対に避けなければなりません。そもそも今私がお伝えしたのは、新技術の導入に関するコストの懸念、今現在売り上げ利益ともに半減する可能性がある点です。これについてどのようにお考えか教えていただけますか?

 上司の歪んだ解釈を「たしかに&そもそも」という言葉で正しい議論に戻しました。

「しかし」「でも」「だって」などの否定的な言葉は絶対禁止

 ここで大切なポイントがあります。
 相手の主張に対して「たしかに」は笑顔で歯切れよく張りのある声で「おっしゃるとおりです!」という気持ちで表現してください。
「現状を正確に伝えなければ」と真顔や困り顔で伝えないことです。
「しかし」「でも」「だって」などの否定的な言葉に相手は敏感に反応します。
 いちゃもん癖のある人の特徴として、彼らは、これらの言葉を言った際に、上司、先輩たちから「口答えするな!」「言われたとおりにやれ! 言うことを聞け!」と責められて生きてきた経験があります。「しかし」「でも」「だって」の言葉を聞いた瞬間、恨みや怒りを含んだ攻撃ホルモンが脳内に分泌され、それをあなたに放出せずにはいられなくなるのです。
 そうなると、もう止められません。めんどくささは倍増します。

表現・言葉の歪曲。言葉やフレーズを恣意的に変更して、主張を変える──悪用事例②と対処法

 ストローマン論法に見られるものとして、表現・言葉の歪曲があります。ひと言で言うと、リンゴを「オレンジ」と呼ぶようなものです。

上 司 残業時間を短縮するように指示したが、目立った成果が上がっていない。これを見て、君は問題だとは思わないのか?
あなた はい、たしかに残業時間の制限の指示を出して2カ月経ちますが、成果が出ているのは一部の部署だけですね。
上 司 すべての部署で成果が現れていないってどういうことだ! 責任をとれ!

 あなたが「効果が上がっているのは一部」と表現した結果を、相手は「すべての部署で大きな成果が上がっていない」と表現を婉えん曲きょくして主張しています。
「しかし、1年を目処に残業時間を削減するプロジェクトです。まだ2カ月しか経っていません。その主張は間違っています」
 と言えたらスッキリするでしょうが、「間違っているとは何だ! 全否定する気か!」とさらに言いがかりは続くでしょう。
 そもそもこの本の趣旨は、相手との対立や勝利を追求することではありません。ここでも先ほどと同様に「たしかに&そもそも」を使って言い返してみましょう。

あなた たしかに! 十分な成果が現れていません。そもそも本年度の目標として1年かけて残業時間を2割削減する目標を立てて実行しています。一部成果も見えてきていますので、さらにこの成果を拡大していくべくお知恵をお借りしてよろしいでしょうか。

 こう回答することで、知恵のない相手のそれ以上の追及はなくなるでしょう。

発言の切り取り。文脈から一部を切り離し、意味を変えて反論する──悪用事例③と対処法

 次は発言の一部を切り取られてしまうケースです。
 ひと言で言うと、映画の2時間のストーリーを10秒だけ抜き出して、全体のストーリーを知っていると言うようなものです。

あなた 新しいプロジェクト提案は、予算面での課題があるものの、大きな市場の機会が見込めると思います。
上 司 予算に課題があると言うのか。それならば、このプロジェクトは即中止だ!

 ここでは、あなたが述べた「市場の機会」というポジティブな側面を無視し、上司は「予算の課題」の部分だけを誇張して取り上げ、あなたの主張を潰しにかかっています。
 ここでも「たしかに&そもそも」を使ってみましょう。

あなた たしかに! 予算の課題が解決できなければプロジェクトは中止しないといけません。そもそも予算に課題があることは想定内で、解決策もすでに実行中です。ご安心ください。市場拡大のチャンスが大いに期待されており、確実に成功をおさめるためにアドバイスがあれば、ご教示いただけませんでしょうか。

 あなたの発言の一部を切り取った形で非難してきた上司に対して、ここでは最後に「ご教示ください」という表現で締めています。

安心感+「ご教示ください」で締める──対応テクニック②「相手の自尊心をくすぐる」

 ストローマン論法を用いる人には、相手を打ち負かすことを目的として不条理な議論を仕掛けてくる「いちゃもんタイプ」、過度に安全を求め、リスクを極端に避けたいと感じ、自らの失敗に対する責任を恐れる「びびりタイプ」がいます。
「ご教示」という言葉は、「教えていただくこと」や「指導していただくこと」という意味で使われます。特に、上司や先輩、専門家などの立場の上の人に対して、何かを教えてもらう際やアドバイスを求める際に使われる敬意のこもった表現です。
「いちゃもんタイプ」「びびりタイプ」には、安心感を与える具体的な言葉と、相手の自尊心を尊重する言葉遣いで接することが効果的です。孫子は「百戦百勝は最上の勝利ではない。戦わずして敵を服従させることが、真の優れた勝利だ」と語ります。言い換えれば、戦闘を回避しながら勝利を収めるほうが最も賢明な方法である、ということです。戦うことなく、自然と成功を収める姿勢を目指したいものです。

〈著者プロフィール〉
司 拓也(つかさ・たくや)

コミュニケーショントレーナー。声と話し方の学校「ボイス・オブ・フロンティア」代表。日本話す声プロボイストレーナー協会代表。活動歴は15年。年間セッション数は100以上。1万人以上のコミュニケーションの悩みを解決。幼少期のいじめ、学生・社会人時代になってからの上司や顧客からのモラハラ、パワハラ体験からうつ状態を経験。このままでは死んでしまうという危機感から「人の心を誘導し、相手を怒らせずにいじめやハラスメントを受けない方法を見つけ出せば、今後苦しむ必要はない」という強い思いから、心理学やコミュニケーションスキルを貪欲に探求。相手からのハラスメント的言動に対し、その攻撃力を無力化し、相手を怒らせることなく、言いたいことを言えるようになり、自分の心も強くなる「ポーカーボイス&トークメソッド」を開発。現在、心理学をベースとした対人コミュニケーションの講演やセミナーを開催。あわせてコミュニケーションスキルの講師を養成。

いかがでしたか?
 
今回ご紹介した新刊『嫌われずに「言い返す」技術』の著者・司拓也さんは、日本で随一のコミュニケーショントレーナー。心理学をベースに、話し方、声の出し方を、1万人以上にレクチャーしています。
嫌われずに言い返す、著者オリジナルのメソッド「ポーカーボイス&トーク」の重要エッセンスを、多くの会話事例を交えながら徹底解説した新刊『嫌われずに「言い返す」技術』(司 拓也・著)は、全国書店、ネット書店で発売中です。興味のある方はチェックしてみてください。

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